「トランス嫌悪は笑える問題じゃない」。
Netflixの従業員らが10月20日、同社のコメディ番組「デイヴ・シャペルのこれでお開き」に関する会社の対応に抗議して、職場ボイコットのデモを実施した。
この番組では、コメディアンのデイヴ・シャペル氏によるトランスジェンダー嫌悪発言が問題視されている。
CNNによるとボイコットには、Netflix従業員とアライの人たち合わせて約65名が参加。
Netflixロサンゼルスオフィスの外で「黒人トランスの命は大切だ」「チーム・トランス」といったメッセージが書かれたプラカードを掲げて抗議した。
ニューヨークタイムズによると、ロサンゼルスオフィスでの抗議活動に加えて、リモートワーク中の従業員の一部も、正午にパソコンをシャットダウンしてバーチャルで抗議活動に参加した。
さらに、SNSでも様々な人たちが#NetflixWalkOut(Netflix職場ボイコット)でコメントを投稿。俳優のエリオット・ペイジ氏らも支持を表明している。
もっと良いトランスジェンダーのストーリーを配信するために、そして職場をインクルーシブにするために闘っているネットフリックスのトランス、ノンバイナリー、BIPOC(黒人、先住民、など白人以外の人たちを指す言葉)の従業員を支持します
ヘイトと不寛容に抵抗する仲間たちを支持します!社会の隅に追いやられた人たちを馬鹿にし、危険なステレオタイプを常態化させてもいいジョークなどありません。トランスの権利は人権です!Netflix職場ボイコットに参加した全員に愛を
「デイヴ・シャペルのこれでお開き」はNetflixで10月に配信スタートしたスタンダップコメディだ。
シャペル氏はショーのなかで、トランスジェンダー女性の容姿を馬鹿にしたり、「人は性別を変えられない」という趣旨の発言をしたJ.K.ローリング氏を擁護したりするなど、トランスジェンダーの人たちを侮辱する発言をしている。
番組が配信されると、トランスジェンダー当事者のNetflix従業員や人権団体が「発言は、トランスジェンダーの人たちの命を危険にさらす」と抗議した。
アメリカ黒人正義連合は、「アメリカでは2021年、トランスジェンダーの人たちがかつてないほど殺害されており、そのほとんどが黒人のトランスジェンダーです。Netflixは現状をもっとよく知るべきです。トランス嫌悪は暴力を生む」と述べて、配信中止を求めた。
しかし、Netflixのテッド・サランドス共同最高経営責任者は従業員宛のメールで「コンテンツが実際の危険に結びつくことはないと確信している」と述べ、配信継続を伝えた。
20日の職場ボイコットに参加したNetflixの従業員マシュー・ブラフさんは、「すべての人に発言権がありますし、私は言論の自由を信じています。しかし同時に、言葉は危険を招くものだとも思います。言葉は暴力を呼ぶのです」「これは誰かが傷つくとか、ポリティカルコレクトネスの問題ではありません。トランスコミュニティの人たちが毎日直面する暴力の脅威の問題なんです」とCNNに述べている。
ヒューマンライツキャンペーンによると、アメリカでは2021年に、少なくとも41人のトランスジェンダーやジェンダーノンコンフォーミングの人々が2021年に殺害されており、その多くが非白人の人たちだ。
The Vergeによると、職場ボイコットに参加したトランスジェンダーの従業員やアライの人たちは、ボイコットに先立ち、Netflixに改善要求を提出した。
その中で、トランスジェンダーやノンバイナリーを肯定的に捉えたコンテンツへの投資増や、トランスジェンダーやBIPOCの人たちの管理職起用、トランス嫌悪的コンテンツが及ぼす危険性を会社として理解することなどを求めている。
一方、サランドス氏はVarietyのインタビューで「私は、社内コミュニケーションに失敗した」「もっと人間性を持ってこの問題に対処するべきだった」と述べて、対応の過ちを認めた。
その一方で、「デイヴ・シャペルのこれでお開き」は今後も配信する意思を示している。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
Netflix従業員ら、トランス嫌悪に対して職場ボイコット。正午にパソコンオフ、バーチャルで抗議も