悪いとわかっていても、ついつい忙しさや動画の見すぎなどから陥ってしまう「寝不足」。寝不足の次の日は辛くなりがちですが、それでも仕事や勉強にはしっかり取り組まなければいけません。
では、仮眠を取ったりコーヒーを飲んだりする以外に、寝不足に対処する方法はあるのでしょうか?これについて、ダブリン大学トリニティ・カレッジでストレス要因やその解決方法を研究しているウラジスラフ・リブキン准教授が解説しています。
*Category:サイエンス Science *Source:The Conversation ,Journal
睡眠は、私たちが思考や行動をコントロールし調整するために使用する、より高度な認知スキルにとって特に重要です。特に質の良い睡眠に依存する重要な認知スキルは、自己コントロール、つまり意志力です。
衝動や感情をコントロールしなければならない、仕事で行うことの多くは、意志力を必要とします。例えば接客業の場合、気分が乗らないときでも笑顔で接客したり、リモートワークでは、子どもが遊んでいるときでも集中して仕事をするといった意志力が必要になるのです。
しかし、睡眠が重要だと頭では理解していても、仕方なく寝不足になってしまうこともあるでしょう。そこでリブキン氏は、寝不足の次の日でも仕事をこなすための4つの方法を解説しています。
できれば、前の晩によく眠れなかった日は、意志力を必要とする仕事のタスクは避けたほうがよいでしょう。その代わり、シンプルで、あまり考えたり注意したりする必要のない仕事に取り組みましょう。
どうしても意志の力が必要な仕事は、精神的に余裕のある早い時間帯に行うようにしましょう。
意志力を発揮させる能力を形成するのは、意志力についてのマインドセットです。研究では、意志力を発揮すると精神的なエネルギーが消耗され、さらに意志力を発揮する意欲や能力が低下するとされています。しかし、意志力を「減るもの」だと考えている人は、意志力を「無限のモノで回復可能」と考える人と比べて、意志力を発揮した後により消耗を感じるそうです。
リブキン氏の調査では、意志力が無限だと考える社員は、寝不足の日でも仕事で良い結果を出したそう。意志力の限界についてはまだ解明されていませんが、「意志力を強く発揮すると精神的なエネルギーが枯渇する」という考え方は、一度見直してみてもいいかもしれません。
チョコレートを食べるのを我慢するのであれば、目の前に置くより、そもそも買わずに手が届かないようにしておくほうが簡単です。これは研究でも実証されており、意志力を発揮するのが得意な人は、実は意志力を必要とする状況を避けているそうです。
ある実験では、雑念の少ない部屋と多い部屋で作業をする選択肢を与えたところ、意志力を発揮するのが得意な人ほど、雑念の少ない部屋を選ぶ傾向がありました。つまり寝不足の日は、意志力を発揮する必要がないように工夫することで、より生産的に仕事をこなすことができるようになるのです。
ポジティブな感情は、ネガティブな感情の害を打ち消すため、精神的なエネルギーを回復するのに役立ちます。
リブキン氏の調査では、日中に面白いビデオを見ることで、意志力を必要とする仕事の有害な精神的影響を軽減し、それによって従業員の効果を高めることができることを発見したそうです。そのため、よく眠れなかった日に疲れていると感じたら、面白いビデオを見て短時間気を紛らわすことが有効かもしれません。ただし、ハマらないように気をつけましょう。
以上が、リブキン氏が解説した寝不足への対処方法です。ところで、日本では睡眠不足の一般的な対策方法としてあげられるのは「コーヒーやエナジードリンクなどによるカフェイン摂取」ですが、これは寝不足には効果があるのでしょうか?
ジャーナル誌に掲載された論文では、実はカフェイン摂取あまり効果がないことが判明しています。研究によると、睡眠不足は注意力と問題解決能力の両タスクのパフォーマンスを低下させたとのこと。睡眠不足でカフェインを摂取すると、注意力の問題は打ち消したものの、ほとんどの参加者において、問題解決能力には有意な影響を与えなかったそうです。
つまりは、カフェイン摂取は単純作業への集中力を取り戻すのには役立つものの、根本的な解決にはなりえません。睡眠不足の日は無理せずに早めに寝て、次の日に悪影響を及ぼさないようにすることが重要です。
オリジナルサイトで読む : AppBank
寝不足でも〝カフェインなし〟で元気に仕事をこなす方法を研究者が解説