6月22日に公示、7月10日に投開票を迎える参議院議員選挙。若者の政治参加が進まず、未来へ希望が持ちにくいと言われる中、各政党はどのようなビジョンを示すのか。
U30世代に向けてSNSなどで分かりやすくニュースや社会問題を伝えている団体「NO YOUTH NO JAPAN」の代表で、ハフポスト日本版のU30社外編集委員を務める能條桃子さんが、各政党にインタビューを実施。政治への疑問や社会に対する不安をぶつけた。
シリーズ最終回の第7回は公明党。代表を務める山口那津男・参院議員(69)が取材に応じた。
能條桃子さん(以下、能條):
まず、公明党はどういう社会を、どういう日本を次世代に残したいと思っていますか? 若い世代にとって生きやすい社会を考えた時に日本の課題はどういうところにあると考えていますか?
山口那津男代表(以下、山口):
公明党は大きな理念として「生命」「生活」「生存」を最大に尊重する人間主義を訴えてきました。ニーズはその時代によって少しずつ変わっていきます。
公明党は希望を持って生きられる具体的な政策のあり方として、子育てに力を入れています。
若い世代が結婚したいということは自然なことだと思います。そして、お子さんを産んで育てていく。そのお子さんがまた未来を担っていく。それを阻んでいる社会の要因はたくさんある。
少なくとも、結婚して子どもを産み育てたいという思いを持っている人にはそれが叶えられる選択肢を政策として整えていきたい。
そこで「子育て応援トータルプラン」を年末までに提唱したいと思っています。
能條:
少子化は歯止めがかかっていません。今まで政策を作られてきて、与党でいる時間もかなり長いと思いますが、どう評価していますか?
山口:
経済的な支援を整えていくだけでも政策的には大変ですけど、それができたからといって、すぐに出生率が上がるということでは必ずしもない。だけど、それがなかったら、もっと厳しいことになっていただろうと思います。
先進国をいろいろ調べてみると、いろんな支援策を各国ともやっているんですが日本はかなり進んでいる面もあると思います。
だから、やっぱり生きる喜びや生きがいをつかみ取れる何かがもっと必要だと思います。
ただ、政治や政策というのは、国民の皆さんから税金をお預かりして、それをどこに優先的に充てるべきかを国会で決めていくという役割ですから、生き方の全ての要求を提供できるわけでは必ずしもありません。
しかし、政治がやるべきことを怠って、それで進まないということは絶対にあってはならないと思いますから、政治でできるニーズを絶え間なくつかんで、それを実現して充実させていくということが大事だと思います。
能條:
若い人は給料が上がったとしても、税金や社会保険料で引かれるものは大きいから、実感として給料が上がっていく感覚が得られづらい。若い世代が抱いている不公平感に対応できると思いますか?
山口:
それは深刻に受け止めなければならないと思います。人口が減り、少子高齢化も同時に進んでいきます。高齢者中心の年金・医療・介護の公的な負担を若い世代にしわ寄せしていくのはたまったものではないですよね。
だから、高齢化していく人が自分の蓄えや資産運用で自立して暮らせる要素も増やしていかなければならないと思いますし、また若い人の給与や所得の水準を上げていくことも大事だと思います。
能條:
少子高齢化で膨らむ社会保障費は、誰がもう少し負担できるのでしょうか?
山口:
みんな厳しいからみんなで負担する、あらゆる努力をするということでしょうね。
昔は若い世代が多くて、社会保障の恩恵を受ける高齢者が少なかったから、例えば現役世代何人で1人の老人を支えるとよく言いましたけど、今は支える側もとても少なくなりました。
支えられる側も、負担能力のある人はなるべく負担してもらう。例えば医療費の自己負担は少しずつ上げていく、あるいは収入や所得によって負担率を高くしていく。そういうこともお願いする。
それから保険で年金・医療・介護を運営してきましたけど、保険料だけではなくて税金で支える部分も増やしていく。払っている税金の中で、社会保障を支える財源にも少し充てていこうと思っています。
能條:
同性婚に対してはどういうスタンスですか?
山口:
公明党はとても寛容な政党だと思います。同性婚あるいは性同一性障害に対しては基本的に多様性を認めていこうというスタンスを取っています。
ただ、これを一方的に言うだけでは、制度としても実現できませんから、その理解を広げていく。
非常に抵抗感の強い部分もありますが、社会にそういう理解を広めていくことを目指そうということで、他党とも活発に協議をしています。
能條:
どういう人たちの理解が広まれば実現すると考えていますか?
