「八十八夜」と「お茶」の深い関係とは?この時期のお茶が美味しい理由

ウェザーニュースより

2022/05/02 05:02 ウェザーニュース

♪夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは茶摘(ちゃつみ)じゃないか
あかねだすきに菅(すげ)の笠

これは唱歌『茶摘』の1番です。一度は聞いたことがある人も多いと思いますが、「八十八夜」とはいつのことか知っていますか?

季節を表す言葉には「二十四節気」や「五節句」がありますが、それ以外で季節ごとの節目となる日を「雑節(ざっせつ)」と呼びます。雑節には節分、彼岸、土用などがあり、八十八夜もその一つです。

八十八夜とはどのような日なのか、長年お茶の製造、販売、卸売を続けている株式会社荒畑園(静岡県牧之原市)に教えてもらいました。

どこから数えて八十八夜なのか

「八十八夜とは、立春から数えて88日後の日です。八十八夜から後は、畑や田んぼに霜が降りなくなり、本格的な夏が始まる日とされています。日本ではこの日を、田植えや茶摘みなど初夏の農作業を始める目安としてきました」(荒畑園)

そういえば、秋に台風がよく来る日とされる二百十日(にひゃくとうか)も、立春から数えた日数で表現される雑節です。旧暦では1年の始まりが立春だったので、かなり先の季節もきちんと立春から数えたのでしょう。

今年(2022年)の立春は2月4日でしたから、八十八夜は5月2日になります。ちなみに来年も5月2日、再来年は5月1日が八十八夜です。

八十八夜の意義を、もう少し詳しく聞いてみましょう。

「八十八夜を待って始める農作業には、田植え、野菜の種まき、苗の植え付け、茶摘みなどがあります。霜が降りないと苗や新芽にダメージを受ける心配がなくなるため、農家は一斉に初夏の農作業をスタートさせるのです。農業中心の生活を送ってきた昔の日本人にとって、八十八夜は大切な日でした」(荒畑園)

八十八夜とお茶の深い関係

茶摘み歌の歌詞は地域によって異なるようですが、文部省唱歌の2番の歌詞はこうなっています。

♪日和(ひより)つづきの今日このごろを
 心のどこかに摘みつつ歌う
 摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ
 摘まにゃ日本の茶にならぬ

この歌詞からは、いかにも手摘みの様子が伝わってきますが、今でも手摘みは行われているのでしょうか。

「手摘みだと人手と時間がかかるので機械摘みが主流になりましたが、八十八夜頃の一番茶は、今でも手摘みをする茶園が少なくありません。人がお茶の葉の新芽を見ながら一つひとつ摘んでいくと、古い葉や茎がほとんど入らないため、品質のいいお茶を作ることができます。

一番茶は1年で最初に収穫されるお茶なので、うま味成分であるテアニンの含有量が飛びぬけて多いお茶でもあります」(荒畑園)

八十八夜頃のお茶が貴重なのは、手摘みであることと、1年でいちばんうま味成分を含んでいるからなのですね。

八十八夜に摘んだお茶は縁起物

八十八夜の頃に摘まれたお茶は、昔から縁起がいいとされました。これにはどんな理由があるのでしょうか。

「まず、八の字が末広がりで縁起が良く、その八が重なる八十八夜はさらに縁起が良いとされてきたからです。米という字を分解すると八十八になりますが、これもお米を大切にする日本人の心をよく表しています。

また、『八十八夜のお茶を飲むと寿命が延びる』『八十八夜のお茶を飲むと1年間健康でいられる』とも言われています。

これは八十八夜という末広がりの日に摘まれたから縁起がいいというだけでなく、初物を尊ぶ風習にもよるものです。

日本では昔から、そのシーズンに出始めたものを食べると“初物七十五日”といって寿命が75日延びると言われました。初物には生気が溢れていて、食べることでそのエネルギーを取り入れることができると考えられていたのです」(荒畑園)

この時期のお茶はなぜおいしいのか

「一番茶は4月中旬から5月中旬にかけて摘まれたお茶です。二番茶は一番茶収穫終了から2か月後(6月中旬から7月中旬)、三番茶は二番茶収穫終了から2~3週間後(7月中旬から8月下旬)になります。

その中でいちばんおいしい八十八夜の新芽には、うま味成分であるテアニンがたっぷりと含まれています。このテアニンは、紫外線に当たると苦み成分であるカテキンに変化します。そのため、まだ紫外線が弱い八十八夜の頃に摘んだお茶は、苦みや渋みが少なくておししいお茶だということになります」(荒畑園さん)

この時期は、ぜひ摘みたてのおいしいお茶を味わってみてください。

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