元ストリッパーの私が、選挙に立候補して経験を包みかくさず発信する理由

私、アレクサンドラ・ハントは公衆衛生の研究者で、女子サッカーコーチで、コミュニティオーガナイザーです。

そしてペンシルベニア州の第3議会地区から連邦下院議会議員に立候補しています。

選挙活動では、大学時代にストリッパーとして働いた経験を積極的に伝えています。それは社会の中で取り残されたコミュニティーに、暗い影に落としたくないからです。

両親が教師だった影響で、私は「教育は機会のためのはしごだ」という信念を持っています。だからこそ、望む人すべてが進学し、機会を手にすることを公約の中心に据えています。

私が進歩的な公約を掲げるのは「政治家はシステムを変え、すべての人の公平な機会と正義のために戦うべきだ」と信じているからです。

しかし根深い汚名と偏見のせいで、数カ月前にサッカーコーチの仕事を失いました。

私にとって、サッカーは世界を変えられものです。 世界中どこにいても、サッカー場は私にとってのホームであり、サッカーが言葉の壁や政治的信念、国籍、人種、宗教、社会経済的地位、セクシュアリティ、性別など様々な違いに関係なく、人々を結びつけるのを見てきました。

小さい頃は、学校にジャンパーとショートパンツで通っていたので、休憩時間にジャンパーをゴールポストにして、男の子たちとサッカーをしていました。ですから私が女子サッカーコーチになったのは、とても自然なことでした。

立候補の準備をする中で、私は「誰も置き去りにしない」そして「自分の経験を包みかくさず伝える」と決めました。その経験には、大学時代のストリッパーの仕事も含まれます。

ストリッパーは生活費を稼ぐための仕事だったのですが、誰かに白い目で見られるのではないか、学校から追い出され、友人を失い、目指すキャリアが台無しになるのではないかとスティグマを恐れて、それまでは秘密にしていました。

セックスワークは危険と隣り合わせの仕事です。多くのセックスワーカーがそうであるように、ある日突然行方不明になって、誰にも捜索方法や居場所がわからなくなってしまう可能性があります。

私は「すべての人が安全に暮らす権利がある」と信じているからこそ、選挙キャンペーンで、セックスワークと自分の経験について話し始めました。

しかし、選挙活動用のSNSでセックスワークの経験について伝えると、コロナ禍でコーチしていたサッカークラブが、私に立ちはだかりました。

クラブは私に降格を告げた上に、投稿を削除するよう求めました。最終的に、私は指導していた2つのチーム両方から除名されました。偏見と差別で傷つきましたが、何よりつらかったのは、選手たちに教えられなくなることでした。

こういった扱いは異例ではありません。過去または現在セックスワークに従事していることが明らかになった時、スティグマが原因で特に女性が失業するケースが数多くあります。

ニューヨーク市では、マイケル・ブルームバーグ市長(当時)が、過去にセックスワークに従事していた教師のメリッサ・ペトロ氏を解任するよう求めました。この時、ブルームバーグ氏は市に法的措置を取ることを勧め、マスコミは彼女を「売春婦の教師」と非難しました。

カリフォルニア州ロサンゼルスでは、副業でポルノ俳優をしていたニーナ・スカイ氏が解雇されました。さらに同州オックスナードでは、中学校の理科教師ステイシー・ハラス氏が、過去のポルノ出演で解雇されました。

セックスワーカーは、社会の中で最も疎外されたグループの1つであり、スティグマや暴力、人権侵害の問題に直面しています。しかし、大規模な擁護活動と組合の組織化により、アメリカでは、政治家がセックスワーカーと彼らのニーズを真剣に受け止め始めています。

今、ますます多くの人たちが、生活費の支払いのためにセックスワークに従事するようになっています。若い世代は、家を買えない、家賃上昇、学費の返済、高い失業率、低賃金など、さまざまな問題を抱えています。さらに、国の対策や支援はほとんどありません。

アメリカの産獄複合体(刑務所が利益を得るための手段として使われ、特にマイノリティや貧しい人たちなどが非暴力の罪で投獄される)という大きな問題に目を向けた時、セックスワークの非犯罪化は解決策の一部にすぎません。

私たちは、産獄複合体がなぜこれほど巨大化したのかという根本的な問題に対処しなければなりません。

もともと刑務所は、有罪になった人を一時的に収監するための場所として作られました。しかし産獄複合体が成長した今、刑務所は搾取的労働を通じて資本主義に貢献するようになりました。これは、現代の強制労働/奴隷制の一形態であり、白人至上主義を支えています。

実際に犯した可能性のある罪ではなく、その人のアイデンティティで処罰が決まるということは、法律家でなくとも知っている問題です。

産獄複合体は、白人至上主義と相容れない人種、性別、ジェンダーアイデンティティ、経済的地位、国籍、または職業の人たちを、過酷な状況に追いやってきました。

そしてセックスワークを犯罪と扱うことは、ミソジニーに基づいています。社会の中で、女性は男性よりも収入や力が少ない立場に置かれ、そして女性の体は物のように扱われてきました。

セックスワークはその力関係を覆して、女性が自らのセクシュアリティを自分のものとし、体を所有することを可能にします。そしてお金と力の両方を手に入れて機会を均等化できます。

21世紀が進むにつれ、アメリカではシングルマザーや2人父親、トランスジェンダーの子ども、人種の異なるカップル、キャリア志向のカップル、子どもを持たない個人など、様々な近代化した家族像を認識するようになりました。

この進化する見方の中で、セックスワーカーを受け入れるのは比較的容易なはずです。

アメリカ人は私たちの人間性、そしてセックスはタブーではないということを認識する必要があります。

セックスは私たちの生活の自然な部分であり、人はそれぞれ仕事を選択できます。あなた自身の楽しかったセックスの経験を振り返れば、セックスワークの犯罪化はまったく馬鹿げていて、差別的だと思いませんか?

下院議員に当選すれば、私はセックスワーク犯罪化の問題に取り組み、法律改正のために働きます。 私は政治家には説明責任があり、他者から受けた危害に対する謝罪と賠償をすべきだと信じています。

セックスワークに犯罪と罰はふさわしくありませんし、禁固刑は適切ではありません。

(自由意志による)セックスワークは有害ではなく、人の職業選択です。自分の体についての選択であり、もっとはっきり言えば、個人の選択です。

セックスワークの非犯罪化は、スティグマをなくし、あなた自身そして法律の中にある偏見に目を向けることから始まります。そういった偏見は、自分の力を手にする方法を見つけた人たちを、社会から阻害してきました。

※編注:セックスワークを犯罪化していることで、暴力被害を受けたセックスワーカーが警察に届け出ができない、スティグマを助長するなど、様々な問題が生じている。そのため、アムネスティインターナショナルなどの人権団体などもセックスワークの非犯罪化を求めている。
その一方で、構造的、社会的な背景からセックスワークに従事せざるを得ない人たちもおり、非犯罪化が望まないセックスワークを許容することがあってはならない。また、望まないセックスワークに従事せざるを得ない現状を変えるための、平等の実現や社会支援も必要だ。アムネスティでは「セックスワーカーの搾取、人身売買、暴力などを犯罪とする法律」については廃止することなく、「引き続き維持し、強化されるべきだ」と述べている

ハフポストUS版の寄稿記事を翻訳しました。

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元ストリッパーの私が、選挙に立候補して経験を包みかくさず発信する理由

Alexandra Hunt