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イーロン・マスクのSpaceXが打ち上げたロケットは過去20年でどれだけ巨大化したのか?


イーロン・マスクは、2002年に「SpaceX」を設立しました。SpaceXの目的は、宇宙旅行にかかる膨大な費用を削減し、人類が火星を探査し、最終的には人類が火星で生活ができるようにすることです。SpaceXは、今までに数多くの挑戦をしてきています。

そんなSpaceXが今までどのようなロケットを開発してきたのかや、SpaceXのこれからの目標について、海外YouTubeチャンネル「Flatlife」が解説しています。




*Category:テクノロジー Technology|*Source:Flatlife,wikipedia,Tesla

SpaceXのロケット開発の歴史とは?


イーロン・マスクが宇宙事業をする意義を以下のように述べています。

あなたは朝起きて、未来が素晴らしいものであると思いたいはずです。そのためには、宇宙文明を開拓する必要があります。未来を良くするためには過去から行動することです。地球から飛び出してエキサイティングな経験をしましょう。

もちろん、このような野心的な試みには、多くの時間と資金が必要です。

2002年にSpaceXは、カリフォルニア州エルセグンドを拠点とし、マスクの1億ドル(約130億円)の自己資金が投じられてスタートしました。SpaceXが最初のロケット「ファルコン1」の実験を開始したのは、それから3年後の2005年のことです。

「スター・ウォーズ」のミレニアム・ファルコンにちなんで名付けられたこのロケットの目的は、実際に火星に行くことではなく、SpaceXがまず地球を周回できるロケットを開発できることを証明することでした。

高さ21mのファルコン1は2段式で、総質量28,000キログラム、ペイロード(貨物)180kg、推力は1段目が最大450キロニュートン、2段目が31キロニュートンでした。しかし、悪天候や機械の故障が重なり、打ち上げ予定日が4ヶ月の間に3回も延期されるなど、決して順調な滑り出しとは言えませんでした。


そして、2006年3月24日にファルコン1は、ついに打ち上げに成功しました。しかし打ち上げから25秒後、ファルコン1は海に向かって転がり落ち始めました。なんと、内部火災が原因でエンジンが停止し、ミッション失敗の第1号となってしまったのです。

さらに2回目、3回目も同じように失敗しました。当初、3回分の打ち上げ予算しかなかったSpaceXにとって、これらの失敗は悲惨なものでした。

マスクは、この時期を「人生で最悪の時期」であり、精神的に崩壊しかかっていたと述べています。しかし、マスクとSpaceXのエンジニアたちは4回目の挑戦に向けて立ち直ります。

そして2008年9月28日、ファルコン1は軌道に乗ることに成功し、民間で初めて液体燃料ロケットを使用したロケットとなったのです。翌年7月には、ファルコン1が商業衛星を地球周回軌道に乗せることに成功し、さらに大きな偉業を達成しました。

打ち上げは、合計で5回行われました。ファルコン1の1回あたりの平均打ち上げコストは670万ドル(約9億円)です。


実は、SpaceXは「ファルコン1e」というロケットの製造も計画していました。ファルコン1eはファルコン1より6.1メートル長く、第1段と第2段のエンジンをアップグレードしたものです。しかし、ファルコン1も1eも「需要が限られる」という理由で、市場から撤退しています。

SpaceXは、最初の偉業達成後、NASAから16億ドル(約2,000億円)相当の契約を獲得しました。この契約には、国際宇宙ステーションに貨物を輸送できる大きな新しいロケットを開発することが含まれていました。

当初、SpaceXは「ファルコン5」を提案しました。ファルコン5はファルコン1の1基のエンジンの代わりに、マーリンエンジンを5基搭載しています。このロケットの興味深いところは、アメリカのロケットとしてはサターンV以来、初めてのエンジンを搭載したことです。このエンジンは、1つが停止してもミッションを完了することができます。

しかし、2006年にSpaceXはファルコン5をキャンセルし、代わりに9基のエンジンを搭載した大型のロケットである「ファルコン9」を開発することにしました。ファルコン9の最初のバージョンは高さが48メートルもあり、リオデジャネイロの救世主キリスト像よりも高いです。


そして、最大推力はファルコン1の10倍以上で1段目は4,940キロニュートンもあります。またファルコン9は、ファルコン1と同じく2段式のロケットで、2段目の最大推力は445キロニュートンです。

ファルコン1が地球低軌道に運ぶペイロードは180キログラムに過ぎなかったのに対し、ファルコン9はその58倍にあたる10,450キログラムを運ぶことができたのです。


また、無人宇宙船である「ドラゴン1カプセル」は、重量4,200キログラム、大きさ6.1m×3.7mあり、国際宇宙ステーションに最大6,000kgのペイロードを輸送することができます。

2010年6月4日、ケープカナベラルからのファルコン9のテスト飛行は完璧に実行され、ドラゴン宇宙船はミッションの目標を100%達成しました。そして2010年12月8日、NASAの商業軌道輸送サービス契約の一環として、ファルコン9とドラゴン・カプセルのテスト飛行が行われました。


