あまり目立っていませんが、アメリカで発売されたiPhone 14では、初めて携帯電話の重要部品である「SIMスロット」が廃止されています。デメリットもあるこの変更ですが、Appleはなぜここまでして強硬に物理SIMを排除しようとするのでしょうか?
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アメリカのiPhone 14シリーズは物理SIMではなくeSIMにしか対応していません。eSIMとはデジタルのSIMで、デバイスのマザーボードに直接接続されます。そのため、交換や排出をする必要がありません。
この方法には利点がある一方で、不便も生じています。
頻繁に旅行するiPhoneユーザーは、現地でSIMを購入し、お得なプランを利用することができます。しかし、国によってはeSIMに対応していなかったり、アイルランドのように1社しかサポートしていない国があります。そのため、現地の通信事業者を利用できず、2倍の料金が請求されることがあります。
Airaloのような世界的なサービスプロバイダーは、サポートのない地域でもeSIMを有効にすることができます。しかし、価格が高くデータ通信しか利用できません。現地で電話番号を必要とするユーザーにとっては不便でしょう。
もしiPhoneにSIMスロットがあれば、旅行しているユーザーは新しい国に到着してすぐ、物理SIMを受け取ることができます。
なぜAppleはSIMスロットを排除したのでしょうか。その理由は、eSIMであれば柔軟な対応ができるからです。
ユーザーは、キャリアの店舗に行ったり、デュアルSIMスロットを管理する必要はありません。iPhoneには8個以上のeSIMをインストールでき、同時に2つの電話番号を使うことができます。
そして、新しいデバイスへの変更も、物理SIMの交換が不要なため、よりシームレスに行えます。また、eSIMはより安全です。端末を紛失したり、盗まれたりしても、SIMを取り出してテキストメッセージや通話を傍受されることはありません。
通信会社にとっても、1枚10〜20ドル(1,500円〜3,000円)もする物理SIMを提供しなくなったことで、コスト削減になります。また、iPhoneからiPhoneへの移行が楽になるのに反して、物理SIMしかないAndroid端末に乗り換えるのが面倒になるのも、Appleにとってはメリットかもしれません。
そして忘れてはいけないのが、そもそもiPhoneを世に送り出したスティーブ・ジョブズが「物理SIMスロットを望んでいなかった」という点です。ジョブズは初代iPhoneの開発でもSIMスロットの搭載に反対しており、「もう穴はあけたくない」と主張していたといわれています。
iPhone 14では北米モデルのみSIMスロットが廃止されましたが、全モデルからSIMスロットが廃止できれば、端末内のスペースが空けば、当然ながら他の機能やパーツを詰め込むことができます。初代iPhoneでは叶わなかったジョブズの願いを、Appleはついに実現しようとしているのです。
eSIMへの移行は不便な点もあるかもしれませんが、他の企業や通信事業者がより広くサポートを展開するにつれ、時間とともに便利になっていくはずです。
日本でもeSIMに対応するキャリアは非常に多くなっています。現在日本で発売されているiPhoneにはSIMスロットが搭載されていますが、今後アメリカに追随して、SIMスロットが廃止される可能性も十分に考えられるでしょう。
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