Google、Facebook、マイクロソフトなどの企業は、多くのユーザー情報を取得していることで有名です。しかし、これらの企業以上にユーザー情報を取得しているテック企業があります。それは「オラクル」という会社で、なんと50億人分のデータを持っているといわれています。
このように莫大なデータを持っているオラクルがどのように誕生したのかについて、海外YouTubeチャンネル「Logically Answered」が解説しています。
*Category:テクノロジー Technology *Source:Logically Answered,wikipedia
Google、Facebook、マイクロソフトなどの有名な企業にユーザー情報を取られたくなければ、その会社のサービスを使わなければいいだけの話です。しかし、オラクルのサービスを排除しようとする人は少ないです。なぜなら、オラクルは技術業界では有名ですが、技術業界以外では、ほとんどの人が同社の名前すら聞いたことがないからです。しかし、オラクルの時価総額は2000億ドル(約25兆円)を超え、世界第38位の企業です。
さらに、Fortune 500企業の98%がオラクルを使用しており、全世界で43万社以上の顧客を持っています。そして、その顧客はすべて1千万ドル(約12億円)以上の企業です。ちなみに、オラクルの創業者であるラリー・エリソン氏は、900億ドル(約11兆円)の純資産を持つ世界第7位のお金持ちでもあります。
オラクルは、企業向けソリューションにとどまらず、多くのハイテク製品やIPをあちこちに所有しています。例えば、オラクルはプログラミング言語であるJavaを所有しています。2021年にはTikTokを買おうとしたり、1997年には何度もAppleを買収しようとしていました。これらのことを考えると、オラクルのエンドユーザー数が合計50億人で、GAFA企業のどれよりも多いと聞いても驚かないでしょう。補足すると、Googleでさえ43億人のユーザーしかいません。
オラクル以上の顧客数を誇るのは、Nestleやコカ・コーラのような消費者ブランドや、Johnson and Johnsonのような企業だけです。しかし、これらの企業はテック企業ではないので、オラクルのように大量のデータを保有しているわけではありません。
数年前、エリソン氏は「地球上に人は何人いるか?70億人です。あと20億人です」と、全人類を支配する意図をあからさまにするようなプレゼンテーションを行っています。オラクルは目立ってはいませんが、巨大で豊かなだけでなく、非常に強力な企業です。では、オラクルはどのようにして、今の地位を築くことができたのでしょうか?
オラクルの歴史は1977年から始まります。同社は、データベース・ソフトウェアの開発会社としてスタートしました。実は、当初の社名は「Software Development Laboratories(SDL)」というものでした。
当初、エリソン氏が目指したのは、IBMの「System R Database」に対応したソフトウエアを作ることでした。しかし、IBMは知的財産を簡単に配るような企業ではありません。そのため、エラーコードのトラブルシューティングに非常に苦労することになりました。そこで、彼らはもっと簡単なターゲット、つまり政府に焦点を移すことにします。
アメリカ政府は、政府との契約を公開し、アメリカ国民なら誰でも入札することができるようにしています。そして、彼らはCIAのデータベースを構築する契約を獲得します。このプロジェクトが「オラクル」と呼ばれ、やがて社名になります。
そして、このプロジェクトで彼らは、SQLを使った世界初の商用リレーショナルデータベース・プログラムを開発します。この製品の最初の商用版は「Oracle V2」と名付けられました。なぜ、V1ではないかというと、V1では買ってくれる人が少ないと判断したからです。
そして、このプログラムは、かなりの評判を呼んだようです。その結果、データベースソフトにオラクルを採用する企業がどんどん増えていきました。そして、オラクルはOracle V3、V4、V5、V6、V7……と、毎年のようにデータベースソフトを改良していきます。当時は技術系企業が急成長しており、どの企業も自社で開発しないデータベースソフトを必要としていたため、これは非常に有利な条件でした。
世間の需要と重なったこともあり、オラクルは1989年に5億ドル(約640億円)以上の年間売上高を達成しました。しかし、オラクルはまだ始まったばかりで、彼らのコアビジネスは依然として指数関数的に成長していました。
