世界恐慌が起こるきっかけとして予想できるのが「アメリカの経済崩壊」です。このシナリオを海外YouTubeチャンネル「The Infographics Show」が時系列で解説しています。
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米国の人々はいつも通り起き、いつも通り働きます。しかし、今日は普通の日ではありません。今日は米国経済が崩壊し始める日なのです。
経済崩壊には前兆があります。まずインフレが長く続き、ハイパーインフレに近い高水準で推移します。お金の価値が下がると、商品やサービスの価格も上がります。しかし、給料はほとんど上がらないので、基本的な商品でさえ買うのが難しくなります。また、経済も同様に成長が鈍化し、失業者が増えているかもしれません。この2つの要因が重なると、スタグフレーションと呼ばれる状態になります。
インフレを抑えるために必要な方法が、かえって失業の増加につながることもあり、政府は厳しい判断を求められるようになります。株式市場は、多くの人が景気の良し悪しを判断するのに使う手段です。景気が良ければ、人々は投資を続けるでしょう。しかし、市場に対する投資家の信頼が突然失われると、市場は一気に悪化します。大企業が突然倒産したり、経済や世界の悪いニュースが流れたりすると、人々は株を売り始めます。
ある人が株を売り始めると、他の人もそれに続き、雪だるま式に売られ始めます。そこからパニックが始まります。
数時間のうちに、米国経済で何十億ドルもの資金が失われるでしょう。大手企業の株価も急落し、中には純資産の大半を失う企業も出てきます。ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクのような億万長者の多くは、その純資産を株式保有に大きく結びつけているため、彼らの純資産の半分以上は消えてしまうかもしれません。このような経済崩壊は、億万長者から、小口投資家まで、すべての人にとっての災難になります。
また、米国の債務上限引き上げをめぐる政治的緊張も、事態を悪化させるだけです。たった1日で、多くの企業が純資産のすべてを失い、取引終了時には数え切れないほどの人々が仕事を失います。しかし、これからもっと悪くなっていきます。
この日は、1929年以来、株価にとって最悪の日であり、2008年の大不況が引き起こした混乱を凌ぐものです。経済破綻がこれ以上悪化しないように援助を行うなど、何かをしなければならないことは分かっています。
2008年の株式市場の崩壊後、高額な救済法案が提出され、倒産しそうな企業の多くに現金が注入されました。そして2020年、コロナウイルスの大流行で株式市場が崩壊すると、政府は閉鎖された企業への支援と、失業した米国人への直接支援の両方を行いました。
しかし、今回は違います。株式市場の崩壊を食い止めるために急遽作られた救済法案は、納税者のお金を使いたくない人々や、より強固な法案を望む人々によって、僅差で否決されてしまったのです。その結果、米国経済への信頼はさらに失われ、ますます株式市場も下落していきます。
株式市場はわずか2日間で10%以上下落し、米国政府に資金を依存しているすべての人が不安を感じ始めます。また、米国以外の人々も不安を抱いています。なぜなら、米国政府は巨額の債務を持っており、その多くは海外からの借金だからです。現在、米国の国家債務は30兆ドル(約4,000兆円)もあり、米国経済が落ち込むと、世界中に影響を及ぼすことになるのです。
米ドルの価値は急速に下落し、債権者の多くはお金が戻ってこないことを心配するはずです。そこで一部の債権者は、今のうちに借金を取り返すことを決意するかもしれません。
一方、米国国内では、株価の暴落とそれに伴う倒産で企業が閉鎖され、多くの人々が失業に見舞われています。多くの人は次の食事をどうするのか?社会全体が崩壊したらどうなるのか?と不安を抱いていることでしょう。
株式市場の取引開始は午前9時30分から行われます。当然、取引が始まった瞬間から状況は厳しいです。また、食料品店では買い手が急増し、コロナ禍初期と同じように棚が空っぽになっています。このような状況は、ニュースで放送されるでしょう。
この映像を見た多くの人々は、さらにパニックになるかもしれません。もしかすると、最後の卵パックを取り合って客同士が乱闘をするかもしれません。さらに、略奪や無銭飲食や駐車場での強盗も多発する可能性もあります。その結果、明日以降、営業を中止する食料品店も出てくるでしょう。
わずか3日間で株式市場全体は20%程度落ち込みます。ここで、明日以降の株式市場は開くべきかどうかを検討する必要があります。現に、大統領暗殺、戦争勃発、大企業の倒産などの大きな事件が起きると取引が一時的に停止することがあります。
コロナ禍でも、一時的な停止で大量の売りを防ぎましたが、被害を食い止めることはできませんでした。ちなみに、株式市場の停止は、マイナス7%、13%、20%の3つの値で発動されるようです。
