米軍が誇った5,000億円の水陸両用強襲揚陸艦「USSボノム・リシャール」。しかしこの戦艦は火災で4日間燃え続け、最終的に船は廃艦となっています。なぜ、この大火災を事前にとめることができなかったのでしょうか?その疑問について、海外YouTubeチャンネル「Not What You Think」が解説しています。
*Category:テクノロジー Technology *Source:Not What You Think,wikipedia(1),(2)
2020年7月、「USSボノム・リシャール」は、2年近くサンディエゴ海軍基地でメンテナンスを受けていました。長期のメンテナンス期間中は、海上で運航しているときよりも火災のリスクが著しく高くなることはよく知られています。なぜなら、作業員が船内に持ち込む機器や材料が可燃性であったり、船内システムの一部が一時的に使用できなくなっている可能性があるからです。
午前8時10分頃、火災現場から1階上の車両甲板を歩いていた船員は、下部の車両甲板に「白い霧がかかっている」ことに気づきました。しかし、煙の匂いはしなかったため、船員は誰にも報告しませんでした。
その直後、別の船員が白い煙が上がっているのを確認し、甲板仕官へ煙のことを伝えに駆け寄っています。しかし、火災が発表されたのは、最初の船員が白い霧を目にしてから約20分後のことでした。なぜ、発表が遅れたかというと、当初船員たちは煙の正体がディーゼル発電機の始動時の煙かなにかと勘違いし、まずそれを調べていたからです。そして、指揮官が不在の時に船を管理するCDOは、20分後の放送で初めて火災が発生していることを知りました。
CDOは、その日が最初の勤務日で何をするべきか分かりませんでした。そのため、彼はすぐに家にいる司令官にメールで連絡しました。また、執行官にもメールで報告しています。このような緊急事態であれば、電話で状況を説明するべきです。
この火災が発生してからすでに30分経過しても、まだ消火活動は行われていませんでした。そして、火災が報告されてから消火剤が投入されるまで約2時間かかり、その間に火災は制御不能になっていました。しかし、本来であれば人間が消火活動をしなくても、消火設備が働き被害を最小限に収めてくれるはずです。ただ、船はメンテナンス中だったため、システムの一部がオフになっていたのです。
また、ボノム・リシャールにはAFFFという消火装置が搭載されています。AFFFは、水性の膜をつくって火災の表面に広げ、可燃性の液体の蒸気を抑え、火災を効果的に鎮火させる仕組みです。しかし、火災当日は、AFFFのメンテナンスが適切に行われていなかったことや、AFFFの能力や利用方法を乗組員が熟知していなかったこともあり、AFFFが作動することはありませんでした。
さらに、問題だったのは船員が、どの消火設備が動いていて、どの設備が停止しているのかを知らなかったことです。そのため、船員たちは船の中を走り回って確認しなければならなかったのです。
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5,000億円の戦艦が「たった1つのかんちがい」から失われた残念すぎる事故