山口:
やっぱり、とても保守的な家族観を持っている人たちは非常に抵抗が強いです。特に上の世代ほど抵抗感が強いかもしれません。
それは、男女の役割分担をとても強く意識してきた、あるいは夫婦同姓が当たり前と思ってきた世代。そういう時代に育った人はまだまだ抵抗感が強いのだろうと思います。
公明党は選択的夫婦別姓を制度化しましょうと早くから主張してきた政党です。
今や世論もそれを受け入れつつあるし、国際化が進んでいますから、世界の国々は別姓が当たり前の国の人たちもいるし、いろいろなファミリーの名前を連ねている個人も増えてきて、そういう人がもう日本にたくさんいて隣にいる時代です。
だから、違和感が少なくなって垣根が低くなってきていると思います。そういうことを率直に受け入れて、みんなが共存できるような社会を作っていくべきではないかと思っています。
それともう一つ、日本は一人っ子が増えてきています。一人っ子同士のカップルも生まれつつあります。
夫婦同姓にこだわっていると、どちらか一つを選ばなければならず、どっちかの姓をなくしてしまうということになります。伝統や歴史を重んじる立場から言っても、別姓を選択できるということは認めるべきではないかと思います。
選べないことのストレスの方が社会的に摩擦がとても増える。そういう現状になりつつあると思いますので、早く認めるべきだと思います。
能條:
被選挙権年齢についてはどう考えていますか?
山口:
自分が選んでもらって、議論をきちんとして、合意を作れる、そういう自信と能力のある人はなるべく出られる機会を広げていくことが望ましいと思います。
被選挙権は時代によって変わりうるものだと思いますから、もっと議論して、全国民・全世代から代表されるに足る、そういう力や素養を持った人は一定の年齢にこだわる必要はないとは思います。
能條:
年齢について何歳にした方がいいという具体的なイメージはありますか?
山口:
今よりはもう少し下げてもいいのではないかと思っています。
能條:
成人年齢の引き下げが4月にありました。投票できるのは18歳からになりました。
山口:
選挙権は18歳まで下げましたから、そういう人たちも含めて、どれくらいだったら、選ばれるに足る年齢かというのはもっと議論を深めて結論を出してもいいと思います。
少なくとも現状よりは下げてもいいと思っています。
能條:
防衛費を増額するべきだ、その額をいくらくらいにするのかという議論があると思いますが、どう考えていますか?
山口:
防衛費だけで見るのではなくて、やはり日本の安全をどう守っていくか、それには周りの国々のあり方ということも影響されます。
以前は日本がアメリカと同盟関係を結んでいれば、アメリカの圧倒的な力で、周りの国々では挑戦者がどこも現れなかった。
けれども、経済力の発展とともに、あるいは国々の相対的な力関係の変化とともに、軍事力をどんどん拡大して、それが行動として現れるようになってきました。
ミサイルを日本海に向けて何度も打ってくるような事態も出現しています。国民は不安に思っていると思います。
日本だけで対応するのではなくて、まずは日米同盟。圧倒的な軍事力を持っているアメリカが日本に抑止力を拡大して提供すると言っているわけです。
日本とアメリカがバラバラではなく、ともに協力しながら、日本の安全を守るようにしていくことが、外国からの武力攻撃を招かないことにつながっていくと思いますから、日本の防衛力はその点でも、よく検討した上で、今よりも備えを固めていく必要があると思っています。
一方で、対話によって物事を解決するという外交が一番大事です。アジアにおいても経済的、あるいは政治的に対抗しているように見える国でも対話によって緊張を和らげる、万が一の衝突を避ける仕組みを作っていく必要があると思います。
能條:
最後に、どういう若い人に投票してほしいですか。こういう人は公明党に投票してほしいというアピールがあったら教えてください。
山口:
公明党が外せないのは、特に政治の助けがないと生活ができない、生き延びていけないという人たちです。そういうところにちゃんと光を当てて政策を実行していく。これが公明党の一つのあり方です。
しかも机上の空論ではなくて、現場をよく見て、たとえ小さな声でもよく聞いて、それを真摯に真面目に実現していく。こういう姿勢をアピールしたいです。
公明党は地方議員と国会議員がネットワークを形成しています。これが横にも縦にもつながっていますから、チームワークで仕事をすることができる政党です。世論も敏感にキャッチすることができるし、現実に対応することができると自負しています。
(執筆:田口雅士 写真:坪池順)
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少子化に歯止めかからず、与党の責任は? 山口那津男代表インタビュー【U30×公明党】