現在主流なブラウザはGoogle Chromeですが、他にもAppleのSafariやMicrosoft Edge、そしてFirefoxなど、ブラウザは数多く存在します。
中でもFirefoxはGoogle Chromeの長年のライバルでした。しかし不思議なことにGoogleは昨年、Firefoxに対して610億円を資金提供しており、同社の経営を助けています。なぜGoogleが競合を救うのか、その疑問について海外YouTubeチャンネル「Logically Answered」が解説しています。
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2008年にGoogle Chromeが発売されて以来、市場を席巻しています。現在はGoogleのサービスや拡張機能の統合により、多くの人がChromeを使っていることでしょう。
当然、Chrome以外のブラウザを利用しているユーザーもいます。例えばSafariやMicrosoft Edgeです。これらのブラウザはMacやWindowsにプリインストールされているため利用者が多いです。
しかし、Firefoxはどうでしょうか?Firefoxは現在、市場の7.69%を占めていますが、Windows、Mac、どのデバイスにもプリインストールされていません。つまり、Firefoxを使っている人はわざわざ入手しているということです。世界中の何十億もの人々がPCを使っていることを考えると、Firefoxのユーザーは合計3億6200万人にのぼります。
一見すると、Firefoxを使っているユーザーは、反ビッグテック、反Googleの人たちだと思われるかもしれません。しかし、よく見てみると、これは単なるGoogle嫌いのユーザーではないことがわかります。
実際、Firefoxが最高のブラウザである理由を議論するコミュニティが存在します。ここに集まる人たちは、Chromeを使いたくないからFirefoxを使っているのではなく、Firefoxを使いたいからFirefoxを使っているのです。この話は、Firefox がどのように資金調達しているかを理解すると、さらに興味深いものになります。
まず、Firefoxは非営利団体で、広告を出したり、他のインターネットベースのサービスを提供したりはしていません。そのため、実質的には資金提供でまかなわれています。そして最大の提供者は実はGoogleなのです。昨年、Firefoxを開発しているMozillaは合計5億ドル(約680億円)の資金を集めましたが、そのうち4億5000万ドル(約610億円)はGoogleからのものでした。
Googleが関与する以前、Mozillaは従業員を削減し、事業を縮小していました。つまり、Googleは、Firefoxを消滅させ、その市場シェアを吸収できたかもしれないにもかかわらず、Firefoxを救ったということです。GoogleとMozillaはライバル同士ですが、不思議な関係なのです。
なぜ何億人もの人がFirefoxを使っているのか?そして、なぜGoogleがFirefoxを救ってサポートしているのか?その理由を解説します。
人々がなぜFirefoxを使い続けるのかを理解するためには、そもそも人々がなぜFirefoxを使い始めたのかを知る必要があります。振り返ってみると、Firefoxのルーツは1990年代初頭のNetscapeという会社まで遡ります。Netscapeをご存じない方も多いかもしれませんが、当時はインターネットブラウザとして圧倒的な強さを誇っていました。
しかし、マイクロソフトがInternet Explorerを発売すると、すべてが変わることになります。Internet ExplorerはWindowsにプリインストールされているため、人々は新しいコンピュータを購入すると、同ブラウザを使うようになります。
マイクロソフトは、ブランド認知度、信頼度、開発力、マーケティング力などのあらゆる面で優位に立っていました。そこで、最後の手段として、Netscapeは1998年に自社のブラウザをオープンソース化することを試みます。何万人ものオープンソース開発者の力を借りて、マイクロソフトに対抗しようとしたのです。
しかし、実際には多くの壁にぶつかることになります。1つは、オープンソースのプロジェクトとしてはかなり複雑なブラウザであったため、協力できる開発者の数が大幅に制限されたことです。また、多くのコードがサードパーティからライセンスされていたため、Netscapeはブラウザの多くをオープンソース化することさえできませんでした。
