世界一臭いと評される食べ物『シュールストレミング』。
主にスウェーデンで生産や消費される塩漬けのニシンの缶詰で、その強烈な臭いから、これまで多くのメディアなどで「ゲテモノ」として取り上げられてきた。
そんな缶詰を開封し食べるイベントを、東京都の東中野5丁目小滝町会が8月21日、東中野区民活動センターで開催する。
地域イベントとして開催することに、インターネット上では「行きたい」「意外と素敵かも」と大きな反響を呼んでいる一方で、「狂気」「さすがにちょっと…」という声も。
なぜ開催しようと思ったのかーー。
イベントに込めた思いについて、東中野5丁目小滝町会は「においや文化の違いから、私たち全員がつい抱いてしまう偏見や思い込みに正面から向き合い、それを克服することで、世界の広さや社会の多様性、人類の叡智の深さを知る真面目なイベントにしたいと考えています」と実直に語る。
『シュールストレミング』はこれまで、メディアやYouTubeなどで「ゲテモノ」として扱われてきた。インターネット上の大きな反応の背景には、これまでの扱いも大きいだろう。
ハフポスト日本版は東中野5丁目小滝町会に取材した。
ーーシュールストレミングの試食イベントを企画した目的を教えてください。
今回のイベントは特に以下の4つの思いに主眼を置いて企画しました。
1つ目は、 「世界一」と呼ばれる物を経験する機会を提供することで、多くの地区住民や参加者に生涯忘れることができない思い出を作ってもらいたいという思いがありました。
2つ目は、 偏見に繋がりがちな強い臭いに、スウェーデンの人たちの素晴らしい知恵と食文化が存在することを理解してもらう機会を提供したいという考え。とりわけ若い世代に見た目や臭い、他人からの情報に惑わされず、自ら判断し、異質な文化や価値観を理解する体験をしてもらいたいです。
3つ目は、北欧食の哲学である「地元で取れる食材」「知恵を活かした調理・保存」というスタンスは、地球の持続性を取り戻す SDGsにも通じる考えです。
環境意識の高い北欧の政治や社会、食文化について学び、未来のために地域レベルで何ができるのかを考える機会にしたいです。
4つ目は 嘲笑の対象になっている『シュールストレミング』について、多くの方に実際に食べてみる機会を提供することで、この優れた保存食にまつわる偏見を少しでも減らしたいと考えました。ひいては人や特定の物、考えが、生来の特性により偏見に晒されることが、少なくなることが理想だと思っています。
ーーイベントには参加したいという声が多くある中で、においの面など不安の声もあります。準備すべきことなどがあれば、教えてください。
シュールストレミングの開封と調理は屋外で行う予定で、町会のメンバーで開封
などの危険が伴う作業を行います。皆さんにはカナッペのようにパンなどの上にシュールストレミングの切り身を乗せたものを提供しますので、直接臭いや魚に触れる可能性は少ないと思われます。
ただ、万が一衣類に魚や魚由来の水分が付着した場合、服が再利用不能になる可能性が高いです。お気に入りの服での来場は控えていただければと思います。また、シュールストレミングに起因する事故や汚損については、主催者側では責任を負いかねます。ご理解、ご容赦お願いいたします。
ーー『シュールストレミング』の実食の前後に行う、食文化に関する講義やトークセッションの内容を教えてください。
現在、講師となる方は最終調整中ですが、欧州や北欧の国々で進められているSDGsのための取り組みについて講義をしていただく予定です。
その内容をもとに、私たちがどのような行動を起こすことで、地球環境の保護や、温室効果ガス削減に貢献でき、さらには多様性が尊重されるコミュニティーができるのかを議論したいと思います。
シュールストレミングの臭いを克服し、その知恵を理解するというイベントの趣旨に照らし合わせ、自分たちの偏見を取り去り他者の意見に耳を傾ける機会になればと考えています。
ーー今後もイベントは定期的に行う予定でしょうか。
異文化理解や多様性促進に関するイベントは今後も町会として継続して開催して
いきます。シュールストレミングの試食についても、町会や今回ご参加いただいた皆さんの声に耳を傾けながら、継続的に実施する方向で前向きに検討していきたいと思います。
また、本国スウェーデンでも毎年8月はシュールストレミングの解禁を祝う月間と位置付けられているそうです。今回のイベント開催の時期は偶然の一致となりましたが、今後はスウェーデンをはじめとした北欧の国々の文化を深く理解する機会としてのイベントの活用も検討していきたいと思います。
東中野5丁目が「シュールストレミングの街」として知られることはないとは思いますが、こうしたユニークでありながら真剣に街づくりを議論するイベントを行う町として、広く認知していただければ嬉しいです。
ーー最後に、特に伝たいことを教えてください。
大変多くの方にお問合せと参加希望をいただき心より感謝申し上げます。正直、
ここまで反響の大きなイベントになるとは想像しておりませんでしたが、当町会のチャレンジングな取り組みに関心を抱いていただき大変嬉しいです。
一方で、SNS 上では、奇を衒ったイベントというご理解をされている方も散見されます。しかしながら、小滝町会としては、このイベントもあくまで外国人講師を招いた民族料理教室のような異文化理解促進イベントの延長線上にあるものと考えております。
できる限り多くの方に関心を持っていただき、匂いや文化の違いから、私たち全員がつい抱いてしまう偏見や思い込みに正面から向き合い、それを克服することで、世界の広さや社会の多様性、人類の叡智の深さを知る真面目なイベントにしたいと考えています。
こうした気づきや学びによる、広い世界観の獲得は、とりわけ子供たちにとって新鮮で、時に人生の方向性を左右する貴重な体験にもなると思います。
200食程度とシュールストレミングの数に限りがありますので、場合によっては整理券をお配りすることになりますが、ぜひ一人でも多くのお子様に世界一を味わう機会を提供できればと考えております。
ご家族や友人たちとESGに関する議論を深め、効果的な施策のアイデアを考えるだけでなく、夏休みの自由研究などにご利用いただれければと思います。
・イベント名 「『世界一臭い!?』を食べて、地球の未来を考えよう」
・場所 東中野区民活動センター
・日時 8月21日10時半開場、14時まで。
・スケジュール
11時 講義「語ろう、スウェーデンの食と地球の未来」
12時 『シュールストレミング』開封の儀
13時 トークセッション
・問い合わせ 東中野区民活動センター運営委員会事務局(電話:03-3364-6795)
予約は不要で、町会以外の人の参加も歓迎。
『シュールストレミング』は現在のところ、おおむね 200 食分を用意する予定で、来場者が多い場合、整理券を配布する場合があるという。
担当者は「ぜひ、生涯忘れ得ぬ、ひと夏の思い出を作ってもらいたいと思います」と呼びかけている。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
東京の町会の「世界一臭い缶詰」を食べるイベントが「狂気的」と話題。込められた思いは、真摯なものだった