人々は、この状況が悪いことで、すぐには良くならないことだと認識し始めます。多くの人は現金をあまり持たず、すべてのお金を銀行に預けて、買い物はクレジットカードに頼っています。しかし、不安から少しでも信頼できるものを求め、いつもより多くお金を引き出そうと銀行へ向かいます。
同じように考える人は多く、銀行には長蛇の列が発生しています。その結果、銀行は手持ちの現金が足りなくなり、人々を追い返さざるを得なくなります。それでも、パニックが収まらない場合は、多くの銀行が閉鎖を避けるために引き出し制限を設け始めます。
大恐慌の時には、多くの銀行が完全に倒産し、多くの人が貯蓄を失っています。それ以来、銀行は政府によって保険に加入させられ、そのような事態が二度と起こらないようにしています。
一方、政府は救済法案を通過させることができないため、大統領は行政命令を下します。大統領はいくつかの緊急資金を確保しようとしましたが、大統領の力は限られており、状況を打開することはできません。
そこで大統領は、法案を作成するために両党の党首に交渉のテーブルにつくよう命じますが、両党とも独自の要求を持ってテーブルにつき、妥協する雰囲気はありません。彼らも、他の国の指導者たちからの怒りの電話攻勢にさらされているのです。
株式市場は閉鎖されたままであり、誰も再び開くことを急いでいないようです。そして、現金を求める客が殺到した銀行の多くも閉鎖されたままです。また、中小の銀行の多くはドアを閉めたままにして、誰もお金を引き出せないようにしています。食料品店では、コロナ禍の方針を復活させ、一度に入れる人数を少なくしています。
議会は救済法案を通過させるために、まだ交渉中のようです。債務の期限が迫っており、米国以外の国々は、米国が事態を把握できているのかどうか疑問に思い始めています。この状況を打開するための最優先事項は、請求書の支払いを開始するための現金の注入です。そのため、大量のお金を印刷し続ける必要があります。
大統領令があれば連邦準備制度理事会が現金を印刷し、差し迫った問題に対処することができます。しかし、これには厄介な副作用があります。それは、米ドルがさらに希釈してインフレを助長してしまうことです。
そして、もっと大きな危機がすぐそこまで来ています。米国は通常、多額の負債を抱えているため、政府は国が抱える負債の額に上限を設定し、定期的にその引き上げを議決しなければなりません。
その期限は刻々と迫っており、議員たちが救済法案をどうするかという議論と同時に、債務の上限を引き上げる議論もしなければならないのです。もし債務上限が引き上げられなければ、米国は債務不履行に陥ります。
米国はここからどうなってしまうのでしょうか?
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米国議会は債務上限引き上げの投票に召集され、全米が、そして世界が固唾をのんで見守ります。法案が可決されれば、米国は経済危機が去るまで債権者を見つけることができるでしょう。もし、否決されれば、米国債以外の一部の債権がほぼ即座にデフォルトに陥り、経済への信頼がさらに損なわれ、米国市場だけでなく世界市場もパニックに陥り、世界最大の経済混乱に発展します。
この状況だと「きっと債務上限を一時的に引き上げるか、少なくとも一時的な免除を通過させるためのクリーンな法案が可決されるのではないか?」と考えるかもしれませんが議会はそう簡単ではありません。救済法案をめぐる緊張が、審議が始まった瞬間から波及しているのはあきらかで、複数の議員が法案に異議を唱えたり、目下の問題とわずかにしか関係しない修正案を提示したりしています。
さらに悪いことに、支配政党は5議席の差しかなく、指導部としばしば対立する約10人の強硬派議員もいます。債務上限の引き上げを可決するには218票が必要ですが、最終法案には支持派と急進派の双方を怒らせる毒薬のような修正案が複数あり、採決の結果、わずか210票と足りませんでした。そして、全世界が見守る中、米国は午前0時をもって債務の一部が不履行に陥ります。
世界中のまだ動いている株式市場では、米国企業の株を売り払う人が出始めます。そして米国ドルは急速に下落し続けます。また、世界では、米国がこの100年間で最も弱く見えるため、さまざまな大国がナイフを研ぎ始めています。
経済危機が始まって1週間が経ち、大統領は不機嫌になっていることでしょう。すでに両党の党首を呼び出して、暴動騒ぎを起こしています。そして、時計の針が回り、米国が正式に債務を払えなくなりました。
大統領は早朝の残りの時間を同盟国との電話に費やし「これは一時的な問題であり、すぐにお金を手に入れることができる」と説明しました。ヨーロッパの大半の国々は理解を示してくれましたが、他の国々はあまり理解してくれません。
