「クライマタリアン」って知ってる? 地球を救う新しい食のカタチです

気候危機に対する意識が高まり、企業や個人がさまざまな取り組みを行なう中、新たな食のスタイルが海外で注目を集め始めている。

その名も「クライマタリアン」だ。

聞きなれない言葉だが、2015年のNew York Timesで新たなフードワードとして紹介され、現在は日本のオンライン辞典にも掲載されている。ちなみに、Climate(クライメート)は気候という意味。クライマタリアンは、気候変動をもたらす温室効果ガスの排出量を減らすことを目的とした食生活を選択する人ということだ。

海外で今注目されるクライマタリアン

実は、私たちの身近にある「食」が、気候変動に大きく影響しているといることをご存じだろうか?国連が支援する調査によると、人間活動に起因する温室効果ガスのうち、約3分の1以上が食物の生産や加工などを含む、「食」にまつわるものだという。

クライマタリアンは、特定の食べ物を排除するわけではない。しかし、牛肉などは生産過程の温室効果ガスの排出量(カーボンフットプリント)が高いため、意識的に避けたり、減らすことを心がける。それだけでなく、食材はなるべく地元産で季節に応じたものをいただく、という食スタイルだ。

日本ではまだ馴染みがないが、アメリカでは外食産業にもそのトレンドが生まれている。

2020年には大手ファストフードチェーンのChipotleが環境負荷をアプリでチェックできる仕組みを導入。サラダ専門店チェーンのJust Saladでは、表示に加え環境負荷の低いメニューを提案するクライマタリアンメニューも登場している。

他にも、クライマタリアンのレシピアプリ「Kuri」や、レシートの写真を携帯電話で撮影するだけで商品のカーボンフットプリントを計算してくれるアプリ「Evocco」(現在はアイルランドとイギリスのみサービス対象)なども誕生した。

どこから始める?

では、日本に住む私たちの生活の中で、どう取り組めるだろうか?

「クライマタリアンには様々な取り組み方があり、月曜日だけ肉を抜く『ミートレスマンデー』や、牛肉だけ避けるなど、自分ができる範囲から始められます。外食などで困ることもほとんどなく、とても取り組みやすいんです」

そう答えてくれたのは、クライマタリアンをはじめ、気候変動と食の関係について情報を提供しているウェブサイト『Climatarian.jp』を運営する青木真優さんだ。

ご自身もクライマタリアンの青木さんに、クライマタリアン的食事の基本を、アドバイスしてもらった。

1.牛や牛由来の食品をできるだけ減らす
国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、世界の温室効果ガス全体の14.5%は家畜によるもの、しかもそのうちの65%は畜牛によるという。畜牛には、牧場確保のための森林伐採や、飼料のための大量の水が必要となる上、牛のゲップはCO2の25倍もの温室効果ガスがあるとされるメタンガスを含んでおり、環境負荷が高い。そのため、牛肉はもちろん、チーズ、牛乳などの乳製品、できれば他の肉類もできるだけ減らす。

2. 野菜と果物は地産で季節のものを選ぶ
2021年に発表された研究によると、野菜や果物の温室効果ガス排出量は、家畜の約半分だという。動物性の食物と比べれば、全体的に環境負荷が低い。また、エネルギーを多く使うハウス栽培ではなく、季節のものを選び、輸送の負担が少ない地産のものを選ぶとベター。

3. 食品ロスを減らす
食品ロスは「もったいない」だけでなく、余ってしまった食品の輸送や焼却により、CO2が発生する。3月に国連環境計画(UNEP)が発表した報告によると、全世界の温室効果ガスの8~10%は、消費されなかった食料品に関するものだという。そのため、無駄な購入による廃棄を避け、食品ロスを減らすことも大きな取り組みとなる。

他にもたくさんアドバイスを頂いたが、まず始めるならこの3つのポイントは抑えておきたい。これならそう難しくなさそうだが、「焼き肉大好き」「チーズはやめられない」という人もいるだろう。そういった場合は完璧を目指さず、食べる回数を減らしたり、代替品を試してみることから始めるのもいいかもしれない。

寒さが増すこれからの季節、青木さんが特におすすめするのは、キノコや野菜をたっぷり使い、鶏肉を少し加えた鍋料理。野菜がたくさん摂れる上に、冷蔵庫に余っている食材も投入してラクに美味しく食品ロスを防ぐこともできる。

クライマタリアンは、これから日本で広がりを見せるだろうか。地球温暖化対策として個人レベルでできることは、たくさんある。その中でも、身近な「食」を通じて取り組む選択肢の1つとして、これから注目していきたい。

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「クライマタリアン」って知ってる? 地球を救う新しい食のカタチです

Yuko Funazaki