プロ野球の新人選手選択会議、通称ドラフトが10月20日に開催される。
夏の甲子園で派手な爪痕を残したスラッガーのほか、高校・大学に投打二刀流の選手も登場するなど、今年の候補選手たちも粒揃いだ。
編集部では、競合間違いなしの逸材から、アマチュア野球ファン垂涎の隠れた才能まで22選手をリストアップ。事前に予習をしておけば1位から下位指名まで楽しめること請け合いだ。
今年の目玉は浅野翔吾外野手(高松商高)だ。
身長は170センチと野球選手としては決して大きくないものの、体重は86キロとユニフォーム越しにも筋骨隆々なのが伝わってくる。最大の魅力は長打力で、夏の香川県大会では主に一番打者として3本塁打。チームを甲子園へと導くと、佐久長聖(長野)戦では2打席連続本塁打を放つ。
さらに近江(滋賀)戦では、同じくドラフト候補で、のちに高校日本代表にも選ばれる山田陽翔投手と真っ向勝負。速球をバックスクリーンまで打ち返す圧巻の打撃を見せた。
足も速いうえ、右の変則投手対策にと左打席にも立つ抜群の器用さを持ち合わせた異色の選手でもある。現在は外野手だが内野へのコンバートも考えられ、野手の中心的存在を探すチームにとっては最高の素材だ。巨人が1位指名するとみられているが、競合必至だ。
大学生にも見逃せない存在がいる。矢澤宏太投手(日本体育大)だ。
神奈川・ 藤嶺藤沢高時代からその抜群の身体能力は有名で、投げても打ってもチームの中心だった矢澤投手。大学でも投手と外野手の二刀流を続行する。
投げては150キロを超える速球に、打者の手元で鋭く落ちるように変化するスライダーが武器。打席に立てばフルスイングが印象的だが、何よりも圧倒的なスピードが目を引く。6月に実施された大学日本代表の候補合宿では、50メートル走で5秒台を叩き出し参加選手中トップだった。
所属するリーグでは投手・外野手の両方でベストナインにも輝いた二刀流。日本ハムが1位指名を決めており、育成プランをどのように描くのかが注目される。
そのほか、1位候補として名前を挙げたいのが内藤鵬(ほう)内野手(日本航空石川高)。サードを守る巨漢のスラッガーで、高校通算53本塁打だ。
スイングスピードはプロでも希少な160キロオーバーと言われており、走攻守三拍子ともにハイレベルな浅野選手と比べると長打力に特化したタイプと言える。右の長距離打者はプロでも希少で、数年後の4番打者を探している球団が指名しそうだ。
高校生ではイヒネ・イツア内野手(誉高)も欠かせない。ナイジェリア出身の両親を持つ左打ちのショートで、俊足・強肩に加え守備面でも伸びしろが注目されている。夏の愛知県大会は三回戦敗退だったが、ライトスタンドにホームランを放つなど強く引っ張る打撃でアピール。ソフトバンクが1位指名を公言している。
大学生では蛭間拓哉外野手(早稲田大)が注目株。浦和学院高時代から打てて走れる攻撃型の外野手として話題を集め、進学先の早稲田大では下級生の頃からベンチ入り。リーグ戦通算12本塁打を放ち、大学日本代表でも4番を任されるなど実績十分だ。
オープンスタンス気味にゆったりと構え、踏み込んで広角に長打を量産する。2020年秋の早慶戦では、慶應義塾大がリーグ優勝まで残り1アウトと迫った場面で打席に立つと、変化球をバックスクリーンに運ぶサヨナラツーランを放ち早稲田大に劇的な逆転優勝をもたらした。西武ライオンズが1位指名を決めている。
社会人では吉村貢司郎投手(東芝)の1位指名が予想される。大卒3年目で、左足を振り子のように揺らして上げる独特なフォームから150キロを超える速球を投げる。カーブや落ちる球など変化球も多彩で、10月6日に行われたクライマックスシリーズを控えた東京ヤクルトとの練習試合では、プロ相手に3回無失点7奪三振の快投を披露。先発ローテーション争いに割って入れる即戦力だ。
高校野球ファンならば誰もが知っている強豪中の強豪・大阪桐蔭高。今年は3人の個性あふれる選手たちが指名を待つことになる。
まずは松尾汐恩(しおん)捕手。中学時代まではショートとして活躍していたが、高校入学後に捕手転向。3年間で高校日本代表の正捕手を掴み取るまでに成長した野球センスの塊だ。二塁送球では持ち前の強肩に加え、内野手出身らしいフットワークが光る。また、右打席から強く引っ張れる長打力も魅力で、甲子園で放ったホームランは春夏通算5本を数える。
プロ入り後は捕手か、はたまた内野手か。夢が広がる逸材だ。
