イカやタコ、カニ、ロブスターには、痛みの感覚があるーー。こう結論づけた報告書をもとに、動物福祉法案の保護対象に、頭足動物や十脚甲殻類を追加することをイギリス政府が発表した。
背景にあるのは、イギリス政府が進めている動物福祉法だ。
イギリスは2021年5月、動物福祉を保護するための措置を導入する行動計画を発表。動物が、感覚を持つ「生きとし生けるもの」であることを法的に認定し、ペットや家畜、野生動物の福祉施策に取り組むことを表明した。
このために可決された動物福祉法案では当初、保護対象となる感覚を持つ動物は、体に背骨を持つ「脊椎動物」のみとしていた。
英ガーディアン紙によると、これに対し、動物愛護団体が甲殻類や軟体動物にも感覚があると主張。英政府に独自の報告書を提出していた。
英政府は、これらの動物の感覚を調べるため、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)に調査を委託。
LSEの調査チームは、300件以上の科学的研究をふまえた結果、イカ、タコなどの頭足類の軟体動物と、エビ、カニなどの十脚類の甲殻類は「感覚があると見なされるべき」だと結論づけた。
調査では、それぞれの生物が痛みを起こす刺激の受容器を保有しているかどうかや、学習能力、麻酔薬や鎮痛剤への反応、自己防衛の行動などを調べた。
LSEは調査報告書で、タコが感覚を持っているという証拠は「非常に信頼性が高い」と結論づけ、イカはそれほど強力ではないものの、実質的に感覚はあるとしている。十脚類の甲殻類についても、「信頼性が高い」とした。
また報告書では、これらの生物を生きたまま冷凍したり、茹でて調理したりすることは「非人道的」な屠殺方法だとも指摘。生きたまま茹でることは推奨しないとしている。
LSEのジョナサン・バーチ博士は、「タコや他の頭足類は何年もの間、科学的に保護されてきました。しかし、それ以外には保護を受けていません。人間が完全に無視してきたこれらの無脊椎動物を保護することは、動物福祉において、イギリスが世界でリードするためための一歩となるでしょう」とコメントしている。
イギリス政府はこの決定について、既存の法律や漁業、外食産業には「直接的な影響はない」としている。一方で今後の動物福祉施策において、今回の決定が考慮されるとつづっている。
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イカやタコ、カニには痛みの感覚がある。英政府が認定、「生きたまま茹でるのは非人道的」との調査も