LGBTQなど性的マイノリティの人権保障に対し、積極的に声をあげる企業が増えている。
婚姻の平等、すなわち「同性婚」の実現に賛同する企業を可視化するキャンペーン「Business for Marriage Equality」は、2021年1月31日時点で200社以上が参加しているほか、性的指向や性自認を理由とする差別を禁止する「LGBT平等法」の制定を目指す「Equality Act Japan」にも、約40社が名乗りを上げている。
企業が声をあげるのはなぜなのか?
職場環境の性的マイノリティに関するダイバーシティ施策を支援する団体「work with Pride」が、LGBTQ関連の法制度に賛同する企業の取り組みなどを紹介するイベントが2022年1月31日、オンラインで開催された。
「work with Pride」は昨年、LGBTに関する法整備への支持表明や、組織の枠を超えた活動を意味する「コレクティブ・インパクト型」の取り組みを通して社会作りに貢献しているなどとした10社を、初めて「レインボー認定」に表彰した。
このうち、「レインボー認定」に選ばれた会計事務所大手PwCの日本法人は、「同性婚」と「LGBT平等法」それぞれに賛成するとしている。「同性婚」については社外への情報発信に加え、クライアント企業にも呼びかけをしているという。
PwC Japanの吉川泰生さんは「LGBTインクルーシブな社会作りにおいて同性婚はその象徴的なテーマに位置付けられると思いますが、日本では未だに同性カップルの結婚が法的に認められていません」と話した。
「人権、不平等の解消を目指した活動にはなりますが、倫理、道徳的な観点に止まらず、企業価値の向上、持続可能な企業になるための鍵として、社会や企業経済からの観点からも同性婚法制度化に向けた賛同の呼びかけに取り組んでいます」
しかし、日本の企業がすべての社員に平等な福利厚生を提供をするためには、独自の制度設計、事務作業、運営や管理といった様々な負担が発生する。同性カップルが結婚できない、つまり家族として扱われないため、法律が定める福利厚生を受けられないからだ。
そうしたことから、吉川さんは「国として法制度を整備する意義は大きい」という。
「国が法整備すれば解消することを、今は企業がやむを得ず取り組んでいる構図になっていると思います。企業の責任としてそれを社会に訴えていく必要性を感じている企業は多いと各社との意見交換を通じて感じています」
「Business for Marriage Equality」は2020年11月の発足当時、46社の企業が賛同を表明していた。それが2022年2月現在では211社にまで増えた。
キャンペーンの構成団体の一つ、「Marriage for All Japan」の代表理事を務める寺原真希子弁護士は、2021年3月に札幌地裁が「同性婚を認めないのは憲法違反」という判断を下したことが賛同の急速な拡大に繋がったと指摘する。
企業と「同性婚」のアクションをめぐっては、2018年に在日米国商工会議所(ACCJ)も日本政府に対して婚姻の平等を認めることを求める提言を発表している。
「同性婚」の実現を求めて国と争う「結婚を自由をすべての人に」訴訟の弁護団のメンバーでもある寺原弁護士。政府や国会が法制化に積極的な姿勢を見せない中、企業が声を上げる意義を語った。
「社会がどれだけ同性婚の法制化に賛成し、求めているかを国会議員や裁判官が実感を持って認識するということが鍵となるところ、企業による賛同表明は非常にわかりやすい指標の一つとなります」
「実際、昨年3月に下された札幌地裁判決では、世論の高まりを認定する事実の一つとして、企業による取り組みを明示しています。また、結婚の平等への賛同表明は、その企業が個々の社員や社会を構成する一人一人を大切に考えていることの表明でもあります」
「LGBT平等法」の「Equality Act Japan」も2021年5月発足時に賛同している国内企業が10社だったところ、現在は4倍近い38社となっている。
キャンペーンを構成する団体の一つ「LGBT法連合会」理事の五十嵐ゆりさんは「企業関係者の法整備の関心は間違いなく高まっている」という。
「LGBT平等法」は性的指向および性自認に基づく差別を防止・禁止することを行政機関や事業者に義務づける。それにより、職場や学校など生活のあらゆる現場で、性的マイノリティの人たちなどをいじめやハラスメントから守る効果が期待されている。
「Equality Act Japan」は2021年に一般の賛同者も呼びかけ、10万筆を超える署名を各政党に提出。その後、与野党による超党派の議員連盟が合意した「LGBT理解増進法案」には「差別は許されないものであるとの認識の下」という文言が盛り込まれたが、国会提出は見送られた。
一方で、性的マイノリティへの差別や偏見による困難は社会問題化している。ある自治体では、職員が上司にセクシュアリティを職場で暴露されるアウティング被害に遭った末に退職を余儀なくされた。そうした事案が報道によって明らかになり、企業のアクションを後押ししていると五十嵐さんはいう。
「職場の環境整備を考えた時に、情報や対処の方法を知らなくてはならない。それらに取り組む根拠として法律が求められているのだと思います」
「国際的にも日本企業の競争力や、人材獲得の立ち遅れ感が可視化されています。そうした側面も、企業にとっては一つのドライブになっているのだと感じます」
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
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