米国の最大の債権者である中国は、時をおかず、米国企業の拠点が中国の管理下に置かれ、米国船が中国の港で抑留されているという報告が世界中を駆け巡りはじめます。大統領は中国指導部と何度も緊迫した電話会談を行いましたが、中国は米国の資産を差し押さえることが公式な政策であるとは認めませんでした。国内が経済危機の渦中にある米国は、国際的な危機をこれ以上増やしたくはなかったため、大統領は中国の言葉を信じて、そっと立ち去るしかありません。
そして、国内の事態はさらに悪化していきます。危機が始まって1週間、多くの企業が大規模なキャッシュフロー問題に悩まされています。多くのオーナーは、企業価値が岩のように落ち、事業の成長に必要な資金を得ることができなくなっています。
拡張計画は保留され、予定していた融資は臆病な金融機関にキャンセルされ、何千もの中小企業から利益が消えます。そして、今月の家賃を払えないことがあきらかになると、企業は店を閉めざるを得なくなり、新たに何万人もの人々が仕事を失うことになりました。
経済危機の中で、あまり被害を受けなかった分野があります。それはソーシャルメディアです。パニックが拡大するにつれ、国民はソーシャルメディアを使って、何をすべきかについて自分なりに調べだします。
そこで、スーパーマーケットでのやりとりを撮影した動画が拡散されます。そこには、食料品の入ったカゴを持った客が、クレジットカードが使えないことに気づき、とにかく食料品を取らせてほしいと懇願したところ、警備員に乱暴に扱われる様子が映し出されています。それがきっかけで店内で乱闘が起こり、客は警備員と、後には警察と乱闘になります。この映像は数時間のうちに世界中に広まりました。
そして、最初の喧嘩の現場周辺では局所的な暴動が始まり、やがて全国の都市や郊外に広がります。ある者はスーパーマーケットを物色し、食料争奪戦をさらに激化させます。また、政府に不満をぶつけ、商店を略奪し、あるいは街頭で乱闘している者もいます。
警察は秩序を維持するために出動しますが、多勢に無勢の状態です。国民は政府が何もしていないように感じています。その後、ホワイトハウスの周りにデモ隊の群れが集まりだします。当然、シークレットサービスが、すぐに群衆を解散させようとしますが、争いは激しくなります。そして、何人かのデモ参加者は逮捕されるでしょう。これらの状況は、米国の情勢が危機に迫っていることを示しています。
米国の都市や郊外が炎に包まれる映像は世界中で拡散され、大統領は平和を呼びかけるスピーチを行います。各州は秩序を回復するために州兵を招集し始めましたが、州兵がその命令を拒否しているという報告も入ってきています。また、昨夜の騒動で深刻な被害を受けた企業や、暴動に巻き込まれたくない企業などが閉鎖を選択します。
そして、過激な解決策が提案されます。両党の有力議員たちは、大統領に非常事態を宣言し、国内有数の億万長者の資産を差し押さえるなど、極端な措置を取るよう求めます。ただ、億万長者から数千億ドルを押収出来たとしても、その程度の金額では何も役に立ちません。
多くの人は、現金を金のような価値のある商品と交換しようとします。しかし、経済が完全に崩壊した場合でも、金に価値はあるのかは不明です。
また、米国の人々の資産が他の国によって差し押さえられるという噂が世界中に広まり始めました。これは中国だけではなく、力の弱い国も行っているようです。米国の同盟国であるEUやイギリスでさえも、この状況に苛立ちを感じ、大統領に答えを求めるようになっています。
多くの人々は、米国がこの経済危機からすぐに脱することができないと考えています。米ドルは世界中で史上最低水準に急落し、何千もの企業が日を追って閉鎖し、国民はパニックに陥っています。大統領は再び国民に向けて演説を行います。そして、株式市場を閉鎖し、銀行の経営悪化を防ぐために現金の引き出しに厳しい制限を設ける緊急大統領令を発表します。
世界では、米国企業との取引は中止され、進行中のプロジェクトは保留され、米国企業の海外支店は閉鎖され始めます。これは、米国と親しい国でも実施されます。また、オンライン市場では、米ドルが日ごとに下落します。米ドルが、あまりに不安定で信頼できる通貨ではなくなったため、取り扱いが全面的に中止されます。
米国の人々は、これから長く続く経済の崩壊、あるいは完全な崩壊に備える準備を始めなければなりません。
このように大国である米国でも、経済崩壊するとたった10日で国内と世界中に大きな影響を与えてしまいます。もし、このような長引く経済危機が発生した場合、我々は何をするべきなのでしょうか?スーパーなどで買い占めをすることはよくありませんが、賞味期限の長い食料、水、救急箱、停電に備えた電池式のラジオや懐中電灯などは事前に準備しておきましょう。
ベネズエラやジンバブエのように、誤った政策を行いハイパーインフレに陥ってしまった国はいくつもあります。しかし、これがアメリカとなれば、日本を含む世界各国もただでは済まず、長く続く世界恐慌の始まりとなるでしょう。
オリジナルサイトで読む : AppBank
第二の世界恐慌「始まりの10日間」最悪シナリオを時系列で予測