ロシア軍の攻撃で、安楽死の危機に直面していたウクライナの動物園のライオンやトラたちに、救いの手が差し伸べられた。
ウクライナ北東部の都市・ハルキウにある動物園「フェルドマン・エコパーク」の創設者アレクサンダー・フェルドマン氏が4月5日、2頭のライオンとジャガー、ヒョウの合計4頭を避難させたとFacebookで報告した。
ライオンたちは、ロシア軍の度重なる攻撃のために、安楽死の瀬戸際に立たされていた。
2月にロシア軍がウクライナに侵攻を開始して以降、フェルドマンエコパークは大きな被害を被ってきた。
従業員たちは厳しい状況下で動物の世話を続けてきたものの、フェルドマン氏は4月5日、「ロシア軍の連日の攻撃で、パークのインフラや動物たちの囲いが破壊された」と報告。
大型捕食動物たちの囲いは残ったものの、あとわずかで破壊されるところまで危険は迫っていたと伝えた。
もう一度砲撃を受けたらどうなるかわからない、と強い危機感を感じたフェルドマン氏。
「(もし破壊されて)恐怖を感じたライオンやトラやクマが混乱し、ハルキウや近くの村に逃げ出したら。私たちはそんな事態を許すことはできません」と文面に苦しみをにじませた。
専門家が動物たちを仮の住居に移せないか調べたものの、解決策は見出せなかったという。
フェルドマン氏は「私たちに残された唯一の選択肢は、安楽死です。言葉にするだけで想像を絶するほどの痛みを感じますが、今最優先すべきは人々の命です」と苦しい決断をしなければいけない現実を伝えた。
さらにCBSの翻訳によると、フェルドマン氏はFacebookに投稿した動画で「安楽死させるのか、それとも別の場所に移動させられるのか。私たちは今日決断します。夜まで時間があります」と述べ、最後まで命を救う手段を探る意向を伝えた。
絶望の淵に立たされていたフェルドマン氏やパークのスタッフ、そして動物たちを救ったのは、ウクライナ国内外から寄せられた、支援の申し出だった。
フェルドマン氏は5日の投稿で、「ハルキウやキーウ(キエフ)、オデーサ(オデッサ)、ドニプロ(ドニエプル)などの多くの住民や、様々な国や街の代表が助けを申し出てくれた」と報告。
安楽死しかない、とつづった投稿から1日も経っていないにも関わらず、「輸送機関はすでに到着しており、必要なケージが届いています。紛争地域から動物を救い出すのを恐れない人たちが来ています」と避難が始まっていることを伝えた。
ただしフェルドマン氏は、安楽死を考えていた動物すべてを避難させられるのかどうかについては、明らかにしていない。
ロシアのウクライナ侵攻で、フェルドマンエコパークでは人間も動物も犠牲になっている。
BBCによると、3月には動物に餌をやっていた2人の従業員がロシア軍の攻撃で死亡。動物たちの死も報告されている。
その一方で、パークのスタッフたちはチンパンジーやアルパカなど多くの動物たちを避難させてきた。3月末には、カンガルーやワラビーを藁を敷き詰めた車で移動させる様子を公開している。
フェルドマン氏によると、パークにはまだ多くの問題が残っており、物理的にも金銭的にも、さまざまな助けを必要としている。また、パークはハルキウの住民や動物たちの食糧支援や避難のための寄付も募っている。
今回の救助についてフェルドマン氏は「多くの人たちからのサポートが、最大数の動物を助けられるという希望をくれます」と述べ、助けの手を差し伸べたすべての人たちに感謝した。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
ウクライナのライオンやトラ、安楽死寸前で救われる。動物園に支援の輪が広がる