新型コロナの影響で、3年ぶりのリアル開催となった東京レインボープライド(TRP)。
4月23〜25日の3日間、レインボーカラーに染まった会場の代々木公園には、たくさんの人が足を運び、久しぶりの再会を喜んだ。
“性”と“生”の多様性を祝うTRP。3年ぶりのリアル開催は、参加者にとってどんな場所になったのだろう。
会場で出会った人たちが、感じた気持ちをスケッチブック上で表現してくれた。
リアル開催がなくて「寂しかった〜」と話してくれたのは、YouTuberのかずえちゃん。
「やっぱりオフラインは最高!!こんなにたくさんのAlly(アライ)や仲間がいて幸せです」とつづった。
オンライン開催もよかったけれど、リアルで集うことで、TRPという空間の特別さを改めて実感したそう。
「アライや当事者、本当に色々な人がいるんだなというのを身をもって感じられるのが、すごいいいなと感じます。安心できる、自分らしくいられる空間です」
「TRPが特別なんじゃなくて、毎日がこうであってほしい。ここでは自分らしくいられても、日常に戻ると自分を隠さなきゃいけない人もいるのかなと考えると、毎日がこうだったらいいなと思います」
大阪から泊まりがけでやってきた、津田愛梨さん。
距離があっても足を運ぶのは、「色々なことを見てみたい、知ってみたい」という思いから。TRPの新しい取り組みや活動は、津田さんにとって夢と希望になっているそう。
さらに、全国から来る人たちと出会えることや、知っている人たちと再会できることも、TRPの大きな魅力だ。
「知り合いに会えるので、1年に1回の同窓会をしているような感覚です」
東ちづるさんは、TRPという安心して集まれる場所があることが「サイコー」だと改めて実感した。
「ここは色眼鏡で見られず、気を使わずに過ごせる時間、空間。知らない人とも笑顔で会える。それが最高ですよね。これが多様性社会だと思うし、なんでこれが毎日そうじゃないんだろうって気付く場所でもありますね」
どんな人も排除されない「まぜこぜ」の社会を作る一般社団法人「Get in touch」代表理事の東さん。「まぜこぜ」についてこう話す。
「まぜこぜっていうのは、色々な人間集まりなので、本当に面倒くさいです。だけどその面倒くささから気づきがあり、次に進める一歩もある。だから面倒くさい分以上に、居心地の良さがあります」
「普段からTRPのような感じだと、歳をとるのも、障がい者になるのも、病気になるのも、あんまり怖くない。なんとかなると思えますよね」
LGBTQの子どもや若者のつながり作りをする一般社団法人「にじーず」スタッフのぷーださんは、長く会えなかった仲間と再会できた喜びと感謝を「よく生き延びた」というメッセージに込めた。
それは、これまでの活動の中で、再会できるのが「奇跡」と感じてきたからだ。
「この10年、居場所づくりの活動などをする中で、生きているのも難しいという仲間たちに出会ってきました。次にまた会えるかどうかわからない、会えるのが奇跡なんじゃないかと思える現実があります」
「TRPは年に1回、みんなが一緒に集まって『よくこの一年生き延びたね』と言える場所。今回は丸3年ぶりに、よく生き延びたねと言いたいと思ってメッセージを書きました」
末尾の「また会える日まで」という言葉には、次の再会への希望が込められている。
大阪から訪れた、交際して18年目となるすみとさんとげんきさんは、「やっぱりリアルで会えてうれしい!」と思いをつづった。
3年ぶりにリアルで集まることができ、会場の熱気やみんなで楽しんでいる空気を感じられた。
近年は関西地方でもLGBTQに関するイベントが増えた。それぞれに参加し楽しんでいるが、TRPには大きな魅力がある。その1つが、規模の大きさだ。
これまでの知り合いと再会できるほか、新しい出会いが待っている場でもあるという。
「セクシュアリティや住んでいるところを問わず、いろんな人と楽しさを共有できることが、TRPの魅力だと思っています」
河野禎之さんが、スケッチブックに大きく書いた言葉は「空気」の二文字。
この言葉には「同じ空気を吸う」ことの大切さが込められている。
筑波大学助教の河野さんは、教員や学生と一緒に、大学はLGBTQの学生に何ができるかを模索してきた。
コロナ禍で授業がオンラインになり、同じ空気を吸うことが難しくなる中で、今回3年ぶりのリアル開催になったTRPに学生たちとブース出展を決めた。
「同じ空気を吸いながら何かをするということが、ほとんどなくなってしまいました。そういう意味でも、社会的な課題に学生たちが一緒に取り組むのはすごく重要なことだし、この場に学生たちが来て話をすることに、重要な教育的側面があるんじゃないかなと思っています」
学生たちは、ブースに立ち寄った人たちから応援のメッセージをもらい、勇気づけられたそう。
LGBTQの人たちの居場所や支援を提供する「プライドハウス東京」のブースを担当していた五十嵐ゆりさんは、今回のTRPで「直接会うことは力になるんだ」と気づいた。
「お顔を見て握手をしたり、ぽんぽんと叩いたり。私の場合、リアルなコミュニケーションをとって人と話をすることで、すごくパワーをもらえるということを、今日改めて確認できました」
これまでオンラインだけでしか会ったことがなかった人と、リアルで初対面するという嬉しいサプライズも。
自分にとってTRPとは、初めての人と会ったり、つながったりする居場所だったんだと、再会を機に改めて感じた。
「安心して喋れて、会いたかったとか元気そうだねとか、言ってもらえたなって思い出しただけでも、(自分の中で)何かが上がる感じですね」
早朝から1日ブースに立って「体はすごく疲れているんだけれど、今何かが満タンになった感じです」と笑顔を見せた。
シンプルに「リアルがサイコー」と表現したのは、セクシュアル・マイノリティをテーマとする作品を上映する映画祭「レインボー・リール東京」のブースにいた樋口康さんだ。
3年ぶりに人と集えて、胸がいっぱいになったそう。「コロナになる前は、割とリアルが当たり前だったので、感じていなかったんですけれど、コロナで会えない期間が長かったので、久々に顔見知りの友達とかに会えて『会えるってすごくいいことなんだ』という実感が感じられた1日でした」
久々にたくさんの人と会えたことで、自分が寂しいと感じていたことにも気づいたそう。
1992年に「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」という名称で始まったレインボー・リール東京も、コロナが感染拡大した2020年には中止を余儀なくされた。
それでも2021年にシネマート新宿、シネマート心斎橋で再開。2022年は青山スパイラルホールでも復活する。
樋口さんは「できるだけ良い作品を選んで、皆さんにお届けしたい」と意気込みを語った。
「こどまっぷ」のスタッフ吉田ひかるさんは、今回のTRPで「かぞくのカタチ」の多様性がどんどん広がっていると感じた。
TRPがリアル開催されていない3年の間にも、こどまっぷでは、子どもがいるLGBTQ当事者や、子どもを持ちたいと願う人たちを支援してきた。
「子どもを持つ、持ちたいという当事者がますます増えていて、絶対に家族の多様性というものは重要になってくるし、そこを支援していきたいなという気持ちを抱えています」
そんな経験から、吉田さんたちこどまっぷのスタッフは「かぞくのカタチはひとつに括れない」という気持ちを感じている。
「うちのブースにも、LGBTQのファミリーで子育てをされている方に足を運んでいただけきました。実際に会って話をすることでできるつながりは、リアル開催ならではだなと思っています」
編注:撮影時のみマスクを外してもらいました
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
直接会えるって「やっぱり最高」。3年ぶりのTRPリアル開催、参加した気持ちを聞いてみた【東京レインボープライド2022】