アメリカ・ウィスコンシン州で、BLMのデモ参加者3人を死傷させたカイル・リッテンハウス被告に対し、陪審員は11月19日、第一級殺人罪を含む5つの容疑全てで無罪評決を言い渡した。
被告側は、発砲は正当防衛だったと主張していた。
事件があったのは、2021年8月。ケノーシャでは、黒人のジェイコブ・ブレイク氏が警察から背中を複数回撃たれたことに対し、人種差別や警察の暴力に反対する抗議デモが起きていた。
当時17歳だったリッテンハウス被告は「建物などを守る自警団」を名乗って、AR-15型の半自動ライフルで武装し、自宅のあるイリノイ州アンティオックからケノーシャに入った。そしてデモ参加者3人に発砲して2人を殺害した。
裁判では、犠牲者の1人ジョセフ・ローゼンバウム氏が撃たれた時の動画も流された。
ローゼンバウム氏は、武装していない状態でリッテンハウス被告を追いかけていた。しかし、事件があった夜にリッテンハウス被告と一緒にいた元海兵隊員のジェイソン・ラコウスキー氏は「自身も武装していたものの、ローゼンバウム氏を脅威と見なさなかった」と裁判で証言した。
ラコウスキー氏は、ローゼンバウム氏が「撃ってみろ」と何度か挑発したものの「彼に背を向けて無視した」と説明している。
一方、リッテンハウス被告は、「彼は私を追いかけてきました。私は1人で、彼はその前に私を殺すと脅していました」「彼を撃ちたくはありませんでしたが、彼が私を追いかけてきて、私は追いかけられたくなかったので、彼に銃を向けました」と述べ、命の危険を感じて発砲したと主張した。
リッテンハウス被告は、ケノーシャを訪れた目的の一つは医療援助であり、「救急バッグを持参していた」とも述べていたものの、倒れたローゼンバウム氏に応急処置を施さず、救急車も呼ばなかった。
動画には、リッテンハウス被告がローゼンバウム氏を撃った後に友人に電話をかけ、現場から走り去る様子も映っていた。これについて被告は「警察を探すために走っていた」と説明した。
また、リッテンハウス被告は自分を止めようとしてスケートボードで殴りかかってきたアンソニー・フーバー氏に向けて発砲し、殺害した。
さらに、救急救命士のガイジ・グロスクロイツ氏を撃って負傷させている。
グロスクロイツ氏は「自身も銃で武装していたものの、リッテンハウス被告に撃たれた時は両手を上げて降伏を示す状態だった」と証言した。
裁判では何度か、緊張が走る場面があった。
11月10日の審理では、採用しないとした証拠を検察が法廷で持ち出したことにブルース・シュローダー判事が怒り、強く批判した。
その後、被告の弁護団は審理を無効にするよう求めたが、受け入れられなかった。
この時の審理では、リッテンハウス被告が証言中に「何も悪いことはしていない」と述べて証言台で嗚咽している。
また裁判中にシュローダー判事の電話が複数回鳴ったが、この時の着信音がドナルド・トランプ前大統領が選挙集会で好んで使う「ゴッド・ブレス・ザ・USA」だったことも話題になった。
さらに、陪審員の選定はたった1日で行われた。このことについてニューヨークタイムズ紙は「異例の迅速さ」であり、その結果「圧倒的に白人」の陪審員になったと指摘している。
その後、陪審員の1人が、ケノーシャ警察に撃たれたブレイク氏について「なぜジェイコブ・ブレイクを7発撃ったのでしょうか」「弾丸を使い果たしたからですよ」と人種差別的な冗談を言ったことで、陪審員から外された。
今回の無罪評決には反発の声が上がっており、抗議運動が起きることも予測されている。
また、ウィスコンシン州トニー・エバーズ知事(民主党)は、暴動を懸念して評決の前に数百人の州兵をケノーシャで待機させた。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
BLMデモ参加者3人を死傷させた10代の被告に、無罪評決が言い渡される