近年人気が急上昇した「映えない」SNS、「BeReal(ビー・リアル)」。
今や日本でも、TikTokやTwitterなどと共にダウンロードランキング上位に名を連ねており、AppleのApp Storeアワードで2022年のベストiPhoneアプリ賞にも選ばれた。
「リアルな今」のコンテントに特化したこのアプリへの注目度は高く、その後TikTokが類似機能を持つ「TikTok Now」というアプリを発表したほどだ。
フランス発の「BeReal」は、「映え」を目指すInstagramなどと違い、名前通り「リアル」な自分をシェアするアプリ。
毎日ランダムな時間に一斉に通知アラームが届き、それから2分以内に写真を投稿しなければならない。スマホの外側と内側、両方のカメラが同時に撮影するため、撮っている自分の姿も記録される。投稿は1日に1回のみで、写真を見ることができるのは自分が承認した友人のみ。写真の加工はできない。
従来のSNSの概念から言えば、「なんのためのSNSなの?」と疑問の声も聞こえてきそうだが、まさにこの「リアルさ」が、今の流行の理由なのだ。
多くの研究が、ネットでネガティブな情報を読み続ける「ドゥームスクローリング」や過剰なソーシャルメディアの利用が、気分のむらやトラウマへの反応、共感力の低下など、メンタルヘルスに長期的な悪影響を及ぼすことを示唆している。
BeRealは、編集されていないパーソナルなコンテンツを提供することで、こうした問題に取り組もうとしている。しかしそれが実際に人々のメンタルヘルスやソーシャルメディアの利用習慣に変化を与えるかは、ユーザーによって異なるかもしれない。
それでもBeRealは、他のソーシャルメディアでよく関連づけされる有害な影響を制限しようと試みている。アメリカに住むBeRealユーザー、マッカートニー・マクドナルドさんは、このアプリはコミュニティーが緊密であればあるほど、より強い連帯感を感じることができると言う。
彼は、BeRealに投稿されるコンテンツは人々の日常生活の一部を切り取ったものであるため、他の写真共有アプリで見られるものより「控えめ」で家族向けであると話す。
BeRealは現在、広告プラットフォームを持っておらず、他のアプリからのコンテンツへの圧力や、アルゴリズムがエンゲージメントに及ぼす影響を軽減することを目指している。その結果、ユーザーにとって、いつ何を投稿するかというストレスが軽減される可能性がある。
2022年5月からBeRealを利用しているというタナシ・ゴメス・グリーンさんは、他のソーシャルメディアに比べ、BeRealでは無限にスクロールし続ける必要がないところを気に入っているようだ。
「何百人もの人と『友達』でない限り、BeRealで5〜10分以上を費やすのは難しいよ」と話し、このアプリで友達の投稿を見るにはまず自分が投稿しなければならないことも説明してくれた。
しかし、BeRealがより健全なソーシャルメディア体験を提供しているとしても、全てのユーザーにポジティブな変化を促す訳ではないようだ。
マクドナルドさんやゴメス・グリーンさんは、BeRealで加工なしのコンテンツを投稿することを優先しているが、だからといって「不健康な影響」が指摘されているInstagramやTwitterのようなアプリを削除したわけではない。
ニューヨークの精神科医、スー・ヴァルマ博士は、「BeRealは意図された通りに使えば、他のソーシャルメディアより良い可能性はあります。しかし、他のアプリと同様に、人々はFOMO(取り残されることへの恐れ)を感じずにはいられないのです」と述べる。
ヴァルマ博士は、BeRealは投稿のために写真を撮るのではなく、通知が来た際の状況を切り取るため、信ぴょう性が高い」とし、ある学生の友人が、ボーイフレンドの浮気をBeRealで知った例もあると付け加えた。
しかし、いくらBeRealが他のソーシャルメディアと比べて「優れて」いたとしても、SNSは常に、現実の交流を補うものであるべきだという。
「BeRealは、次回の友人との実際の集まりまでの間にお互い連絡を取り合うのに最適な方法です。でも、どのアプリでも、あなたが自分の自信を損ねたり、孤独や拒絶、いじめられているなどと感じる時は、ソーシャルメディアから距離をおくか、アプリを削除しましょう」
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集・加筆しました。
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“盛らない”SNS「BeReal」は、“映え”社会の救世主なのか