初めての過食嘔吐のことは、記憶にない。でも、それまで蓄積されてきた過程は覚えている。
私は11歳からいじめられてきた。様々な理由で周りと“違っている”ことは、他の生徒にも明らかだった。私は明るくて勤勉で、ゲイかもしれない、というのは明らかだったが、もう少し大きくなるまで自分のセクシュアリティについてはわからなかった。
高校の途中で、いじめがとても苦痛になってきた。クラスを抜けたり、全く行かなかったり…そして誰にも見つからない唯一安全な場所である男子トイレに隠れていた。
見えないところで、私はトイレの個室に篭り、ランチボックスの中身をやけ食いした。中身はだいたいビスケットやポテトチップスだった。自分が嫌になり、直感的に喉に指を入れて吐き、体から食べ物を出した。たまっていた緊張感と不安がトイレに流れ、大きな安心感を与えてくれた。
数年間、このやけ喰いと嘔吐の繰り返しは、自分にとって苦痛への対処法だった。いじめが悪化すると、この行為も悪化し、回数も増えた。
ある日、家で退屈して母の雑誌を手にとり、アドバイスコラムを読んでいた。そこで、最近離婚したシングルマザーが、子供たちを寝かせた後やけ食いをして嘔吐をしているという手紙を読んだ。最近パートナーと別れ、生活の移行を困難に感じていたという。
まだ15歳だった私は、その状況に共感は持てなかったが、彼女の行為には自分と通じるものを感じた。手紙への返信で、アドバイザーはその行為を「過食症」と説明した。すぐに助けを求めないと、心肺停止や胃の破裂などが起こる可能性がある、と警告した。
それまで、摂食障害について何も知らなかった。自分の行為は自分だけがやっていることで、自分が発明したくらいに思っていた。私がやっていたことが、体に害を及ぼし、命を危険に晒す可能性もあるとは思ってもいなかった。でも、いじめによって自尊心を失っていた私は、この病気で死ぬにふさわしいとさえ思った。
2000年代初期は、学校で拒食症について耳にすることは殆どなかった。過食症については更にだ。記憶にある限り、摂食障害に関する授業はなかった。メディアで唯一耳にした事があったのは、ダイアナ妃に関するものだった。自分が過食症の男性であることは、私を更に孤独にし、男性は摂食障害にならない、という事実に基づかない自分の信念を更に強いものにした。
私は誰かに話す代わりに、秘密にしていた。母は食べ物がなくなっていくのに気づいていたが、ただ私が「空腹のティーンエイジャー」だと思っていただけだろう。過食症の人はとても秘密主義で、過食の痕跡を隠すのに全力を尽くすのだ。
学校最終日の2日後、誰かに話す勇気を出した。当時私は16歳で、未来にとても不安を抱き、自殺願望さえ持っていた。
診察室に座り、医師に自分の過食症について話し、号泣した。何を言ったか正確には記憶にないが、医師はとても心配していたことは覚えている。
医師は、子供や青年向けの地域のメンタルヘルスサービスでの緊急カウンセリング評価を紹介してくれ、翌日の予約を取ってくれた。どちらの予約も母に知らせずに行ったが、彼女はすぐに分かったようだ。残念ながら、家での対立のため、その時必要だったサポートを得ることができなかった。
18歳になり、親の同意がなくても自分でサポートを求められるようになったので、再び、今度は違う医師に助けを求めた。先生は私の過食症について質問する代わりに、私の鬱や不安に焦点を当てた。医師は抗うつ薬を処方し、2年のウェイティングリストがあるカウンセリングを紹介した。
振り返ると、自分が同様に重度の症状がある女性であれば、医師の対応は変わっていたと思う。当時、男性の摂食障害、特に拒食症より見て分かりづらい過食症は、ほぼ耳にすることはなかったからだ。
アメリカの全国摂食障害協会(National Eating Disorders Association)によると、摂食障害に苦しむ3人に1人は男性だという。自分が設立したチャリティ団体Men Get Eating Disorders Too(男性も摂食障害になる)で10年以上活動しているが、今でもまだ男性へのサポートが特に足りないと思っている。
というのも、多くの男性が私のSNSにメッセージを送り、一般的なサポートを求める際に少数派だと感じる、と相談してくるからだ。
他の対処方法を身につけ、サポートしてくれる仲間を見つけたおかげで、私の最後の過食嘔吐は21歳の時だったが、次は違うものに依存してしまった。アルコールだ。
もしもっと早く過食症への助けを得られれば、この問題は避けられただろうか、とよく自問する。最近トラウマ・セラピーのコースを終了して学んだことは、雑草の葉だけ抜いて根を抜かなければ、ただまた伸び戻るだけ。つまり、1つの不健康的な対処法から、他の同様の方法に移るだけだ。
何年もの努力の末、今は過食症とアルコール依存症の両方から抜け出す事ができた。どちらも、同じ問題の違う兆候だったのだ。
最大の犠牲の1つは、自分のチャリティ団体を3年半抜けて、自分の回復に専念しなくてはいけないことだった。幸いなことに、それは今までで最もポジティブな選択の1つだった。
私が20年前初めて助けを求めた時より、男性の摂食障害への認識は上がっているが、今も男性は昔の僕と同じように孤独を感じている。摂食障害を患う男性たちが必要なのは、認知度を上げるための更なるキャンペーンではなく、それぞれのニーズに対応し、的を絞ったサポートだ。性別に関わらず、私のように隙間からこぼれ落ちてはならないのだ。
≪摂食障害に悩んでいる方へ≫
摂食障害 | 知ることから始めよう みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
男性で過食症だった私がすぐに「助けて」と言えなかったわけ