「自殺未遂であっても自殺行動に関する報道には注意が必要」。有名人の「自殺報道」でやってはいけないこと、やるべきこと

東京都内の歌舞伎俳優の自宅で5月18日、俳優と両親の3人が倒れているのが発見された。

一般社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」と厚生労働省は、この件で自殺の可能性が報じられていることを受けて同日、メディア関係者に向けて、報道への注意を呼びかけた。

自殺未遂であっても(既遂していなくても)、自殺の手段・場所を詳しく報じることは、自殺念慮を抱えている人に強い影響を与え、『模倣自殺』を誘発しかねません」として、世界保健機関(WHO)の『自殺報道ガイドライン』を踏まえた報道を呼びかけた。

厚労省はこれまでにも何度も「自殺に関する報道」について注意喚起している

しかし、この件についてもすでに自殺の手段など報じている報道も見受けられる。

自殺に関する報道があると自殺者数も増加する、いわゆる「ウェルテル効果」の存在が指摘されている。

「いのち支える自殺対策推進センター」によると、2020年7月に男性俳優が、同年9月に女性俳優が自殺したと報じられると、自殺者数が顕著に増加したという。

こうした状況が起きることを防ぎ人命を保護するために、同センターと厚労省は、3年前から著名人の自殺が報じられるたびに注意喚起を繰り返し、今回で18回目となる。それでも呼びかけに反する内容の報道は続いている。

改めて、有名人の「自殺に関する報道」でやってはいけないこと、やるべきことを確認したい。

WHO「自殺報道ガイドライン」のポイント

同リリースでは、「自殺報道ガイドライン」の中でも特に重要なポイントについて抜粋して伝えている。4つのポイントは以下の通り。

《自殺に用いた手段について明確に表現しないこと》(WHO 自殺報道ガイドライン P6)

自殺リスクのある人が行為を模倣する可能性を高めてしまうため、自殺手段の詳細な説明や議論は避けなく てはならない。例えば、薬の過剰服用を伝える際には、服用した薬のブランド/薬品名、性質、服用量、飲 み合わせや、どのように入手したのかを詳細に伝えることは、人々に害を及ぼす可能性がある。

《センセーショナルな見出しを使わないこと》(WHO ガイドライン P7)

「自殺」という語は見出しで使わない、また自殺手段や自殺の現場を明確に示すことも避けるべきである。 本文記事の作成者以外のメディア関係者が見出しを書く場合、本文作成者は見出しを書いた人と協力して、 適切な見出しが付けられているかを確かめること。

《有名人の自殺を報道する際には、特に注意すること》(WHO ガイドライン P4)

有名人の自殺は十分に報道する価値があるとみなされ、それらを報道することは人々のためになると考えら れることも多い。しかしこうした報道は、自殺リスクの高い人に模倣自殺を誘発させる可能性を特に高めて しまう。有名人の死を美化することで、気付かないうちに社会が自殺関連行動を称賛し、その結果、別の人 の自殺関連行動を促進させてしまう可能性を意味している。

《自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと》(WHO ガイドライン P6)

ある場所が「自殺現場」として有名になってしまうのはよくあることである。例えば、自殺が発生した橋、 高層ビル、崖、列車の駅、踏切などである。 例えば、そのような場所をセンセーショナルな言葉を用いて伝 えたり、その場所で起きた事件の数を過度に強調したりすることで、自殺現場としてその場所をさらに知ら しめることが無いように、メディア関係者は特に注意を払わなくてはならない。

やるべきではないこと・やるべきこと

WHOのガイドラインには、メディアがやるべきではないこと、やるべきこととして書かれている。

やるべきではないこと

・報道を過度に繰り返さないこと

・自殺に用いた手段について明確に表現しないこと

・自殺が発生した現場や場所 の詳細を伝えないこと

・センセーショナルな見出しを使わないこと

・写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いないこと

やるべきこと

・有名人の自殺を報道する際には、特に注意すること

・支援策や相談先について、正しい情報を提供すること

・日常生活のストレス要因または自殺念慮への対処法や支援を受ける方法について報道すること

・自殺と自殺対策に ついての正しい情報を報道すること

■相談窓口の案内

生きるのがつらいと感じている人や、周りに悩んでいる方がいる人たちなどに向けて、以下のような相談窓口があります。

厚生労働省 相談先一覧
いのち支える相談窓口一覧(都道府県・政令指定都市別の相談窓口一覧)
#いのちSOS(電話相談)
チャイルドライン(電話相談)
生きづらびっと(SNS相談)
あなたのいばしょ(SNS相談)
こころのほっとチャット(SNS相談)
10代20代女性のLINE相談(SNS相談)

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Maya Nakata