楽しみにしていた観劇やコンサート、スポーツ観戦。
しかし、席についてみると前の人が視界を遮り、よく見えなかったり、集中できなかったりすることも…。
そんな悲劇が、誰の身にも起きないように。
福岡市博多区にある劇場「博多座」がTwitterに投稿した動画が話題になっています。
動画では、前のめりで観劇した際、後方に座る人の視界をどれくらい遮るかを検証しています。
背もたれに背中をつけると、後方の人の視界は良好。少し頭で遮られますが、舞台に立つ人はよく見え、観劇には問題なさそうです。
次に、背中をつけずに前のめりになると…舞台上の人が視界から丸ごと消えてしまいました。動画では「推し、消えゆ」と表現されています。
検証結果は「前のめりは後ろの席のお客様の視界を想像以上に遮ります」。「背もたれに背中をつけてのご観劇をお願いします」と呼びかけ、同時に「心の前のめり」は大歓迎だとしました。
多くの劇場や映画館などでは、視界が良好になるよう高さなどを工夫して座席が配置されています。しかし、前のめりに座ると、後方の人の視界を遮ってしまうことがよくわかる動画になっています。
なぜ、博多座はこの動画を制作したのでしょうか。
担当者によると、観劇にきたお客さんからは毎日のように、「前のめりで見えにくいので注意してほしい」という声があがっているそう。アナウンスや開演前の声掛けもしているけれど、なかなか改善されず、劇場としても気にしていたといいます。
博多座では、5月1日から『千と千尋の神隠し』の舞台が開演。公演は満席で、「いつにも増して前のめりの方が多くなるのでは」と予想したそうです。
「特にお子様が、おそらく博多座始まって以来の数になるので、楽しみにしている親子のお客様をがっかりさせたくない。
映画が2001年公開なので、ファンの方からすれば20年越しの熱い思いを持って劇場にいらっしゃる。しかも主演の橋本環奈さんは福岡県、上白石萌音さんは鹿児島県の出身。九州の劇場としてもできる限りのことをしたいと考えました」
動画はアニメーションも取り入れてわかりやすく、軽快でユーモアのある内容に。一期一会の舞台の場。誰もが嫌な思いをせずに、作品を楽しんでほしいという思いがありました。
「前のめりをされている方はわざとやっているわけではなく、知っているか知らないかだけで、お客様一人一人が劇場の一体感をつくる大切な仲間です。
あまり細かく、“マナー警察”のようになると、演劇に興味を持ってくれた人が、逆に距離をとってしまうことになりかねない。でも演劇をずっと支えてくれている昔からのファンの方にも満足していただきたい」
担当者は「私も腰痛持ちなので、2~3時間背中をつけてじっとしているのはとても疲れるのはわかります」とも話します。
「個人個人で事情がある方もいらっしゃる。どういったお願いの仕方がいいのか、バランスはこれからも考えないといけない」
Twitte上では「知らなかった」「私もそうなっていたかも」「これめっちゃ大事」「全ての劇場で開演前に流してほしいぐらい」などと反響が広がり、4万をこえる「いいね」が寄せられています。
担当者は、この反響について「動画を作った意味があって嬉しい」と受け止めを語り、こう続けました。
「この動画を見て、着席で楽しむエンターテインメントでは、こういうことが起こりえると、少しでも知っていただけたら。そして、演劇に興味を持っていただき、もっと言えば博多座で観てみたいというお客様が増えればうれしいです」
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
前のめりの観劇、気をつけて。「推し」が消える…視界の変化が一目瞭然の動画がネットで話題