テキサス州のグレッグ・アボット知事が2月22日、州の家族・保護サービス局(DFPS)に宛てた書簡で、子どもたちの性別適合治療を「児童虐待」として調査するよう、指示した。
アボット知事は書簡で、DFPSに「即座で徹底的」な捜査を求め、さらに「テキサスの子どもたちを児童虐待から守るために、DFPSやその他の州機関は、法律に従わなければならない」と主張した。
知事の書簡は、前日に発表されたテキサス州のケン・パクストン司法長官の意見書を受けての動きだ。
パクストン司法長官21日、性別適合のための治療である第二次性徴抑制剤やホルモン治療について「テキサス州法のもとでは児童虐待」という意見書を発表した。
司法長官は意見書で、「性別適合治療はテキサス州の法律では児童虐待なので止めなければいけない」「テキサスの若者たちを守るために何でもする」と述べている。
しかし、アメリカ小児科学界や内分泌学会などは、第二次性徴抑制剤やホルモン治療は、性別違和の治療にかなり効果があるとする見解を発表している。
さらに、小児科医の団体は、こういった治療を阻もうとする法案は「子どもたちに有害な影響を与える」と訴えてきた。
パクストン長官の意見書は、こういった医学会の見解に反する。
意見書は法の解釈について述べたものであり、現行法の内容変えるものではないものの、施行のされ方に影響を与える。
アボット知事は書簡で「性別適合の治療を受けている子どもたちと接した免許を持つ専門家は、報告の義務を負う」としている。
専門家には教師や医師、看護師などが含まれ、報告を怠った場合は刑事罰を受ける可能性があるという。また同様の報告義務と処罰は、一般の人たちにも適用される。
さらにアボット知事は、治療を受ける子どもの親や、治療を実施する機関を調査するよう、DFPSや州機関に指示している。
DFPSはハフポストUS版の取材に対して、「現時点で、意見書に書かれている治療について児童虐待だとする捜査は行われていません」と回答した。
しかし「もしそのような疑いが報告された場合、現在の法律にそって捜査が実施される」と説明している。
テキサス州知事の指示に、人権団体やLGBTQ団体などが強く反発している。
LGBTQの若者の自殺を防ぐ活動するNPO団体「トレバー・プロジェクト」は2021年、「性別適合のホルモン治療は、トランスジェンダーやノンバイナリーの若者のうつや自殺願望、自殺未遂を大幅に低下させる」という研究結果を発表した。
同団体のアミット・ペーリーCEOは「調査から、性別適合のホルモン治療は、トランスジェンダーの若者たちの、うつや自殺リスクの割合を下げることがわかっています。政府は、医学界が定めたトランスの子どもたちのためのガイダンスに、医師や家族が従うことを妨げるべきではない」とツイートしている。
アボット知事の任期中、テキサス州ではLGBTQの人たちに敵対的な方針が打ち出されてきた。2021年には、 州はDFPSのウェブサイトサイトから、LGBTQの若者のための情報を載せたページを削除している。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
テキサス州知事、性別適合の治療を「児童虐待」と主張。人権団体などから強い反発