「無経験で高収入。ビザ申請も代わりに行いますし、飛行機代もタダ。空港までは迎えに参ります」「英語スキルは不要。タイピングができればOK」。
そんな甘い言葉でカンボジアやタイなどの東南アジアの国々へ誘い寄せられ、詐欺行為への加担を強要されるといった被害が台湾や香港などで相次いでいる。
「まだ370人前後がカンボジアにいる」。台湾内政部(内務省)の徐国勇・部長は8月21日、台湾メディアに対しこう明かした。念頭にあるのは台湾や香港などで被害者が相次いでいる人身売買事件だ。
台湾内政部や香港政府の発表を総合すると、手口はこうだ。まずネット上に「海外で働きませんか」という趣旨の広告を掲載する。英語力や特別な経験は一切必要なく、しかも高収入だと謳う。興味を持って連絡すると、ビザ申請や滞在場所の確保なども代行してくれ、飛行機代もタダだという。しかしいざ現地に着いてみればパスポートを取り上げられ、詐欺行為に従事させられる。
台湾内政部によると、まず詐欺の手法を教え込まれ、「台湾訛りで電話をしたり、メッセージを送ったりして、友人や知り合いを東南アジアに誘い寄せる」ことなどを強要されるという。現地では劣悪な環境に置かれ、暴力や性的暴行を受けることもあるという。
実際に騙されてカンボジアに飛んだあと、香港へ戻ったという男性は現地ネットメディア「香港01」の取材に対し「パスポートを取り上げられ、車でシアヌークビルへ連れて行かれた。詐欺だと気づいたので車を飛び出し逃げた」と話した。別の男性は3ヶ月間ミャンマーに留め置かれ、多額の借金を返済するまで離れることはできないと通告されたという。
台湾当局などは、騙されて東南アジアに飛んだ人たちの帰還に力を入れている。台湾CNAによると、21日までに台湾へ戻った被害者は72人にのぼる。同時に人身売買に携わった詐欺グループの捜査も展開しており、これまでに75人を逮捕した。そのほかにも、騙された29人の出発を事前に阻止した。
このうち内政部が公表している事例では、「月収5万〜10万台湾ドル(約22万7500円〜45万5000円)稼げる」という謳い文句で数百人を東南アジアに呼び寄せ、200万台湾ドル(約9000万円)を儲けていたとみられるという。
香港でも対策に乗り出していて、現地メディアによると、22日までに確認された被害者37人のうち、11人がすでに戻ったという。香港政府は電話やメッセージアプリにホットラインを開設して被害情報の収集を進めている。
東南アジアに飛んだ台湾出身者の救助をめぐっては、中国と台湾の間で火花も起きている。カンボジアの中国大使館は8月20日、カンボジアに滞在する台湾出身者への「手紙」を公開。「祖国はあなたたちの盾であり、どのような困難であろうと直接私たちに連絡できる」などとつづり、台湾は中国の不可分の一部であるとの立場を強調した。
これに対し、台湾外交部(外務省)は台湾メディアに対し、カンボジアなどで詐欺グループが発生したのは中国が推し進める巨大経済圏構想「一帯一路」が背景にあると主張。「自分たちで火をつけておきながら一方で助けるなどと叫んでも一帯一路の失敗は隠せず、台湾の人々の中国政府への反感を増加させるだけだ」と反論した。BBCは、台湾は「一つの中国」を支持するカンボジアに代表機構を持たないため、救助の難易度が上がっていると指摘している。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
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