「エコバッグを持とう」「マイボトルを使おう」
SDGsという言葉が普及し、こうした呼びかけや行動がぐっと増えた2021年。
一方で、「私1人が行動を変えたところで…」「じゃあエコバッグの環境負荷は?」といった懐疑的な見方も増えているように感じます。
気候変動をはじめとする地球の危機や資本主義の歪みは、個々人の努力で解決するレベルの問題では到底ありません。各国政府やグローバル企業、教育など、システムを変える力を持つプレイヤーたちの本気の取り組みが不可欠です。
でも、本当に私たち1人1人のパワーはそれほど小さいのでしょうか?
企業がどれほど地球環境や人権のことを考えた素晴らしいサービスや商品を用意しても、それを利用する消費者がいなければ、世の中は変わりません。
これまで、私たちが毎月制作している『ハフライブ 』では、エネルギーや食、ファッションなどのテーマごとに、「個人」よりも「ビジネス」の動きに注目してきました。
でも、11月の『SDGs時代、買い物で世界は変えられる!』では、個人の消費行動に力点を置いています。「ビジネス」と「個人の消費」は車の両輪のような関係で、両者の相乗効果はSDGs達成のための強力なエンジンだという考えからです。
番組では、ゲストにお迎えした村上誠典さん(シニフィアン共同代表)が電気自動車(EV)市場を牽引するテスラの成功を例に挙げて「考える消費」の大切さも指摘しました。
日本では、世界に先駆けて2007年に電気自動車「日産リーフ」の開発がスタートしていたのに、なぜ売れなかったのか。一番の違いは、「考える消費者」の存在だーー。(ハフライブ『SDGs時代、買い物で世界は変えられる!』34:35~)
日産リーフが2010年に登場した時、消費者からは「充電走行距離が短い」「本当に安全なのか?」など足りない部分が注目された一方で、テスラは「技術や性能面はこれからだけど、この商品が作る未来に期待したい」という、商品の社会的価値を考える消費者の応援があった、と村上さんは分析しています。
村上さんとともにゲストとして出演したマルイの青野真博社長も「企業と消費者はネットを介してすごく近くなった。以前は『売る側』と『買う側』で分断されていたが、今は一緒にサービスや商品を作るパートナーのような存在だ」とそのパワーを評価しました。
「考える消費」というのは、村上さんが著書『サステナブル資本主義ーー5%の「考える消費」が社会を変える』の中で使っている言葉です。
「考える消費」ってなんだろう?ということも、番組を作る中で話し合いました。
簡単に言えば、買い物をする時の判断基準として、自分にとって「得」か「便利」かということと同じくらいに、地球や社会にとってどんな未来につながるかを考えることだと思います。
その商品がどのように作られているのか、どれくらい環境負荷や人権問題に関わっているのかを考える。
この買い物が、サステナブルな地球や公正な世の中に近づく一歩になるだろうか、と考える。
「買い物」で手に入るのは商品そのものだけではなく、便利な生活だったり、ワクワクする気持ちだったり…。そこに、「サステナブルな地球・社会」という軸を加えてみる。
こうした一人一人の「考える消費」が増えれば、ボトムアップで既存の資本主義を変える力になり、持続可能な未来を切りひらくことができるはずです。
一方で、「分かってはいるけれど、経済的にも精神的にも余裕がなければ『考える消費』なんてできない」という現実もあると思います。
ハフポストが番組前に行ったアンケートには、理想と現実のジレンマに悩む声もたくさんいただきました。
こうしたコメントの一つ一つにうなずきながら、チームで何度も話し合いました。
消費にはパワーがある。「5%の消費者が『考える消費』をすれば、社会が変えられる」という村上さんの言葉には納得感があります。
でも、「5%の意識高い消費者 vs 95%のそれ以外」という風には捉えたくありません。
毎日の買い物で「考える消費」を実践することは難しくても、自分の中の「考える消費」の比率を5%、10%、50%…とあげていくことならできるかも…。
上記が、私たちなりの一つのアンサーです。アンケートに寄せられたコメントや番組ゲストの言葉、そして私たち自身の消費行動の見直してヒントを得ました。
アンケートにも、個人のお財布事情の中で「考える消費」を実践するアイデアが多数寄せられました。
すべてを完璧にやり切るのは難しいけれど、「わたしはこっちの分野で“考える”買い物をするね」「じゃあ私はあっちの分野で…」というように、消費者も役割分担をしながら、それぞれの「考える消費」率を上げていくことならできる気がしませんか?
*詳しくは番組のMC南麻理江と辻愛沙子さんのエンディングトーク<1:06:19~>をご覧ください。
思い返せば、ちょうど1年前、「『この商品は、環境に配慮して作られていますか?』とお店の人に尋ねてみよう”」というモデルのトラウデン直美さんの提案がネット上でバッシングを浴びました。
店頭に立つ販売員の働き方や雇用格差など別の問題も浮き彫りになり、SDGsがはらむ様々なジレンマを可視化する出来事でもありました。
ただ、トラウデンさんのコメントは、まさに「考える消費」のススメです。
1年間、ハフライブ では「ビジネスは個人が自然に『考える消費』ができるようなシステムへのトランスフォーミングに本気で取り組むべし」という点を訴えてきましたが、12カ月がひとまわりした今、改めて「個人でできること、やるべきこともある!」とお伝えしたいと思っています。
12月から4月は、一年間の中でも家庭での消費支出が大きくなる季節です。
小さなことからでも構いません。お財布を開く前に、ポチっと購入ボタンをクリックする前に、「考える消費」を実践してみませんか?
必ずしもお金を使わずとも、衝動買いをやめる、お客様の声カードを書く、SNSで推し企業を応援する…なども「考える消費」の一つだと思います。
たとえば、サッポロビールとファミリーマートのコラボ商品に誤植があったことを理由に発売中止が発表された時に、SNSを中心に「廃棄されたら食品ロスになる」「そのまま売ってほしい」という声が多数上がりました。
「これでいいじゃん、これがいいじゃん!!」
そういう声をあげるのも、大切な「考える消費」です。
ハフポスト日本版では、「#考える消費」というハッシュタグで、これから様々なビジネスや個人の取り組みについて発信していきます。
ぜひ、みなさんが“推したい”サービスや商品、アクションについても教えてください!
【執筆:中村かさね/湯浅裕子】
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
買い物で世界は変えられる。「#考える消費」始めてみませんか?