ゴールデンウィーク(以下、GW)が近づき、マイカーでのドライブを計画している人も多いのではないでしょうか。
自宅から目的地へ直行できるマイカーは便利な存在ですが、GWなどの交通混雑期にはどうしても高速道路での渋滞が発生しがちです。渋滞に巻き込まれた際の「走り方」について、NEXCO中日本 名古屋支社 保全・サービス事業部 交通技術課の林修平(はやし・しゅうへい)さんに、適切な方法を伺いました。
林さんによると、混雑している高速道路を運転している時、特に注意してほしいのが「渋滞のいちばん後ろに着いた場合」だそうです。
「渋滞の末尾は、後方から走ってきた車に衝突される可能性が増え、大きな事故につながってしまうこともあります。渋滞の末尾に着いた場合に意識して行って頂きたいポイントは、次の3つです」(林さん)
「1つめのポイントは、『ハザードランプやポンピングブレーキで後ろの車へ渋滞を知らせる』ことです。
ポンピングブレーキとはブレーキペダルを一気に踏み込むのではなく、数回に分けて踏み込んで停止する運転技術です。ブレーキランプの点滅が繰り返されることにより、後方の車の運転手に異常を知らせることができます。
減速時だけでなく、停止する場合もポンピングブレーキを用いて、後続車にしっかり『前方に渋滞発生、減速・停車する』ことの意思表示を行ってください」(林さん)
「2つめのポイントは、『車間距離を十分に空ける』です。
まず、後続車の減速が確認できるまで、バックミラーから目を離さないことが大切です。さらに前方の車にも注意しながら、十分な車間距離を確保してください。
十分な車間距離を保つことにより、万一の追突事故の際に、前後の車に挟まれる状態を防ぐことにつながります。
道路交通法でも十分な車間距離を取らない運転行為は禁止されています。くれぐれも、車間距離には十分注意してください」(林さん)
「3つめのポイントは、『渋滞の末尾に着くときは走行車線を走る』です。
後続車に追突されてしまった場合、追越車線に比べて車の速度が遅い、進行方向左端の走行車線の方が、安全性が高い傾向にあるからです。
さらに、運転手自身が“追突が避けられない”と判断した瞬間、路肩に緊急避難することが可能な場合があります。特に渋滞の末尾に着いた時、走行車線を走ることは自分の身を自分で守るためにもしっかり意識したいポイントです。
最後に繰り返しますが、渋滞時には自分の後ろに車が何台か着くまで安心せず、前後ともに十分な車間距離を保つことを心がけてください」(林さん)
高速道路で走行車線を走ることには安全性だけでなく、実は「渋滞時に最も速く進む」という速達性でもメリットがあるそうです。
「渋滞学」を研究する東京大学先端科学技術センターの西成活裕(にしなり・かつひろ)教授(数理物理学)は、「場所にもよるが一般的な渋滞時の車線別平均時速は、左端の走行車線が最も速い」ことが判明したといいます。
「平常時は、平均速度が80km/hを超える追越車線が一番速いのは当たり前です。しかし、渋滞時(平均速度40km/h以下)には第一走行車線(左車線)が25.6km/h、第二走行車線(真ん中)が20.6km/h、追越車線(右)が16.3km/hと、『第一走行車線が最も速い』という結果になりました」(西成教授)
「渋滞は、上り坂やサグ部(ドライバーが気づかない緩やかな上り坂)を中心に、車が密集することで起きます。密集時に前の車がブレーキを踏むと、後ろの車がもう少し強くブレーキを踏み、その後ろの車がさらに強くブレーキを踏むという『連鎖』が起きることで、渋滞が発生してしまうのです」(西成教授)
さらに、渋滞時はドライバーに「速く走りたい、早く渋滞を抜けたい」という心理が働くことで、追越車線に車が集中してしまうそうです。
「データでは、渋滞直前に約4割の車が追越車線に集中します。密集によるちょっとしたきっかけでブレーキの連鎖が起きて追越車線に渋滞が発生し、結果左側の走行車線よりも遅くなってしまうのです」(西成教授)
せっかくのGWですが、高速道路の渋滞はどうしても避けられません。3つのポイントを意識しながら左端の走行車線を進み、GWのドライブを少しでも楽しいものにしていきましょう。
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