Twitterの投稿で名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが漫画家のはすみとしこさんらに対し損害賠償などを求めた訴訟の判決が11月30日、東京地裁であった。小田正二裁判長は、ツイートしたはすみさんに88万円、はすみさんの投稿をリツイートした2人にそれぞれ11万円の支払いを命じた。
判決後、伊藤さんは代理人と司法記者クラブで会見し、「判決は大きな一歩」だと訴えた。
訴状によると、はすみさんは伊藤さんを思わせる女性や、「枕営業大失敗」などの文字が書かれた複数のイラストをTwitterに投稿。伊藤さんは、これらのイラストが性被害を訴えていた伊藤さんの名誉を傷つけたとして、慰謝料など550万円と投稿の削除、謝罪広告の掲載を求めてはすみさんを提訴していた。
また、はすみさんの投稿をリツイートした2人に対して、それぞれに慰謝料など110万円と投稿の削除を求めた。
東京地裁ははすみさんのイラストについて、伊藤さんが性被害にあったという「虚偽の事実を述べる人物であるなどの印象を一般の読者に与える」ものであると指摘。「(伊藤さんの)社会的評価を低下させるものというべき」と認め、はすみさんに88万円の支払いを命じた。
また、リツイートについては、「その内容についてそれぞれ責任を負うというべきである」と指摘し、はすみさんの投稿をリツイートした2人にそれぞれ11万円の支払いを命じた。
伊藤さんは判決後の会見で、「リツイートすることは簡単に見えるかもしれないけれど、当事者としては強烈な行為であり、ネットの世界では残ってしまい、回収することができない」と指摘。
「発信する一人ひとりの方に責任と認識を持っていただきたいと思っていたので、今回の判決が認められたことは大きな一歩だと思っています」などと語った。
伊藤さんは、はすみさんに対し謝罪広告の掲載も求めていたが、その訴えは棄却された。
判決要旨で東京地裁は、はすみさんのTwitterアカウントが凍結されていることに言及。伊藤さんの名誉を回復するための措置として、「謝罪広告を掲載するよう命ずる必要があるとまでは認められない」と指摘した。
一方で、はすみさんが投稿したイラストは、今もネット上に残っている状況だ。
このことについて、伊藤さんの代理人を務める山口元一弁護士は、「今なお(ネット上に)残っているということに関しては、事実認定の中で判決で拾っていないので、その部分は、やや(裁判所の)認識が追いつかなかった部分があるのかなと思っています」との見解を示した。
山口弁護士は、「一つのツイートに対して、リツイートした人は2000とか2500とか、それくらいの数がいる」と指摘。「民事の損害賠償請求で一人ずつ相手とって被害を回復するということは非常に実効性が乏しい」と述べ、ネット上の二次加害(セカンドレイプ)や誹謗中傷に対応するハードルの高さを訴えた。
また、はすみさんがイラストを投稿してから今回の判決が出るまで数年かかっていることにも触れ、「プラットフォームの責任を含めて、こういった被害の事前の抑止、あるいは起きたときの速やかな回復を全般的に考えていただければと思います」と呼びかけた。
はすみさんはイラストについて、「風刺画はフィクション」などと主張していた。伊藤さんは、「こういったことは風刺という言葉で流されてはいけない」と指摘。「この判決は、どんな金額であっても、どんな言葉でもあっても、一つの大きな一歩だと思います」と述べた。
伊藤さんは最後に、2020年6月に開いた提訴会見の直後に、Twitterで広がった 「#伊藤詩織さんを支持します」というハッシュタグについても言及した。Twitterではハッシュタグとともに、伊藤さんのイラストや応援のメッセージを投稿する人が相次いだ。
このハッシュタグについて伊藤さんは、「すごく嬉しいことで、ポジティブな言葉でネガティブなものを消し去ってほしいという願いがあった。こうやってアクションしてくださったみなさんに心から感謝しています」とコメントした。
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伊藤詩織さん、漫画家はすみとしこさんらに勝訴。リツイートにも賠償命令、「大きな一歩」と訴え