やばいと思ったらすぐ逃げる。ある研究室のスライドに「人生で大事な7つのこと」が書かれていると話題に。

「やばいと思ったらすぐ逃げる」「わからなければすぐ質問」

12月、Twitterユーザーの投稿をきっかけに「あるスライド資料」が拡散されて話題になりました。

これは、慶應義塾大学理工学部物理情報工学科の渡辺宙志・准教授が作成したスライド資料。「研究をはじめる前に知っておいて欲しい7つのこと」というタイトルの通り、研究室に入る学生に向けたガイダンスの資料です。

「睡眠の大切さ」といった基本的なことから、誰かに何かを質問するときに感じる「ちょっと躊躇する気持ち」などについても触れていて、「めっちゃ大切」「新人研修の資料に入れたい」などと、学生だけでなく様々な人に反響が広がりました。

どんな内容?

スライドは9枚あり、「知っておいて欲しい7つのこと」を、イラストとともに紹介しています。

1.睡眠は大事

・良質な睡眠は知的生産活動のキモ

・徹夜自慢は無能自慢

・作業時間ではなく成果を誇ること

2.やばいと思ったらすぐ逃げる

・石の上に何年いたって石のまま

・「違うかな?」と思ったらすぐ相談

・環境を変えることは逃亡ではない 

3.わからなければすぐ質問

「先生は忙しいから……」と考える必要はない

→忙しければそう言います

「まず自分で考えるべきか?」と思う必要もない

→自分で考えるべき課題であればそう言います

知識が不十分な状態で「自分で解決すべき課題か」「質問すべき課題か」の判定をするのは困難です

4.まず手を動かす

「車輪の再開発」を恐れない

再開発を笑う人より、オリジナルの車輪を作る人の方が楽しい

「自分が思いつくことは、ほとんど誰かが先に思いついている」は正しい

しかし「思いついたことを『形』にまで持っていく人」はほとんどいない

5.「質問」は「詰問」ではない

質問は質問であって「詰問」や「叱責」ではない

裏の意図を勘ぐって「怒られている」と勘違いしないこと

6.アウトプットを大切に

結果は「形」にすること 形=論文やソフトウェア

アウトプットには、約10倍程度のインプットが必要

うまく文章がでてこない時にはインプットが足りないことが多い

7.自立して研究をする

指導教員は「共同研究者」であって「上司ではない」(*少なくとも当研究室では)

学生は「下請け」では無い

テーマは自分で決める(ネタは提供します) 

そして、スライドのラストは「楽しく研究しましょう」と呼びかけ、「研究を進める一番の動機は『楽しさ』です いくら役に立つことでも、学術的に重要でも楽しくなければ続きません」というメッセージで締めています。 

「当たり前のこと」とスルーされるような世の中になれば

資料の作成経緯や反響について、渡辺さんがメールで取材に答えてくれました。

この資料は、2020年1月に開いた研究室のガイダンス用に作成したもので、それ以来、毎年のガイダンスで使っているそうです。

「7つのこと」は、渡辺さん自身が大学院生の頃に所属した研究室の雰囲気が良かったことから「どんな点が良いと思ったか」を文章にまとめたものだといいます。

渡辺さんは取材に「私自身が大学院生活が楽しかったので、私の研究室の学生にも有意義で、楽しい研究生活を送って欲しいという気持ちで作成しました」と振り返りました。

資料はこれまでも何度か話題になったことがあり、渡辺さんは「私としては『当たり前』のことを単に文章にしただけのつもりです。このような『当たり前のこと』が話題になるのは、あまり社会がよくない状態なのではないかと心配になります」。

「この資料を見た時、学生さんでも社会人でも『当たり前のことだよね』とスルーされるような世の中になることを願っています」と答えました。 

資料は個人の意見であり、「慶應義塾大学の意見を代表するものでない」としています。

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オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
やばいと思ったらすぐ逃げる。ある研究室のスライドに「人生で大事な7つのこと」が書かれていると話題に。

Kaori Sawaki