ロシアのウクライナ侵攻が続く中、プーチン大統領は核兵器の使用も示唆しており、世界中に緊張が走っている。
日本は世界で唯一の戦争被爆国であり、核兵器に対する気持ちは他国よりも一層敏感だ。
2月28日、広島市長と長崎市長は連名で、「地球上に、広島、長崎に続く、第三の戦争被爆地を生むことは絶対にあってはならない」とプーチン大統領に抗議文を送り、侵略行為を直ぐに中止し、平和的解決への道を探ることを求めた。
全文は以下の通り。
抗 議 文
ロシア連邦大統領 ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン 閣下
ロシアがウクライナ侵略に踏み切り核兵器の使用を示唆した、一連の行為について、被爆地市民を代表し、ここに厳重に抗議する。
この行為は、「世界中の誰にも二度と同じ体験をさせてはならない」と懸命に訴えてきた被爆者の切なる思いを踏みにじるものであり、被爆地広島、長崎は強い憤りを感じている。
今年1月にロシアを含む核保有5か国が発出した共同声明の中で、「核戦争に勝者はなく、決して核戦争をしてはならない」と世界に発信した矢先の発言であり、核兵器のない世界の実現に向け努力を続ける国際社会を大いに失望させる行為と言わざるを得ない。
地球上に、広島、長崎に続く、第三の戦争被爆地を生むことは絶対にあってはならない。
人々の尊い命と平和な暮らしを理不尽に奪う侵略行為を直ちに中止し、平和的解決への道を探ることを強く求める。
2022年2月28日
広島市長 松井 一實
長崎市長 田上 富久
同じ日、長崎の被爆者5団体も、ロシアに対し武力攻撃の中止と軍の撤退、核兵器使用を示唆した発言を取り消すよう求めた抗議文を提出。3月6日には抗議集会も行い、平和祈念像の前には400人もの人が集まった。
一方、日本の非核三原則「持たず、つくらず、持ち込ませず」を踏みにじるような政治家の発言もあった。
安倍元首相は2月27日のテレビ番組で、防衛のため自国領土内にアメリカの核兵器を配備する「核共有」に触れ、「世界の安全がどのように守られているのかという現実の議論をタブー視してはならない」と述べ、波紋をよんだ。
また、3月3日の自民党の派閥会合では、「ウクライナが(核共有を実施している)NATOに加盟していれば、ロシアによる侵攻はおそらくなかっただろう」と指摘し、再度「核共有」の議論の必要性を強調した。
安倍氏の提議に対し、広島や長崎の被爆者などからは批判が相次いでいる。
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その間、岸田首相は核共有について再三にわたり否定している。
安倍氏のテレビ番組が放送された翌日28日には「非核三原則を堅持するわが国の立場から考えて、認められない」と否定。2日の国会では「政府においては核共有は認めない。議論は行わない」と明言した。
3月3日の記者会見では、ロシアの核抑止力部隊が警戒態勢を引き上げたことは「言語道断」であり、「唯一の戦争被爆国であり、また、被爆地広島出身の総理大臣として、核兵器による威嚇も、ましてや、使用も、万が一にも許されるものではない」と、国際会議の場で強く訴えていると述べた。
【広島と長崎市長連名の抗議文の英語版はこちら】
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
唯一の戦争被爆国、日本。広島と長崎の市長がプーチン大統領へ訴えたこと【抗議文全文】