数年間は手探り状態が続きますが、最終的に2002年6月に、すべてを廃棄してゼロから始めるという苦渋の決断をすることになります。そして、2004年2月にリリースされたのがFirefoxです。Firefoxは、発売されるまでにかなりの困難に直面しましたが、発売後の数年間は順調でした。 そして、2008年までにFirefoxは市場の30%を占めるようになります。しかし、まもなくしてChromeが登場し、その勢いが落ちていきます。
Chromeは、画期的な何かをもって登場したわけではありません。基本的にはFirefoxをGoogleが少しアップグレードしただけのものです。例えば、個々のタブを互いに独立させるサンドボックスのアイデアを導入したりしています。これにより、1つのタブがクラッシュしても、ブラウザ全体がクラッシュすることがなくなりました。
このような工夫により、ChromeはFirefoxよりも高速で安定した動作ができるようになりました。また、Chrome自体の多くの部分はオープンソース化されているため、Firefoxの利点もありませんでした。しかし、Chromeの本当のウリはGoogleのエコシステムです。
Chromeは、Gmailアカウント、Googleマップ、Googleドライブ、Googleのオフィスと統合されています。人々がGoogleの様々なサービスに依存するようになると、多くのユーザーがChromeに乗り換え出しました。Firefoxも決して引けを取っていませんが、一般人にとっては、ChromeではなくFirefoxを選ぶ理由は無くなってしまったのです。その結果、Firefoxは市場シェアを年々失い始め、現在に至っているのです。
Chromeがそんなに良いなら、なぜ人々はまだFirefoxを使っているのでしょうか?あまり知られていないことですが、Chromeはブラウザとしてはかなり計算負荷が高いです。Chromeは各タブを別々に扱うため大量のRAMを必要とします。つまり、Chromeで20個のタブを開いている場合、20個のRAMプロセスを持つということになります。
一方Firefoxは、一度に処理できる数を6個に制限しています。そのため、Firefoxで20個のタブを開いた場合でも、6個のRAMプロセスしか持たないため、低スペックのデバイスでも問題無く動作します。
また、Firefoxはプライバシー保護に関する利点もあります。Googleがユーザーのデータを収集し、関連する広告を提供することによって、資金を稼いでいることは周知の事実です。一方、Firefoxは、ユーザーのブラウジング履歴を追跡しません。なぜなら、非営利団体だからです。
ただ、FirefoxでGoogle.comにアクセスすると、Googleは多くのデータを収集することができます。しかし、FirefoxとDuckDuckGoのようなものを組み合わせて使えば、プライバシーをより保護することができるのです。このようにFirefoxを使うメリットもあるのです。
Googleはこのように相反するFirefoxになぜ資金を提供しているのでしょうか?表向きの答えは、Firefoxのデフォルト検索エンジンをGoogleにするためだそうです。しかし、これはあまり意味のあることではありません。
なぜなら、Firefoxユーザーのかなりの部分が、わざわざChromeではなくFirefoxを使っているため、そのユーザーたちは、Googleよりも別の検索エンジンを使う可能性が高いからです。
また、もしGoogleがFirefoxのサポートをやめた場合、Firefoxは潰れるはずです。Firefoxが無くなれば、Googleにとっては、マーケットシェアを拡大する絶好のチャンスのように思えます。このように、GoogleがFirefoxを助けるメリットはあまり無いのです。
「Logically Answered」は、GoogleがFirefoxをサポートする本当の理由はGoogleの「独占を守る」ためだと指摘しています。GoogleがFirefoxのシェアをコントロールしようがしまいが、Chromeのシェアは77%で既に独占状態です。しかし、Firefoxを排除した場合、独占の危機が訪れます。今、反トラスト(独占禁止法)規制当局から質問を受けたとき、GoogleはFirefoxでもっともらしい否認をすることができます。
GoogleはFirefoxが存在していれば、自分たちがいかにこのオープンソースプロジェクトを一人で支えているか、いかに競争を促しているかを語ることができるのです。しかし、もしFirefoxが無くなると、この理論は成立しづらくなります。つまり、Googleは今の独占状態を維持したいために、競合であるFirefoxに巨額の資金を提供してサポートし続けているということです。
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610億円を払って「Firefox」を延命するGoogleのズル賢さ