あなたは最近、日々がつまらないと思っていますか?それとも、たのしいですか?つまらないと思っている人には刺激を、たのしいと思っている人には一度足をとめて観てほしい映画があります。
わたしは、つまらないな、何か刺激が欲しいなと思いこの「空白」と言う映画にそれを求めました。結果、かなり刺激になり「あぁ、普通の日常ってとても幸せなんだな」と改めて実感させられましたね。
じめっと暗くもあり、最後にはどこか家族を感じて暖まる映画「空白」をご紹介したいと思います。
この物語は、どこにでもいる普通の女子中学生がスーパーで化粧品を万引きしたところから始まります。
運悪く、その光景を店長に見られてしまった彼女は逃走。
後ろを気にしながら逃げる少女と全速力で追いかける店長でしたが少女が国道へ出た瞬間、乗用車に撥ねられ、飛ばされたその先で次は大型のトラックに撥ねられてしまいます。
無惨な形で命を落としてしまった少女と突然の出来事で呆然と立ち尽くす店長の姿がそこにはありました。
映画「空白」公式Twitter 予告映像
万引きをした娘が事故で亡くなったと、連絡を受けた父親。父親は自分の娘は万引きなんてするはずがないと信じ、事件の真相を探っていきます。
ですが、もちろん父親が納得できるような証拠は出てきません。それでも納得できない父親の行動はエスカレート。
過激化するメディアの報道や、行きすぎた父親の行動に疲弊する店長は自己否定や混乱に陥ってしまっていきます。
真相は一体どこにあるのか、父親はそれに辿り着くことができるのか?
この事件に巻き込まれてゆく人たちはたくさんいます。
まず、当事者の父親、少女を追いかけたスーパーの店長、離婚した少女の母親、スーパーの店員、父親の職場の後輩、学校の先生、乗用車を運転していた女性、その母親、トラックの運転手。
他にもその親族やメディア関係者などが複雑に関係していきます。
それぞれが自分の信念や疑問をぶつけ合い自分が正しいと思っている道に突き進み、それを疎ましく思う者もいればそれに助けられる者もいる……。
とても現実をリアルに表現した人間像となって出てきます。
少女の父親についてですが、世に言われる“毒親”と言うものです。娘の意見を聞かず、自分の考えばかり押し付け、理解しようとしない。
そんな父親の存在が少女がどこか影を落としてしまっている一つの要因となってしまっています。
職場でも人の話を聞かない頑固親父です。
年頃の娘との接し方が分からずに逃げてしまう、なんてことは良くある光景ですよね。そんな時に娘が死んでしまった。
今まで娘から逃げてしまっていた自分を振り返る機会が来た、来てしまった訳ですね。
ですが娘が普段何をしていて、何を思っていて、だれと遊んで、何が好きか、この父親にはさっぱり分からず。
別れた母親が娘について助言をしますが、認めようとはしません。
店長やスーパーの店員、職場の後輩などにヤキモキした気持ちから当たってしまう様はまるで子供のようです。
この父親がどう自分の心の落とし所を決めるのか、私は予想をしながら観ていましたが予想とは全く違う結末を迎えて驚きました。
精力的にスーパーの運営を営む感じではなく、親から受け継いだものを淡々と毎日こなしている、という感じの男性です。
どこか薄暗くて周りとはつねに一線をひいてるなと言う印象を受けました。
そんな男性がたったひとつの出来事でテレビやメディアに取り糺される、というのはあまりにも大きな人生の転機です。
きっかけを作った張本人とはいえ事件に巻き込まれた感は否めませんが、どこかみていて苛立ってきてしまう人間性を醸しだしています。
周りが助けの手を差し伸べてもそれを振り払ってしまう。思わず「はっきりしろ!!」と声にでてしまいそうになります。
タイトル通りじめっとした映画ではあるのですが、なぜか最後には少しスッキリとした読了感があります。
期待していた後味の悪さはあまりありません。ただ、良い映画ということには変わりありませんでした。
それは実力派である古田新太さん、松坂桃李さんのおかげでもあると思います。
主演が、古田新太さんということでもうこれは演技においては何も心配することはないだろうと鑑賞をはじめました。
わたしとしては久々に彼が出る作品を鑑賞。最近何に出ているのだろう?と調べたところ割とアニメの声優さんなどにも起用されているのですね。
いやしかし、かなりお年を重ねた印象を受けました。ですがそれがまた良い味を出しているのでやはりトップクラスの俳優さんなのだなと思わされます。
凄みもあり、人間味をここまで垂れ流すことができる俳優さんは数えるほどしかいないでしょう。おかげで作品にのめり込ませて頂きました。
没入感がすごく、自分がその場に立っている感覚になります。
松坂桃李さんも薄暗く、でもどこかに自分の意思は持っていて社会に馴染めない青年を演じきる凄さに圧倒されるばかりでしたね。
お弁当屋さんのお姉さんいきなりブチキレるシーンは驚かされました。
こんないきなりキレられるとわたしならトラウマもので接客業なんてもうしたくない!と思ってしまいますね。
その後謝るシーンの切り替えも異常さが表現されていてとても印象深かったです。
そんな俳優陣のメイキング映像が公式Twitterに公開されていました。こちらもとても迫力があるものとなっていますので是非ご覧になってください。
なんと言ってもラストの父親、母親、職場の後輩である野木くんで食事をするシーンは思わず涙してしまいました。
父親の感情が耐えきれなくなり爆発したところで、我に帰って心の風船が萎んでしまう。そんなシーンでした。
反発し合っていた登場人物たちでしたが、みんな共通して持っているのは「寂しい」と言う感情。
人1人亡くなる、と言うのはこんなにも色々な人々の心に影を落とし無茶苦茶にしてしまうのだなと思いました。
少しマニアックになってしまいますが、私が好きなシーンは乗用車ドライバーの母親が少女の父親に許しを乞うシーンです。
「お前のせいで!!」と普通の精神なら怒鳴り散らし罵る場面で母親が憔悴しきった姿で淡々と謝るシーンは息を呑んで観てしまいます。
そしてこの女性は片岡礼子という女優さんが役をなさっているのですが、透き通ったとてもきれいなお声で観る人の心にすっと針を刺していくように演技なされとても印象深かったです。
かなり暗くじめっとした気分にさせる映画ですが、どこか人間味を感じて温かい気持ちにもさせてくれる映画です。
それは俳優陣の演技力、そして脚本の構成の上手さがそうさせているのだと思います。それと野木くんという抜群の後輩力にもありますね。
こういうのらりくらりとした人は心の逃げ場に丁度いいですよね。笑
「万引き」この行為ひとつがこのまで物語を動かし、人々の人生を変えて歪ませてゆく。その恐ろしさを体感できた映画でした。
これはフィクションでありフィクションではなく、私たちの身近に確実に存在する物語です。ネット社会ど真ん中の今、写真ひとつ動画ひとつで簡単に人の人生は転落して行きます。
一昔前より確実に人生は変わりやすくなっていますよね。それを肝に銘じられた社会風刺が効いた映画でした。
皆さんにもぜひ体感していただければと思います。
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