その後オラクルは、すでに成功している企業を買収し始めます。オラクルにとって幸運だったのは、ドットコム・クラッシュの発生です。当然、オラクルの株価もドットコム・クラッシュで暴落しましたが、同社のビジネス自体は相変わらず好調で、他の企業を記録的な安値で買収する絶好の機会を得たのです。
オラクルが今までに行った「5大買収」に焦点をあてて解説します。
PeopleSoftは、ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)企業で、一般的なビジネス・タスクのためのソフトウェアを作成することに重点を置いています。彼らの製品ラインには、人的資源管理システム、財務管理ソリューション、サプライチェーン管理、顧客関係管理、およびエンタープライズ-パフォーマンス-マネジメントを含むソフトウェアの5つの主要な部分が含まれます。
これらの製品は、業務を遂行するためのものです。例えば、サプライチェーン・マネジメント・ソフトウェアは、企業が需要、供給、在庫、調達、注文管理などを追跡するのを助け、人事システムは、企業が新規採用、従業員の離職率、休暇時間、給与、福利厚生などを追跡するのに役立ちます。
基本的にすべての企業がこのソフトウェアを必要としていたのです。
Siebelもエンタープライズ・ソフトウェアの会社でしたが、ERPソフトウェアを売っていたわけではありません。彼らはCRMアプリケーションまたは顧客関係管理アプリケーションと呼ばれるエンタープライズソフトウェアの別のブランチを販売していました。
このソフトウェアは、企業がマーケティングや顧客サービスを管理し、調整するのに役立ちます。
BEA Systemsは、eコマースに重点を置いたビジネスプロセス管理ツールを提供しています。
BEA Systemsは、自らをEコマース・トランザクション・カンパニーと呼び、大量のEコマース取引を可能にするソフトウェアとサーバーの開発を専門としています。
サンは、他の企業とは異なり、1つの製品に特化していたわけではありません。同社は、ソフトウエアの開発からハードウエアの販売まで、あらゆることを行う巨大な複合企業です。
しかし、サンの最も興味深い部分は、彼らのさまざまな発明です。彼らは、プログラミング言語Java、オペレーティングシステムSolaris、ZFS、NFS、SPARCマイクロプロセッサーを開発しています。また、Unix、RISCプロセッサー、シンクライアントコンピューティング、仮想化コンピューティングにも多大な貢献をしています。
つまり、この買収により、オラクルは大量のIPを手に入れることができたということです。
Netsuiteは、クラウドベースのエンタープライズソフトウェア、クラウドコンピューティング、クラウドERPのエキスパートです。
オラクルは、当初、データベース・ソフトウェアからスタートしましたが、その後、世界中のあらゆるエンタープライズ向けソリューションを買収し、すべてを提供するようになりました。そうして、オラクルは50億人のデータを手に入れたのです。
オラクルは、Cookie、トラッキングピクセル、デバイス識別、クロスデバイス追跡を使用して、3つの情報を収集していると言われています。1つ目の情報は、ユーザーの名前、自宅と職場の住所、電子メールアドレス、電話番号などが含まれます。
2つ目の情報は、行動情報です。これには、ユーザーが閲覧したウェブサイト、オンラインおよびオフラインでの購入、ショッピングの場所、支払い方法などが含まれます。3つ目の情報は、収入、政治的見解、趣味などを含む、より個人的なものです。
そして厄介なのは、それらを避ける方法が事実上ないことです。大企業に文句を言う人は多いですが、その大企業でさえもオラクルを使わなければなりません。オラクルは、評判が良く、規模が大きく、信頼性が高く、基本的に必要とされるものすべてを備えた、バックエンドの巨人となっているのです。オラクルは、今後もより強力に、よりパワフルになるでしょう。
オラクルも順調ではなく、数カ月前、50億人のユーザーのデータを収集、プロファイリング、販売を行った疑いで、集団訴訟が起こされています。しかし、「Logically Answered」は、仮に100億ドル(約1.2兆円)の罰金を科してもオラクルに大きなダメージを与えられないと考えています。それほど、オラクルは巨大な企業なのです。
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