『ドライブ・マイ・カー』は第2の『パラサイト』になれるか? 2022年アカデミー賞でのアジア映画の行方

2021年のアカデミー賞では、クロエ・ジャオ監督が非白人初の監督賞を受賞し、ユン・ヨジョンが韓国人として初めて俳優部門で受賞するなど、アカデミー賞におけるアジア人の象徴が大きく前進した年だった。

それはアカデミー賞において、長年期待されていた多様性の向上の一端を担った。2021年にノミネートされた俳優陣の約半分が非白人であり、それは過去最高を記録した。そしてその中には、3人のアジア人候補者も含まれていた。

また、監督賞には初めて複数の女性がノミネートされた。アジア人監督はジャオ監督だけではなく、『ミナリ』のリー・アイザック・チョン監督もノミネートされた。

しかし、2月8日に発表される2022年アカデミー賞の候補者たちは、多様性と象徴の分岐点となった2021に匹敵するのは難しいだろう。

アカデミー賞の投票者に、多様性と象徴を念頭に置いてもらうため、アジア人支援団体のGold HouseとCoalition for Asian Pacifics in Entertainmentが協力して、2021年から「ゴールドリスト」を作っている。これはいわゆる、ハリウッドや賞コミュニティに「おすすめ」するアジア映画のリストだ。

アジア人や非白人による映画と、アジア人についての映画は、伝統的にハリウッドのスタジオや賞のマーケティング会社から多額のキャンペーンや支援を受けることがあまりないため、こういった映画にもっと光を当てるために作成された。

そして1月18日、2022年のゴールドリストが発表された。アジア人が主導し制作した2021年の映画に焦点を当て、2021年のオスカーの多様性が一過性のものではなく、長期的な動きとなることを願いが込められている。

Gold Houseの事務局長ジェレミー・チャン氏は、「1番恐れているのは、投票機関や賞のコミュニティが、『2年前に『パラサイト』が受賞したよね。去年はクロエ・ジャオも受賞した。この10年はそれで十分だろう』と言われることです。それは過去にも起こったことです」。

このところ、アジア系の監督や俳優が成功していることから、チャン氏は2022年にも進展が見られることを期待していた。しかし、例えば、マーベルの大ヒット作『シャンチー/テンリングスの伝説』がこれまでの大作と比べて賞の注目を浴びていないことに失望しているという。また、ゴールドリストにも掲載されている『The Green Knight』は、多くの批評家から絶賛されたが、アカデミー賞の話題にはあまりなっていない。

チャン氏は、スタジオや配給会社が受賞シーズンの予算配分の際、厳しい決断を迫られることは理解していると話す。『シャンチー/テンリングスの伝説』やクロエ・ジャオ監督の成功を例に出し、「このような成功の機会が多くなればなるほど、会議に参加した際、多様性があるからというだけでなく、ビジネス的に意味があり、あなたの会社の利益に繋がる、と説明することができるのです」と話す。

2021年に引き続き、新型コロナウイルスがオスカーシーズンを変え、チャン氏はどの映画が投票者の目に留まるかに影響するのではないかと懸念する。

感染力の強いオミクロン変異株による新たな感染者が最近急増したため、多くの授賞式やアカデミー賞もオンラインに戻らざるを得なくなった。バーチャルイベントはこれらの映画をより身近に感じさせてくれるが、実際に会って話をすることで、他では考えられなかった映画をチェックするようになることもよくある。

そのような口コミでヒットした大きな例が、2020年に最優秀作品賞を含むアカデミー賞4部門で受賞した『パラサイト 半地下の家族』だ。オスカー授賞式に向けてイベントを開催し、それまでに多くの主要な賞を受賞することで、徐々に話題を集めることに成功した。

今年のゴールドリストに名を連ねている、日本の濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』は、ニューヨーク映画批評家協会、ロサンゼルス映画批評家協会、全米映画批評家協会という3つのアメリカの批評家トップ団体から作品賞を受賞した。

チャン氏は、高い評価を得ているこの映画が『パラサイト 半地下の家族』と同じような受賞シーズンを辿るかもしれない、と期待している。しかし、バーチャルなイベントが、それを困難にするかもしれないとの懸念も示した。

こういった全ての面において、受賞シーズン全体でのより多くの象徴や包括性の必要性を示している。しかしチャン氏は事態の方向性については慎重だが楽観的だと述べる。

「ハリウッドの経営者や意思決定者たちは、素晴らしい発言をしてきた。今こそ、それらに資金を投入してほしい」と話した。

2022年に発表されたゴールドリストの一部はこちら↓

【最優秀作品賞】
『シャンチー/テンリングスの伝説』

・特別賞
『ドライブ・マイ・カー』
『The Green Knight』

【最優秀監督賞】
デスティン・ダニエル・クレットン 『シャンチー/テンリングスの伝説』

・特別賞
キャリー・ジョージ・フクナガ 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
濱口竜介 『ドライブ・マイ・カー』

【主演俳優賞】
西島秀俊 『ドライブ・マイ・カー』

・特別賞
シム・リウ 『シャンチー/テンリングスの伝説』
デヴ・パテル『The Green Knight』

【主演女優賞】
ジェンマ・チャン『エターナルズ』

・特別賞
パティ・ハリソン『ひとりじゃない、わたしたち』
マギー・Q『The Protege』

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

…クリックして全文を読む

オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
『ドライブ・マイ・カー』は第2の『パラサイト』になれるか? 2022年アカデミー賞でのアジア映画の行方

Marina Fang