「お金について考えよう」と言われたら、どんな気持ちになるだろう。増やすための投資・NISA・iDeCo…。聞いたことはあるが、何から手をつけるべきなのかと迷う人に。ファイナンシャルプランナー(FP)の高山一恵さんに、初心者向けの「お金のきほん」を聞いた。連載第4回は、投資を始めるにあたって大切な考え方について学ぶ。
こんにちは、FPの高山一恵です。連載のこれまでの回では、働き方とお金の関係や、お金を貯められる人になるためのコツについて解説してきました。今回からは、いよいよ「投資」がテーマです。
FPとして多くの顧客の相談に乗る中で、ここ数年、投資を始める人が増えたと感じています。実際、金融庁が公表した調査(2021年6月末時点)によると、「つみたてNISA」(毎月定額を投資する少額投資非課税制度)の口座数は417万5430口座で、同じ年の3月末時点より15.5%増えました。四半期ベースの増加幅は、比較できる2018年6月末時点の調査以降、2ケタの伸び率が続いています。
背景にあるのは、将来への不安です。2019年には金融庁が、95歳まで生きるには65歳時点で約2000万円の蓄えが必要だとする趣旨の報告書を発表。いわゆる「老後資金2000万円問題」として話題を集めました。そして2020年にはコロナ禍に見舞われました。
今すごくお金に困っているわけではないとしても、私はこのままで大丈夫なのだろうか――。そう感じたことで、投資について学ぶ人が増えた印象を持ちます。
「そろそろ投資を始めてみようかな」と考えている人へ。ここでは初心者が着実にお金を増やしていくために大切な3つのキーワードをお伝えします。
キーワード1:長期投資
投資する期間が短いと、その都度「買いどき」「売りどき」のタイミングを計らなければなりません。するとどうしても、利益や損失のブレ幅が大きくなりがちです。一方、長期にわたって投資していく場合は、一時的に損失を被っても、その先の運用期間中に回復する見込みがあります。過去の相場の推移を見ると、上がり続ける相場も下がり続ける相場もありません。
さらに「複利効果」というメリットも得られます。例えば、元手100万円を投資して年3%のリターンがあったとした場合、単純に計算すれば運用益は3万円になりますよね。複利運用の場合、次の年からはこの3万円を元本に組み入れ、103万円を運用していく形になります。つまり、運用期間が長くなればなるほど、利息がどんどん元本に組み入れられて、利益が膨らみやすくなるのです。投資は「早めに始めて長く続ける」のがお勧めです。
キーワード2:国際分散投資
「分散投資」という考え方も重要です。これは文字通り「投資先を、値動きの異なるさまざまな種類の金融商品に分けること」。そうすれば、1つの投資先で損失が出ても、他の投資先で利益を出し、カバーできる可能性が高いというメリットがあります。
例えば、株式(企業が事業に必要な資金を調達するために発行する証券)と債券(国や地方公共団体、企業などが発行する証券)は、一般的に反対の値動きをする傾向にあります。国内と海外、先進国と新興国……といったように、地域についても「分散」を意識していくと、安定した運用が可能になります。
「自分で配分を考えるなんて無理!」という人も大丈夫。投資の専門家であるファンドマネージャーが運用を代行してくれる「投資信託」という金融商品があります。その中には、国内外のさまざまな株式や債券、不動産などを幅広く買い付けてくれる「バランス型」と呼ばれる商品も。ぜひ覚えておいてください。
キーワード3:積立投資
まとまった額のお金をタイミングを見極めて投資するのが「一括投資」、一定額を定期的に投資していくのが「積立投資」です。初心者にお勧めなのは後者でしょう。
なんといっても、感情に左右されないのがメリットです。本来、投資の基本は「低いときに買い、高いときに売る」ですが、ここの見定めは難しいもの。知識が豊富で運用に慣れている人でも、相場の変化が大きくなる局面では、欲が出たり不安になったりします。結果として判断を誤り、手痛い損失を被ってしまうこともあります。その点、積立投資は決まった日に一定額の商品を淡々と買っていくので安心です。短期で大きな利益が得られる手法ではないものの、着実にお金を増やしていけるのです。
(取材・文:加藤藍子@aikowork521 編集:竹下由佳@kuboyu318)
高山一恵さんプロフィール
Money&You取締役、ファイナンシャルプランナー。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWebメディア「FP Cafe」や「Mocha(モカ)」を運営。全国での講演活動、執筆・相談業務も行う。著書は『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『はじめてのNISA &iDeCo』(成美堂出版)など。
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