1年を通してスーパーマーケットなどの棚に並んでいる鶏卵ですが、もともと原種に近いニワトリは春にしか卵を産まず、卵の旬は春とされていました。今の卵は養鶏場で1年中生産されていますが、鶏の体調が春に最もよくなることから「春は卵の旬」といわれています。
卵は栄養バランスの取れた食品であるばかりでなく、実は殻も無駄なく使えるという優れた特性ももっているそうです。そんな卵の殻の活用法について、株式会社落水正(おちみずただし)商店(長崎県雲仙市)の通販店長である岩素子(いわ・もとこ)さんに教えて頂きました。
ここ数ヵ月は各地の養鶏場で発生した鳥インフルエンザの影響や飼料価格の高騰などで、卵の価格も上昇傾向にあるようです。いつもより高値で購入したせっかくの卵、殻まで活用できるというのはありがたいことです。
基本的なことですが、卵の殻はどのような成分でつくられているのでしょうか。
「卵の殻は『卵殻(らんかく)』といい、すぐ内側に薄い『卵殻膜』が付いています。卵殻はおもに炭酸カルシウム、卵殻膜はたんぱく質からできています。卵殻と卵殻幕は中身の卵白(白身)と卵黄(黄身)を守る役割を果たしています。
卵殻の厚さは0.3mm前後で、気孔と呼ばれる小さな穴が卵1個につき約1万個開いています。気孔は卵の呼吸にあたるガス交換をするための組織です。
卵殻の外側は外部からかかる力に強く丈夫で、内側は割れやすい構造になっています。そのため卵は割れにくい半面、ひよこが孵化(ふか)する際には破りやすくなっているのです。
卵殻膜の厚さは0.07mm程度。極めて細かい網目構造をしていて、保湿性に優れた性質をもっており、乾燥や微生物から中身を守っています」(岩さん)
卵の殻の活用法にはどのようなものがあるのか、さっそく教えてもらいましょう。
「いちばん簡単にできるのが、家庭菜園などの土にまいて、肥料として使うことです。卵殻に豊富に含まれるカルシウム成分が、植物が生育するための栄養分になってくれます。
ポイントは、殻を細かく砕くことです。殻が分解されて土に吸収されるには時間がかかりますので、細かく砕いてから土に混ぜ込むことで肥料としての効果が高まります。土に含まれるカルシウムの量が増えれば、その土で育った野菜のカルシウム含有量も当然アップします」(岩さん)
卵の殻は、研磨剤のようにフライパンや鍋のこげなどの汚れ落としにも役立つそうです。全国で家事代行サービスなどを展開するカジタク・サプライヤチームの鈴木健吾さんに、詳しく伺いました。
「やり方はとても簡単です。殻を細かく砕いたら、洗いたい部分にふりかけてスポンジでこするだけで頑固な汚れがきれいになります。
ただし、コーティングなど表面加工をしてあるものには使用しないでください。たとえばテフロンによるコーティングをしてあるフライパンや鍋などは、コーティングを落としてしまうリスクがあります。また、お気に入りのものや高価なものも避けたほうがよいでしょう」(鈴木さん)
手を入れて洗うことが難しい哺乳瓶や水筒、花瓶などの汚れ落としにも活用できます。
「細かく砕いた殻を中に入れて、さらに少量の水を入れてシェイクするように振ってください。そうすると、スポンジが届きにくい部分の水アカなどの汚れを落とすことができます」(鈴木さん)
台拭きなどについてしまったひどい汚れも、卵の殻を使って落とすことができるそうです。
「お湯を沸かした鍋に砕いた卵の殻と洗濯物を入れて、一緒に30〜40分煮ます。その後は普段通り洗濯機にかけて洗うだけです」(鈴木さん)
これでなぜ汚れが落ちるのでしょうか。
「殻に含まれている炭酸カルシウムが加熱によって酸化カルシウムとなり、それが二酸化炭素と反応してお湯をアルカリ性に変え、汚れを落としやすくしてくれます。また、長時間煮沸することにより除菌効果も得られます。市販の漂白剤を頻繁に使いたくないという方にオススメです。
なお、殻が細かいと洗濯物に絡んで取り除きにくくなってしまうため、あまり砕きすぎないように気をつけてください」(鈴木さん)
この方法は、熱湯につけるので、注意が必要です。台拭きや雑巾など、繊維が傷んでも気にならないものに対して活用してください。
卵料理はほぼ毎日、食卓に上るもの。食べた数だけ卵殻と卵殻膜も生じます。旬の鶏卵をおいしく味わった後、殻は捨てずにさまざまな活用法で、有効性を実感してみてはいかがでしょうか。
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