「台風4号は温帯低気圧に変わりました」
九州地方などに大雨をもたらした台風4号は7月5日、午前9時に温帯低気圧に変わった。しかし、この「変わった」などという表現には注意が必要だ。
そもそも台風と温帯低気圧は性質が異なる。気象庁の公式サイトの説明がわかりやすく、参考になる。
それによると、台風は「水蒸気が凝結して雲になるときに出す熱を原動力として、熱帯や亜熱帯の海上で発達している。したがって、台風は水蒸気を多く含んだ暖かい空気からできていることが特徴」だという。
一方で温帯低気圧は、北半球では北側の寒気と南側の暖気との境となる中緯度で発達し前線を伴っていて、「南北の温度差があることが大きな特徴」という。
「多くの台風は温帯低気圧になりながら弱まっていきます」と前置きした上で、2004年の台風第18号を例に挙げ、「温帯低気圧に変わりながら再び発達する低気圧もあります。この台風は長崎に上陸した後、日本海を北東に進みながら弱まって暴風域が狭くなりましたが、北海道の西の海上で温帯低気圧に性質を変えながら再び発達し、中心から離れた帯広や釧路地方でも強風が吹きました」と説明した。
台風では風が強い領域が中心付近に集中している一方、温帯低気圧は広い範囲で強風が吹くのが特徴だという。
5日も、Twitterなどでは「台風去った!安心」「台風去ってホッとした」などと安堵の声が数多く聞かれた。
実はこれ、今回に限ったことではなく、台風シーズンに台風が自分の周りから過ぎ去ったり、「台風は温帯低気圧に変わりました」と報道されると、よく散見されるツイートだ。
この状況から、「温帯低気圧」に変わったことで台風による影響が終わったと捉えてしまう人は一定数いると推測される。実は、これは危険だ。
全く恥ずかしい話だが、筆者も以前そのように捉えてしまっていた一人だ。
前職で放送局のアナウンサーだった頃、新人時代に前職の新人時代に台風のニュースを伝える場面があった。情報番組の中で「台風は温帯低気圧に変わりました。これでひとまず、安心ということで良いのでしょうか?」と気象予報士に投げかけると、「いえ、むしろもうしばらくは警戒を緩めてはいけません」と返答。誤った認識を正された経験がある。
情報を伝える立場として、当時は認識が甘かった。
ニュースなどで「台風第4号は温帯低気圧に変わりました」という一文を聞くだけだと、どこか“ポジティブな”印象を抱いてしまうかもしれない。だが、その後に続く文章がより重要だ。
ちなみに、5日午前10時51分に気象庁が発表した情報では、以下のように説明がある。
《台風第4号は温帯低気圧に変わりましたが、西日本から東日本の太平洋側では、6日にかけて土砂災害に厳重に警戒し、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください。また、落雷や竜巻などの激しい突風にも注意してください。》
台風が温帯低気圧に変わった後も、さまざまな自然災害に警戒するよう注意喚起している。
温帯低気圧に変わっても、6日正午までに予想される24時間に降る雨の量は、多い所で東海地方、四国地方で200ミリ、近畿地方、関東甲信地方で150ミリ、九州南部で100ミリの見込みとなっている。
台風シーズンはまだ続く。「温帯低気圧に変わった」と聞いても、その後もしばらくは注意・警戒を心がけたい。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
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