彭帥さん、海外メディア取材に性的暴行を否定。掲載された一問一答の内容は?

中国の女子テニス選手・彭帥(ほう・すい)さんが、中国共産党の元最高指導部メンバーから性的関係を持つよう強要されたなどと告発した後、一時、行方不明が懸念されていた問題で、シンガポールメディアは12月20日、本人へのインタビュー記事を掲載した。

記事では、彭帥さんが自ら性的暴行を否定。一方で、11月の告発文について「張高麗副首相」と相手を名指しするなどしていたにも関わらず、「誤解がある」などと釈明していて、矛盾を指摘する声も上がっている。

■「ずっと自由」と回答

記事を掲載したのは、シンガポールの中国語メディア・聯合早報。12月19日に上海市で開催されたスポーツ大会の会場でおよそ8分間、取材に応じたという。

彭帥さんは「まず、重要なことを強調しておきたい。性的暴行に遭ったなどと言ったことも書いたこともありません。ここははっきりしておきます」と話し、性的関係を強要されたとするSNS・ウェイボーの投稿については、自身のプライベートの問題で「皆さんは多くの誤解をしている」と釈明した。

記事では、彭帥さんへの一問一答を掲載している。大まかな日本語訳は次の通り。

Q:今は(自身の)家に住んでいるのですか。

A:はい。ずっと家に住んでいます。

Q:あなたの安全に関心が寄せられています。自由に出かけられますか?監視などは?

A:なぜ監視があるのでしょう?ずっと自由です。

Q:先月初め、ウェイボーに文章を投稿し、色々述べられましたが、CGTN(中国国営のグローバル放送)はあなたがWTA(女子テニス協会)にメールを送ったと。そこでは性的暴行の事実はないと書かれていました。あのメールはご自身で書いたものですか?

A:ここに幾つか問題があると思います。まず、重要なことを強調しておきたい。性的暴行に遭ったなどと言ったことも書いたこともありません。ここははっきりしておきます。ウェイボーですが、私のプライベートの問題で、皆さんは多くの誤解をしていて、ねじ曲がった解釈など存在しません。WTAのスティーブ・サイモンCEOへ送った中国語のメールは私が書きました。英訳することは私にはできませんから、CGTN(に載った)のは翻訳版です。ただ内容はサイモン氏に送ったものとほとんど差異はありません。

Q:サイモン氏に送ったメールは、ご自身の意思からでしょうか。

A:完全にそうです(うなづく)。

Q:IOC(国際オリンピック委員会)が2度のビデオ通話を行いました。最初は30分、2度目の時間は公表されていませんが、いつ頃の話でしょうか?

A:何日かははっきり覚えていませんが、IOCのバッハ会長やエマ氏、李主任(エマ・テルホ選手委員長と李玲蔚IOC委員とみられる)には本当に感謝しています。通話できてとても嬉しかったです。

Q:ビデオ通話は北京の自宅で?

A:はい。

Q:海外へ行くご予定は?あるいは、今回上海に来たように、別の場所へ行くとか。

A:今は試合がないので、それ以上のことは…今後普通に試合を見るのならば、正常(なこと)でしょうが、何かを証明するためにどこかに行くとは言えません。今出かけて何をするのでしょうか?教えてください。

Q:今は北京で何を?外出したり、ご友人に会ったりは?

A:それはまた、次の機会に。ご関心いただきありがとう。

■残る疑惑

告発後に彭帥さんが海外メディアの取材を受けたのは初めてとみられる。北京冬季オリンピックを前に、アスリートへの人権侵害疑惑が指摘される中国にとっては、取材を受けさせることで反論の材料とする狙いがありそうだ。

一方で、疑惑が払拭されたわけではない。記事で彭帥さんは、ウェイボーの投稿は「誤解がある」と話し、性的関係の強要そのものを否定したが、11月に自身のアカウントから投稿された告発文では、「張高麗副首相」と元最高指導部メンバーをはっきりと名指ししている。

さらに、過去にも性的関係を持っていたことや、密会を隠すために北京市の西什庫教会で車を乗り換え、張氏の住まいへ入っていったことなどが具体的に描写されている。

性的関係を求められたことについても「10年以上前の天津の時のように性的関係を持とうとした」「こんなことになるとは思っておらず、とても怖かった」などと明記されていて「誤解」する文章とは言い難い。

イギリスのガーディアンはこの記事ついて「性的関係を強要されたという主張と矛盾するものだ」と評している。

WTAや国際人権団体は、彭帥さんの状況について「検閲のない完全で透明な調査」を求めている。 WTAはこの記事について「重大な懸念の解消にはつながっていない」としている。ロイター通信が伝えた。

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