公園で定番の遊具であるブランコですが、実は人間がどのようにして揺れを加速させていくのかについては解き明かされていませんでした。実は難しかった「ブランコが動く仕組み」についての、日本とオーストラリアの研究者による合同研究が、科学誌「Nature」に掲載されています。
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多くの子供にとってブランコはごく自然な遊び道具ですが、物理学者に言わせればこの遊具は「動的な結合振動子系」です。
遊具のブランコは、物体であるブランコと振り手である人間からなる動的な結合振動子系である。
今回、新しい数学的モデルが、ブランコの動きが大きくなるにつれて、乗り手が微妙に漕ぎ方を変えていく様子を捉え、どのように揺らしているのかを物理学的に説明する一助となりました。
ブランコは、基本的に振り子のようなもので、頭上の棒から鎖で吊るされた座席に質量(乗り手)が座っています。乗り手がブランコを漕ぐ(ポンピング)すると、重力によってブランコが元の位置に引き戻され、ブランコはオーバーシュートします。そして、再び重力に引っ張られ、元の位置に戻ります。このように、ひたすら中心に向かって引き戻されることで、ブランコは前後に揺れ動くのです。
1990年に発表されたモデルでは、乗り手が一定の周波数で前後に揺れ、単純な正弦波運動をしていると仮定しています(つまり、運動が時間的に正弦波の形になる)。しかしこのモデルは、揺れの振幅が小さいうちは十分に機能しますが、揺れの振幅が大きくなるにつれて崩れてしまいます。乗り手が一定の周波数で漕ぎ続ければ、その運動はやがてスイングと同期しなくなり、運動を維持する能力を失ってしまうのです。
他のモデルでは、子どもは無意識のうちにこの周波数の変化を感じ、それに応じて体重移動のタイミングを調節していると仮定しています。しかし、このモデルでの体重移動のタイミングは「スイングの最も高い位置で瞬間的に発生する」という非常に難しいものです。
十文字学園女子大学の平田千晶教授らは今回、この2つのアプローチの間の妥協点を見いだしています。研究チームは、スイングする子どもを胴体、座面、下肢の3要素からなるシステムとしてモデル化しました。胴体と下肢はそれぞれ座面に対して振動的に動くものの、その振動数はポンピングに最適な状態になるように変化します。
このモデルに基づいて研究チームは、スイングが始まったばかりのときは、スイングが前進する途中の平衡位置を通過するときに「腰を落とす」のが最適なポンピング戦略であることを発見しました。しかし、振幅が大きくなるにつれて、最適なタイミングは、バックスイングの最も高い位置にあるときに、より早く後ろに傾けることにシフトすることもわかりました。
研究チームは、研究室で10人の大学生を使い、実際にブランコをどのように操作するかを調査。彼らは、床に手をつけず、3種類のチェーンの長さで、自然にブランコを揺らすよう指示されました。
これらの動作をモーションキャプチャーした結果、ブランコの漕ぎ方は今回研究者が予測した通りになっていることが判明。このように、ブランコを漕ぐという動作は私達が考える以上に複雑なものなのです。
なぜこのようなことが自然にできるのかが、今後の研究課題です。研究者たちは、私たちが無意識のうちに遠心力を感知することで、ブランコの上の小さな動作で、ブランコを大きく動かすことができているのではナイかと指摘しています。
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実は謎だった「ブランコが動く仕組み」を物理学者がようやく解明