本格的な夏の到来を前に、学校でのマスクの着用の是非が注目されている。
末松信介文部科学大臣は6月10日、閣議後の記者会見で、体育の授業や運動部での活動、登下校の際にマスクを外すことを指導するよう全国の教育委員会などに改めて求める考えを示した。
学校生活での熱中症予防を徹底するためとしている。学校での夏の時期のマスク着用をめぐっては、保護者などからもSNSで様々な声が寄せられている。
会見で末松大臣は「熱中症により、多くの生徒が救急搬送される事案が複数発生しており、非常に憂慮している」とした上で、今後、気温や湿度がさらに高くなり、マスクを着用することで熱中症リスクが一層高まる」などと指摘した。
続けて、末松大臣は次の3点に言及し、全国の教育委員会などに改めて指導を求める考えを示した。
・熱中症が命に関わる重大な問題であることを認識し、その危険性を適切に指導する
・体育の授業や運動部での活動、あるいは登下校の際には熱中症対策を優先し、マスクを外すことを指導すること
・できるだけ距離を空ける。近距離での会話を控えるなどの工夫をよく検討いただき、必要な対応を取ること
末松大臣は「基本的な感染対策としてのマスクの着用の重要性は変わらない」と述べた上で、「熱中症の危険性を認識したうえで、メリハリあるマスクの取り扱いをはじめ、熱中症対策に取り組んでもらいたい」と結んだ。
大臣の会見の前にすでに対応に乗り出している自治体もある。例えば大阪市だ。同市の教育委員会は9日、屋外で運動時には「教員」もマスクを外し、児童や生徒の熱中症対策に取り組む方針を決めたという。
屋外での体育の授業や部活動の際には、原則として教員が率先してマスクを外すよう近日中に各学校に通知する。児童や生徒からは「先生がマスクを着けていると外しにくい」という声や意見が寄せられていたという。
大阪市では2日、大阪女学院中・高で体育大会の開催中に生徒らが熱中症になった。神戸新聞の報道によると、女子生徒29人と保護者の女性1人の計30人が熱中症の症状を訴え、病院に搬送されたという。
学校側は生徒に「マスクを外していい」と伝えていたが、観覧中でも多いときで4割程度の生徒がマスクを着用していたと報じられている。
2021年2月には大阪府高槻市の小学校で、一時マスクを着用しながら体育の授業の「5分間走」をしていた当時5年生の男子児童が倒れて亡くなっている。
大学教授らなどで構成された事故調査委員会は報告書をまとめて市の教育委員会に答申。報告書で学校側のマスクの指導などに事故の原因となり得る瑕疵(かし)はみられなかったと結論づけられている。
亡くなった児童の保護者は死因の調査を継続。「運動時のマスクの使い方を見直すきっかけになれば」とインタビューで答えていた。
熱中症のリスクが一層高まる夏。SNSでは「そもそも熱中症の危険がある日に外で体育をやらなくてもいいのでは」などと児童や生徒の保護者などから、炎天下での外や運動場での体育の実施そのものに疑問を投げかける声も出ている。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
体育で「教員もマスクを外して」と促す自治体も。学校での熱中症対策で末松信介文科相が訴えた3つのこと