■“博多の台所”に異変?
「ボーとしていると、あんたらそのうち魚食べられんくなるぞ」
福岡の鮮魚市場の関係者のことばに、応接室で出されたお茶を飲む手が思わず止まる。魚の輸出が急拡大していて、市場の仲買人たちの目は、すでに海外に向いているという。
福岡に転勤して、カワハギをはじめとする九州の地魚に魅せられた者として、なんとも気になる話だ。
現状をこの目で確かめようと、全国有数の水揚げ額を誇る博多漁港を擁し、あの長浜ラーメンでもおなじみの長浜鮮魚市場を取材した。
■競りの主役は中国人
午前3時。威勢のいい声が市場に響き渡る。競りの始まりだ。
あいにくしけのため、この日の場内は隙間だらけでコンクリートの床が目立った。勝負はノドグロやマナガツオなどの一部の魚種に絞られた。
競りの主役は、なんと中国人の仲買人だ。
直前まで電話で海外からの注文を受け付け、限られた魚を次々と高値で競り落としていく。
中国人の仲買人「今回競り落とした魚は、香港のホテルや飲食店に出荷します」
この仲買人を雇うのは、福岡市の仲卸会社だ。
会社では、ここ数年、輸出が急拡大。香港をはじめ韓国や台湾など幅広く手がけ、今では売り上げの4割を輸出が占めているという。
海外の販売先を増やすには、競り落とす魚の種類や量、入札額などのやりとりが現地のことばでできたほうが有利になる。そのため、中国や韓国の仲買人を雇用し、競りの最前線に投入しているのだ。
アジアの需要は伸び続けていて、社長の湯浅俊一さんは、海外向けの販売をさらに強化していく方針だ。
湯浅社長「もう国内だけではだめだと思います。われわれとしては、高く買ってくれるところに売るのが一番いいんです。今は海外のほうが確実にもうかります」
■日本人は金払えない?
市場の運営会社によると、ノドグロやマナガツオ、アラカブ、タチウオといったいわゆる高級魚を中心に、輸出する魚の種類と量が急速に増えているという。
売り上げに占める割合の差こそあれ、今では市場の約40の仲卸会社の大半が、輸出に関わっているとみられている。
「日本人は金払えないからもう無理だ」
取材中、日本人の仲買人からポツリとこぼれたことばに、台頭するアジアの勢いと今の日本の現実を見た気がした。
■ノドグロ食べられるのも今のうち?
こちらは、福岡など九州を広くカバーする門司税関による水産物の輸出統計。
10年前に比べると、輸出額は2.6倍、輸出の量も1.8倍に増加している。漁獲量が年々減少する一方、輸出が増えれば当然、国内での値上がりや品薄につながる。
影響はすでに、消費の現場にも及んでいる。
以下全文はソース先で
NHK 2023年5月12日 19時11分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230512/k10014065071000.html
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