主に5番・センターとして活躍した海老根優大外野手も指名候補だ。試合前の外野ノックから観衆を釘付けにする強肩や、送りバントのはずなのに1塁セーフになってしまう俊足など、規格外の身体能力の持ち主。打席の左右の違いはあれど、今年現役を退いた糸井嘉男選手(阪神)を思わせる才能だ。
タレント揃いの投手陣からは川原嗣貴(しき)投手がプロ志望届を出した。188センチと長身で、左足を大きく振り上げてから投げ下ろす140キロ台の速球が武器。制球や変化球にも優れ隙がなく、高校日本代表としてオランダ戦に先発すると5回を完封した(雨天コールド)。プロでも先発投手として期待がかかる。
上位指名が予想される投手を見ていこう。
高校生では門別啓人投手(東海大札幌高)。高校トップクラスの左腕で、普段は130キロ台後半のキレのある速球を中心にゲームを作るが、ランナーを背負うと一気にギアを上げ、右打者の内角に140キロ台のクロスファイアーを果敢に投げ込んでいく。切れ味鋭いスライダーとのコンビネーションが特長だ。
大野稼頭央投手(大島高)も同じくサウスポー。投手としてはやや痩身に見えなくもないが、全身のバネを使って投げ込む速球は140キロを超える。打者の近くで大きく変化するカーブやスライダーもあり奪三振能力に秀でた投手だ。
右投手では山田陽翔投手(近江高)の名前を挙げたい。甲子園では浅野選手に攻略されたものの、ほぼ真上から投じる速球は威力抜群で、スライダーやツーシームなどを駆使した揺さぶりも得意。パワフルな打撃でも注目される二刀流だが、プロでは本格派の先発投手として大成しそうだ。
即戦力としては、大学生の金村尚真投手(富士大)。コンパクトなテイクバックから低め低めへと丹念に制球する技巧派右腕だ。6月の全日本大学選手権では初戦で敗れたものの、10回を投げて2失点(自責1)。ストライクゾーンの外角ギリギリを攻める速球と、そこから逃げていく変化球の組み合わせで勝負していた。
社会人では林優樹投手(西濃運輸)に注目だ。近江高では度々甲子園のマウンドを踏み、左腕から投じる魔球・チェンジアップで多くの高校野球ファンを虜にした。社会人では抜群の変化球に加え、速球もコンスタントに140キロ台を記録するなど進化を遂げた。
続いては野手。
最初に名前が浮かぶのは西村瑠伊斗外野手(京都外大西高)。脱力したように両腕を下げたフォームから懐深くトップを取り、広角に長打を放つ左打者だ。夏の京都府大会では6試合で4本塁打とまさに向かうところ敵なしの打棒を披露。投手としてマウンドに立てば140キロ後半を記録する強肩の持ち主でもある。
左打ちでは三塚琉生(るい)外野手(桐生第一高)もいる。左投手としても注目されるが、高校通算31発の長打力が魅力だ。
上位指名が予想されるのが田中幹也内野手(亜細亜大学)。身長166センチと小柄だが、特筆すべき俊足と守備力の持ち主だ。4月の国学院大戦では1試合6盗塁という離れ業をやってのけた。東海大菅生高時代に出場した甲子園では、ショートとして三遊間の安打性の当たりを次々と好捕。捕ってからの送球も素早く、広島・菊池涼介選手を彷彿とさせる「忍者」ぶりを発揮した。
上位候補以外にも個性派は大勢いる。
まずは村上慶太内野手(九州学院高)。令和初の三冠王で、シーズン56本塁打を達成した東京ヤクルト・村上宗隆選手を兄に持つ左打者だ。守備位置は主にファーストで、身長190センチは兄よりも高い。夏の甲子園に出場し長打を放ったほか、10月の栃木国体・聖光学院(福島)戦ではレフト方向に流し打ってホームラン。打撃型の選手として指名が待たれる。
二人がプロ志望届を出した東京大学勢も要チェックだ。
阿久津怜生外野手はロマン溢れるアスリートタイプ。東大入学後はアメフト部に入り、持ち前の俊足を活かしてランニングバックとしてプレーした。大学2年生時に野球部へ転身。抜きん出たスピードのみならず、ボールをギリギリまで引きつけて身体の回転で飛ばす打撃もセールスポイントだ。
もう一人、井澤駿介投手は押しも押されぬ東大野球部のエース。カットボールなどを駆使した巧みな投球術でアウトを積み重ねていく。SNSではファンから「偉人」の称号が贈られている。
京都大学の愛澤祐亮捕手も変わり種。強肩の捕手として知られるが、マウンドに上がればアンダースローの技巧派投手に変貌する二刀流。同じく京大の水口(みなくち)創太投手は医学部所属。学業に励む傍ら、194センチの高身長を活かした投球でプロスカウトにアピールを続けてきた。
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