この飛行により、SpaceXは民間企業として初めて宇宙船の打ち上げ、軌道上への投入、回収を成功させました。

そして2012年5月25日、ファルコン9はカーゴドラゴンカプセルを国際宇宙ステーションに輸送し、国際宇宙ステーションとのドッキングに成功した初の民間宇宙船となりました。

ファルコン9バージョン1.0は合計5回打ち上げられ、1回の打ち上げ費用は平均5,700万ドル(約76億円)です。

ちなみに、宇宙船の「ドラゴン」という名前は、音楽グループ、ピーター・ポール&マリーのヒット曲「Puff the Magic Dragon」から由来しているそうです。マスクは、多くの批評家が彼の目標を不可能だと考えたため「ドラゴンを追いかける」という意味で、この名前を選んだと説明しています。

2013年にデビューしたファルコン9のバージョン1.1は、高さが68mです。ロケットの燃料タンクが60%長くなり、質量が大幅に増加しました。打ち上げ時の推力は5,885キロニュートンです。さらに、地球低軌道へのペイロード能力は、10,500キログラムから13,200キログラムに上昇しました。


ロケットエンジンのレイアウトは前モデルから変更され、SpaceXはこれを「オクタウェブ」と呼んでいます。このロケットは製造工程を簡素化し、合理的に設計されています。

ファルコン9バージョン1.1の打ち上げは、3年間で15回行われ、1回あたりのコストは約5,900万ドル(約78億円)です。

そして2014年、NASAはSpaceXと26億ドル(約3,400億円)相当の別の契約を行いました。今回の契約は、貨物だけではなく、アメリカの宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに運ぶことも含まれていました。


今回SpaceXが利用する宇宙船は「ドラゴンV2」です。ドラゴンV2は、4人の宇宙飛行士と合計6,000kgのペイロードを軌道に乗せることができ、大きさは4m×8.1mとドラゴン1より少し大きくなっています。設計寿命は、フリーフライトで10日間、ISSにドッキングしている状態で210日間です。


実は、SpaceXはファルコン9エアロケットというものも計画していました。このロケットは地上から打ち上げられるのではなく、翼長で世界最大の航空機であるストラトローンチ・システムズの飛行機で高高度から打ち上げられる計画でした。

ファルコン9エアロケットは、新しい設計で、エンジンは4基のみとなる予定でした。しかし、このロケットはSpaceXの長期的な戦略ビジネスモデルにそぐわないと判断され、プロジェクトは終了します。


2015年には、さらに改良されたファルコン9のバージョン1.2が登場しました。「ファルコン9フル・スラスト」とも呼ばれるこのロケットは2015年12月21日に初打ち上げが実施されます。

この打ち上げで、ファルコン9フル・スラストは11基の衛星を軌道に乗せた後、第1段が帰還して狙い通りの場所に着陸しました。こうして史上初の軌道級ロケットの着陸を成功させたのです。


このロケットは、打ち上げられた後に再利用されるため、宇宙旅行のコストを劇的にさげることができます。ロケット開発にとって、この意義は非常に大きいものでした。

フル推力は段階的に改良され、各機種は「ブロック」と呼ばれるようになりました。最新型のブロック5は、マスクから「性能と再利用のしやすさが大幅に向上している」と評価されています。アップグレードにより、軌道上での長時間運用や3回以上のエンジン再点火が可能になりました。

ブロック5は高さ71メートル、1段目の推力は最大7,607キロニュートン、2段目の推力は最大934キロニュートンです。重量は549,000キログラムで、地球低軌道に22,800kgのペイロードを供給することができます。


そして、注目すべき性能は、火星に4,000キログラムのペイロードを送り込めることです。


2016年の1回の打ち上げコストは6,200万ドル(約80億円)でしたが、SpaceXはそれを平均5,000万ドル(約66億円)にまで下げることに成功しています。

2017年3月30日、SpaceXは使用済みロケットの再打ち上げと再着陸をまたひとつ成功させました。軌道クラスのロケットとしては、初めての偉業です。

ファルコン9の第1段ロケットは、ペイロードの搬入後、2回目の地球帰還を果たしました。現在までに、ファルコン9フル・スラストは132回打ち上げられ、117回の試行で111回の着陸に成功しています。

そして、2020年5月30日、SpaceXはダグ・ハーリーとボブ・ベーンケンの両宇宙飛行士をファルコン9で打ち上げ、国際宇宙ステーションに輸送しました。このことで、SpaceXは有人宇宙飛行へ進出します。


また、スペースシャトル計画終了後、9年ぶりの有人宇宙飛行となります。これは、まさに新時代の始まりです。それ以来、SpaceXは複数の有人宇宙飛行を行っています。

2021年9月、SpaceXは「インスピレーション4」を打ち上げ、民間人だけを乗せた初の軌道上宇宙飛行に成功しました。

ちなみに、ファルコン9は、初期設計から初飛行に至るまで約4億4,000万ドル(約580億円)の費用がかかっています。これは、NASAのロケットの3分の1程度の費用です。

SpaceXは、ロケットの部品の80%を外注せずに内製することで、コスト削減を実現しています。

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イーロン・マスクのSpaceXが打ち上げたロケットは過去20年でどれだけ巨大化したのか?