(※記事中では、物語の内容や結末に関わる重要な部分に触れています。注意してお読みください)
『映画デリシャスパーティ♡プリキュア 夢みる♡お子さまランチ!』が、全国で上映されています。
映画の舞台は、お子さまランチのテーマパーク『ドリーミア』。キュアプレシャス(和実ゆい)とエナジー妖精のコメコメは、アトラクションやおいしい食べ物を楽しむ中で、園長のケットシーの秘密を知り、対峙することになります。
映画では、「ごはんは笑顔」というテレビアニメのキーワードを根底にしながら、「人との出会い」の大切さも描かれています。
例えば作中で、ケットシーは「ひどい大人」に出会い、「大人は許せない」と考えが変わってしまった一方、コメコメはゆいとの出会いを通し「ヒーローになりたい」という夢を持ちます。
またまっすぐな性格のゆいも、ケットシーの痛みに触れることで、ケットシーがひどいことをする背景への「想像力」を持つようになりました。
『デリシャスパーティ♡プリキュア』(以下、『デパプリ』)で和実ゆいとコメコメを演じる声優の菱川花菜さんと高森奈津美さんに、「出会い」をキーワードに作品への思いを聞きました。
(計2回掲載。菱川さんと高森さんに、物語のネタバレに触れず、作品の魅力を聞いた前編はこちらから)
――ケットシーの第一印象を教えてください。
菱川さん:
アフレコ後にビジュアルを見たのですが、想像していたよりも大きくてモフモフで、抱きしめたらきっと気持ちいいんだろうな、かわいいなあと思いました。
高森さん:
私も一番最初、コメコメたちと同じくらいのおむすびサイズだと思っていたので、資料をいただいて、でっかい!とびっくりしました(笑)
これをデザインしたのは、ゆいちゃんなんですよね。すごくかわいいんですが、私の中ではネコというよりはクマに見えてしまって(笑)でもコメコメはネコだと気づけるんですよ。コメコメの潜在的なゆいへの理解度の深さみたいなものをひっそりと感じて、なんかいいなって思いましたね。
――そんなケットシーですが、「ひどい大人」と出会い、傷ついた経験から、「大人は純粋な夢を邪魔する存在」と考えが変わった様子が描かれ、最終的にゆいたちと対峙することになります。
菱川さん:
ケットシーって、心の奥底はとても純粋だと思うんですよね。映画の序盤で、ケットシーが『ドリーミア』の園長としてコメコメたちをすごく喜ばせられているのは、子どもたちへの優しい思いがあるからだと思うんです。
そんなケットシーが自分の夢を踏みにじられたことをきっかけに、大人たちをぬいぐるみに変えるようになってしまいます。ケットシーが過去に大人たちにされたことを知るとものすごくつらくて、なぜそんなことをするのか、共感してしまう部分もあるかもしれません。
大人をぬいぐるみにするのも、子どもたちのためという純粋な思いが根底にあって、ケットシー自身も傷ついてきっとあの行動に出たんだなと切なくなりました。だからこそテレビアニメと同様に、倒すのではなく、浄化するというデパプリらしい結末になって、本当によかったなと思います。
子どもたちは特に、ゆいちゃんたちや、早く大人になりたいコメコメの想いに共感しやすいと思うのですが、もしかしたら、ケットシーがかわいそうだと思う子もいるかもしれません。ケットシーのつらさや痛みにも感情移入してもらえたら嬉しいなと。善悪だけでは語れない、いろんな見方ができるからこそ、大切なことを教えてくれる作品だと思います。
――ゆいはテレビアニメではとにかくまっすぐな女の子として描かれていて、そこが魅力である一方、年相応の「未熟さ」みたいなものもあるのではという声もあります。そんなゆいが映画では、ケットシーとの出会いを通し、ケットシーの行動にも「背景」があるのかもしれないと、「想像力」が強く芽生えたように感じました。映画でのゆいの変化や成長について、どう感じましたか。
菱川さん:
ゆいちゃんが持っている周りに愛される力って、ゆいちゃんが好かれたいからとかじゃなくて、人柄の良さからみんなが集まってくるところが根本にあると思っています。私はゆいちゃんが、それを自覚していると思っていなかったんですね。ですがゆいちゃんは『ドリーミア』での1日で、大きな「想像力」を見せてくれました。
これまでゆいちゃんにとって、友達や家族など大好きな人に囲まれる幸せな毎日は当たり前のようなものだったと思いますが、「ケットシーはそうじゃなかったのかもしれない」と気付きました。「自分の置かれている当たり前が、他の人にとってはそうではないのかもしれない」と自覚するシーンはとても感慨深くて。
