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「おうちでごはんがたべられないこはここでたべられるよ」とんかつ店の“無料食堂”がつなぐ支え合いの輪

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まるかつのとんかつ

<もしどうしても、お腹がすいても、お家にお金がないときやお子さんにおいしいものをお腹いっぱい食べさせてあげたいのにご事情があってむずかしいときなどはコソっと店長に相談してください>

奈良県内に2店舗を構えるとんかつ店「まるかつ」は3年前から、経済的に困窮する子どもや大人たちを対象に「無料食堂」を開いている。その名の通り、食事代は受け取らない。

きっかけは、2018年に北陸地方を襲った大雪の被害だった。多数の車両が立ち往生するなど人々の暮らしに影響が出た。

大雪で心細い思いをしている北陸4県の人たちに向けて、まるかつは全メニューを半額で提供するサービスを期間限定で実施。県外から260人が店を訪れた。

この経験が後押しとなり、店長の金子友則さんは「貧困世帯の子どもや大人に喜んでもらえるなら」と、無料食堂をスタートした。お知らせの貼り紙には、こうつづった。

<もしどうしても、お腹がすいても、お家にお金がないときやお子さんにおいしいものをお腹いっぱい食べさせてあげたいのにご事情があってむずかしいときなどはコソっと店長に相談してください。

電話がいいと思います 0742-81-4568

そのときは、店長のおごりで、コソッと無料でお腹いっぱい食べてもらいます。お店で食べるのが気まずければお弁当のお持ち帰りでも大丈夫です!

世の中お互い様ですので、お代は出世払いでもいいですし、忘れてもらってもいいです。少しでも元気を出すきっかけになればうれしいです。ちょっとでも他人様の役に立てたという気持ちだけで充分うれしいので、本当に気にせんといてくださいね。>

子ども向けの貼り紙では、全て平仮名で<おうちでごはんがたべられないこはここでたべられるよ>と呼びかけた。

「仲間が助けられたお礼に」

無料食堂で提供されるメニューに決まりはない。

特に希望がない時は、ロースかつ定食(1380円)やロースかつ弁当(1280円)を提供するが、基本的には好きなメニューを注文してもらっているという。

「例えば『えびフライ』などはやはり喜んでいただけますし、多くの方が遠慮がちになりながらも、お好きなものをご注文されます」(金子さん)

スタートから3年半がたち、無料食堂の利用者は延べ800人を超える。

店側から事情を尋ねることはしないが、自身のことを語る人もいる。病気療養中の人、新型コロナの影響で突然失業した人…。利用者は様々な事情を抱えていた。店までの交通費がないという未成年者からの電話を受け、店のスタッフが駅まで車で迎えに行ったこともあった。「収入が回復した」と言って、後日支払いに戻ってきた人もいる。

思いがけない縁もあった。

財布をなくした長距離トラックの運転手が無料食堂を利用したことを耳にした別のドライバーは、「仲間が助けられたお礼に」と家族と一緒に店に食事にきてくれた。ドライバー同士は直接の知り合いだったわけではないという。

金子さんは「多くの人に助けていただいているからこそ、無料食堂を続けることができています」と感謝を述べる。

とんかつ店「まるかつ」

「弱さ」支え合えるのも人間

大量注文を受けた後に弁当を廃棄されるなど、いたずら目的での利用が増えて苦慮した時期もあった。だが、その際にもまるかつの取り組みを応援してくれる人の存在が支えになった。金子さんは「私自身が人の善意を強く信じられるようになりました」と振り返る。

苦しい生活を強いられている人に「自己責任」を押し付ける風潮は、日本社会に根強くある。金子さんは「その人を貧困に追い込んだのは、社会にも原因があるかもしれません。もちろん結果について自分で責任を取れるのはすばらしいことだと思います。ですが、『自分で責任を取っているつもりでも実はだれかに助けてもらっている』ということも多いと思います」と話す。

「私自身もそうですが、人間はおそらくものすごく弱いところを持っていて、強いと思われている人も、何かの拍子で弱い立場になることもあると思います。そんな弱いところを支え合えるのも人間です」

無料食堂は、そうした支え合いを「料理という一つのわかりやすい形で提供させていただいているだけ」だと話す金子さん。子どもたちが無邪気に、うれしそうにとんかつを頬張る。その瞬間に、料理人としてこの上ない喜びを感じている。

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「おうちでごはんがたべられないこはここでたべられるよ」とんかつ店の“無料食堂”がつなぐ支え合いの輪

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