「認知症」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。
人生100年時代と言われる現代。2025年には、国内65歳以上の5人に1人が認知症を罹患するという推計もある。
そんな中、多様な健康課題に取り組む一般財団法人ウェルネス研究所が注目しているのは、「音刺激」による認知症の予防の可能性だ。
4月18日、東京ミッドタウンでイベントが開かれ、脳波研究の専門家や、業界の垣根を超え認知機能ケアに取り組もうとしている企業の代表が登壇した。
認知症予防の可能性について、杏林大学名誉教授の古賀良彦さんが説明した。
2019年、WHO(世界健康機関)は「認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」を公表。その中で認知的介入(=脳に刺激を与えることによる予防)の可能性にも触れている。
特に五感への刺激については研究がなされてきており、おりがみ(触覚)やコーヒー(嗅覚・味覚)などが例として挙げられる。また、音刺激の研究も進んでおり、その1つが、40Hz周期の断続音でガンマ波(脳波の一種)を発生させ、認知症予防を目指すものだ。
研究の効果、安全性の検証が進められる中、40Hz周期の継続音を、より社会実装しやすい音楽へと落とし込む試みを続けるのが、ピクシーダストテクノロジーズの長谷芳樹さんだ。
会場では実際に音楽が流された。違和感を感じづらいようにアレンジされており、生活にも取り入れやすいように感じた。
イベントの終盤では、塩野義製薬とピクシーダストテクノロジーズの2社に加え、4社(NTTドコモ、ココファン、SOMPOひまわり生命保険、三井不動産)が登壇。認知症予防の社会実装や、ウェルビーイングに歩み寄るための思い、展望を語った。
「薬の開発で培った知見を用いて、音による予防をサイエンスベースでより説明のつく状態にしていきたいです。また(認知症予防においても)人や状況によって最良の選択は異なってくるので、そのバリエーションを科学的に突き詰めていきたいです」と三春洋介さん(塩野義製薬)。
村上泰一郎さん(ピクシーダストテクノロジーズ)は「10年、20年後の日本を変えるようなものになっていけば嬉しいなと思います。『認知症の人減ったよね』と言われるような世の中になっていけばいいな」と語った。
中川 ゆう子さん(SOMPOひまわり生命保険)は「年齢的にも(多くの人にとって)認知症を自分ごと化することへの心理的ハードルがまだ高い」とした上で、「今回の研究・技術を活用した、より意識せずに生活の中でできる予防や、家族や友人などの身近な人と楽しみながら予防できるようなソリューションに挑みたいです」と思いを共有した。
また、高齢者向けの住宅サービスを提供している学研ココファンの木村祐介さんは「日常生活の中のサウンドケアやアクティビティを開発することで、皆さんに長く健康に住んでいただける高齢者世帯の新しい形を作っていきたい」とし、暮らしへの取り入れやすさも大きな鍵になることを強調した。
各分野の企業が集まることで生まれる相乗効果も、研究・技術におけるキーとなっているようだ。
出井京子さん(NTTドコモ)は「携帯電話の無線通信サービスを主とする企業として、国内外問わず一人でも多くの方にサービスをお届けできればと思います」と語り、小松原高志さん(三井不動産株式会社)も「色々な企業の方々と繋がり、教養を積んでいけることもとても大きな財産です。学びながら責任感を持ってやっていきたいと思います」と力強く表明した。
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「65歳以上の5人に1人が認知症になるかもしれない」未来へ向けた挑戦とは