ゆいちゃんは、シリアスな感情でも、人のことを考えられる子だったんだなと、私としてはすごく驚きました。
座古明史監督には「愛しさで溢れたシーンにしたい」とディレクションをいただいたのですが、ゆいちゃんの想いに感動して収録中に泣いてしまい、お芝居だと思われて、録り直したことを覚えています(笑)
――コメコメにとっても、ゆいやケットシーとの出会いは大きいもののように感じます。
高森さん:
テレビアニメの第1話でのゆいとの出会いからずっと、コメコメにとってはゆいが理想のヒーロー像だという思いが、根底にあると感じています。ですがケットシーの思いにふれたことで、ゆいと一緒に「ヒーローってどういうものなんだろう」という壁にぶつかりました。
そして「感情面での支えができる人が本当のヒーローなのかな」と初めて気づきました。コメコメもゆいもケットシーも、それぞれがいろんなことを教え合えたという点で、大切な出会いになったのかなと思います。
ケットシーから見ても2人との出会いって大きなものだと思っていて。ケットシーが持っている唯一の優しい記憶が、ゆいちゃんとのごはんの思い出なんですよね。それがあったからこそ、3人がつながり、分かりあうことができたというのがすごくいいなって思いました。
――映画では、ケットシーの思いにふれたことで、テレビアニメではゆいが信じて疑わなかった「ごはんは笑顔」について、心が揺らぎ悩むシーンがありました。
菱川さん:
ゆいちゃんがテレビアニメの第10話で「ゆいちゃんは、おばあちゃんの言葉でどれが一番好きメン?」と聞かれた時、「うーん、どれも好きだからなあ。でもやっぱり、『ごはんは笑顔』かな」と言っていたのを強く覚えています。ストーリー全体を通して、ゆいちゃんがその言葉をずっと大事にしていると感じてきたからこそ、「『ごはんは笑顔』じゃどうにもならないのかな」というセリフは、とても衝撃的でした。
――ゆいがぶつかった壁を乗り越えられたのは、コメコメがいたからかもしれません。
菱川さん:
コメコメはゆいちゃんと一緒にいる中で、成長してきました。
映画ではケットシーの思いにふれて、ゆいちゃんと一緒に挫折した時、コメコメはこれまでの成長での学びをそのまま返して、ゆいちゃんが前を向けました。
とても良い循環だなと思いましたし、ゆいちゃんと気持ちが繋がっているんだな、2人ともかっこいいヒーローだなって思いました。
――映画では出会いの大切さやシビアな面が描かれています。菱川さんは声優になって2年目で、『デパプリ』で初主演を務めていますが、ご自身の経験で出会いの大切さを感じることはありますか。
菱川さん:
私は菓彩あまね(キュアフィナーレ)役の茅野愛衣さんの声やお芝居との出会いをきっかけに、声優を目指しました。声優になる前、テレビの前で感じた憧れの気持ちが、今私をここに立たせています。
『デパプリ』のオーディションの時に茅野さんにご挨拶ができて、感激したことを覚えています。今、肩を並べて収録できていることが本当に嬉しいです。ですが同じ現場を経験させていただくことで、憧れだけでなく、負けないように、もっと近づけるようにといったライバル心みたいなものも芽生えました。出会いは何かのきっかけになるだけでなく、人を変える力もあると思っています。
――「デパプリ」という作品や菱川さんのお芝居に出会い、何かが変わっていく人もいるかもしれません。
菱川さん:
『プリキュア』シリーズは生きていく上で大切なことを教えてくれる作品だと思っています。『デパプリ』のテレビアニメにもごはんを食べる楽しさやそれをシェアする喜び、映画にはいろんな気持ちをシェアして分かり合うことができたらとても素敵なんじゃないかということなど、いろんなメッセージが詰まっています。
『デパプリ』との出会いが、何かの気づきや一生懸命頑張るきっかけになるように、これからも丁寧に演じていきたいですし、私自身も何かを届けられるような声優になりたいです。
<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>
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善悪だけでは語れない。プリキュア映画で声優たちが伝えたい「本当のヒーロー」の形【インタビュー】