リアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さんが誹謗中傷を受けた後に自死した問題で、母親の木村響子さんが12月16日、司法記者クラブで会見を開き、2022年にもフジテレビと番組制作会社を提訴することを明らかにした。両社に対し、「ちゃんと出演者の人権が守られていたというならば、それを裁判で明らかにしていただきたい」と訴えた。
木村花さんは、「テラスハウス」出演時の言動をめぐりネット上で多数の誹謗中傷を受け、2020年5月に自ら命を絶った。
出演者の1人が花さんのレスリングのコスチュームを誤って洗濯し、それに対して花さんが怒るシーンがNetflixで配信されたことが誹謗中傷のきっかけとなった。その後同じシーンが地上波でも放送され、ネット上で花さんへの中傷が殺到した。
響子さんは、番組での過剰な演出が誹謗中傷のきっかけになったとして、フジテレビなど番組制作者らの責任を問い続けている。
2022年中にも、フジテレビと番組制作会社のE&Wを相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こす考えだ。
提訴に先立ち、響子さんの弁護団は両社が保管する未編集動画やスケジュール表、(スタジオ部分の)台本などの証拠を保全するよう8月に東京地裁に申し立てており、それぞれ認められた。
しかし、両社は一部の証拠は存在せず、また「提出義務はない」などとして、証拠の提出を拒否したという。地裁は12月10日、E&Wに対して未編集動画などを提出するよう命じたが、同社の意向は変わらなかった。
「私たちだけではなく、現場のスタッフの方たちや出演者の方たち、誹謗中傷をしてしまった方たちやその周りの人たちなど、本当に多く人たちの人生を狂わせる番組だったと私は思っています」
「ちゃんと出演者の人権が守られていたというならば、それを裁判で明らかにしてほしい」
16日の記者会見で、響子さんはそう語った。
裁判を通して、花さんがなぜ追い詰められてしまったのか、真相を明らかにし、再発防止につなげたい考えだ。メールなどで広く情報提供を求めていくという。
問題をめぐっては、フジテレビは2020年7月に内部調査報告書を発表している。同社は、花さんに誹謗中傷が寄せられることは「予見できなかった」と報告。「木村花さんの場合に限らず、制作スタッフの全員が、出演者のSNSの炎上を煽ろうとするような意図を持つことは無い」と過剰な演出を否定した。
その後、響子さんは2020年7月、放送倫理・番組向上機構(BPO)に人権侵害があったと申し立てた。審理の結果、BPOの放送人権委員会は21年3月に見解を発表。フジテレビに「放送倫理上の問題があった」と指摘したものの、花さんに「一定のケア対応」をしていたことなどをふまえ、「人権侵害があったとまでは断定できない」と結論づけた。
この見解について、響子さんは 「自分たちに都合の良い情報だけを出して、都合の良い話しかしないという印象があった」と落胆をあらわにする。
「本音を言うと裁判はやりたくなかった」とも語り、フジテレビと制作会社に対し、真摯な対応を求めた。
「裁判というのはお金もかかりますし、心もえぐられる。何年で終わるかもわからない。本当はBPOの申し立てもやりたくはなかったです。真摯に、番組のどんなところに問題があって、なぜ花が追い詰められてしまったか私たちに伝えてもらっていたならば、ここまでする必要はなかった。こういうことをしなくてはいけないのは、今まで何も教えてもらえなかったからです」
響子さんが提訴を表明したことについて、フジテレビはハフポスト日本版の取材に対し、「まだ訴訟を起こされていない現段階では、コメントを控えさせていただきます」と回答した。また、証拠保全に関する東京地裁の決定については、「適切に対応してまいります」とコメントした。
制作会社のE&Wは、「係争中につき、コメントを控えさせていただきます」としている。
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木村花さんの母・響子さん、フジテレビなど提訴へ。会見で語った落胆「裁判はやりたくなかった」