難病のため芸能活動を休止し、コーヒー焙煎士としてオリジナルブランド「The Rising Sun Coffee」を立ち上げた坂口憲二さん。今年6月、千葉県に新店舗をオープンした。ブランドとして初めてフードメニューも提供。感染対策のためテイクアウトが中心だが、テラス席で飲食も可能だ。
出店場所は、サーフィンの聖地・九十九里浜が広がる千葉・大網白里。海岸まで車で約20分の立地を選んだのは、長年情熱を注ぐサーフィンの魅力をコーヒーを通して伝えたい、という思いからだという。
スタッフは立ち上げ当初の3人から、アルバイトも含めて11人にまで増えた。開業から3年、現在の坂口さんを追った。
ドラマ「医龍」シリーズなど、数多くの人気作品に出演した坂口憲二さん。国指定の難病である「特発性大腿骨頭(だいたいこっとう)壊死症」を発症し、治療に専念するため2018年3月に芸能活動の休止を発表した。
セカンドキャリアとして選んだのが、コーヒーロースター(焙煎士)の道だ。プライベートレッスンで学び、千葉県九十九里に焙煎所を開設。2018年夏にオリジナルブランド「The Rising Sun Coffee」を立ち上げた。
ブランドでは、生産から流通までを透明化した高品質の「スペシャルティコーヒー」をオンラインショップなどで販売。Tシャツやマグカップなどのグッズも展開している。都内でテイクアウトのみの店舗(住所非公表)も運営中だ。
2号店の出店は、コロナ禍前の2019年冬ごろから計画していたという。都心部での出店を考えていたが、新型コロナの感染拡大の影響も重なった。
「都内ですごく気に入った物件もあったんですが、やっぱりコスト面を考えると慎重に判断せざるを得ない。新型コロナも重なって、出店は一時諦めモードにもなったんですが、ちょうどそのタイミングで顔馴染みのサーフ系セレクトショップのオーナーから隣のテナントが空いたからどうか、と声をかけてもらったんです。それが大網の物件で。ビジネスでは縁を大事にしたいし、一度見に行ったらこれはいいな、と思ったんです」
場所は、都心からアクセスしやすいサーフスポットの一つ、白里海岸から車で約20分ほど。交通量も多い。
古い建物だが、広々としていて、スタイリッシュな外観も気に入った。
「改装したらもっとカッコよくなるんじゃないかと思ったし、条件も良かった。声をかけてくれたオーナーの店はサーファーから長年支持されていて、その隣に出店できるということも心強かったですね。
その時は東京の店舗も休まざるを得ない状況で、都内のコーヒー屋がコロナで次々と閉店しているのも見ていたので、これは思いきって舵を切った方がいいなと思ったんです」
東京駅まで電車で1時間ほどの大網白里市はベッドタウン的な一面もあるが、競合となるカフェの数も少ない。「美味しいものをちゃんと提供する場所を作れば、みんな来てくれるんじゃないか」。そう考えたという。
そして、2021年6月1日、テラス席付きの2号店をオープンした。
都内にある1号店はドリンクのテイクアウト、コーヒー豆類の販売が中心だが、大網店ではスイーツなどフードメニューも提供する。シーズンにあわせたメニューを展開する予定で、夏はエスプレッソを使った「珈琲かき氷」が好評を集めた。
オープンから3カ月。客足は「予想以上」だという。オープンから数日は一日200杯以上を売り上げた。
「本当にありがたいことに、予想以上にたくさんの方に来ていただいています。今回は、自分たちが好きな場所で好きなことをやって、『お客さんに来てもらう』という商業スタイルにチャレンジしたいと思っているので、嬉しいですね。
立地が海沿いじゃないことは少し悩んだんだけれど、海沿いはすでにサーフショップや飲食店が充実しているし、競合が多い中で勝負するのもリスクがあるかなと思ったんです」
トレードマークとして、ブランドのコンセプトである「COFFEE &SURFING」というフレーズを建物の壁一面にペイントした。
インパクトのある外観に惹きつけられ、足を運んでくれる人もいるという。
「いい波に乗ってサーフィンして、コーヒーを飲みながら都会に帰る。その中間地点的な役割ができたら、とイメージしていました。
それが意外にハマったんじゃないかなと思いますし、大網駅から徒歩圏内ということもあって、サーフィンをしないお客さんも来てくれています。隣のセレクトショップと並んで、『大網名物』みたいに盛り上げていけたらいいな、と思っています」
2号店をオープンしてから実感したのが、人とのリアルなコミュニケーションに生まれるあたたかさだという。
「うちはオンラインショップを主軸に展開していたので、コロナ禍も大きな打撃を受けずに済みました。こんな時代ですし、オンラインにもっと力を入れようとも思ってたんですけど、やっぱり実店舗でお客さんと対面できる楽しさというのは大きいと実感しています」
緊急事態宣言下は人数制限を設けた上で、テイクアウトのみの提供となるが、今秋から店内でのセミナー開催を始める予定だ。
「特にバリスタにとっては、お客さんの目の前でコーヒーを淹れて、それを飲んでもらって『美味しい』と言われるのはモチベーションの一つだと思います。
東京の店舗で学んだことなんですけど、初めはコーヒーをテイクアウトしていたけど、接客を通じて『家で飲みたい』とコーヒー豆を買ってくれる。そうして店のリピーターが生まれるんですよね。オンラインだと、やっぱりどうしてもそういうコミュニケーションはとれない。
自分は焙煎士という立場ですけど、現場に立つバリスタやスタッフのためにも、お客さんと交流を持てるリアルな店舗を大切にしたいと身に染みて感じています」
ブランドの設立当初、スタッフの人数は3人だったが、今は坂口さんを含めて社員数は6人。さらに、5人のアルバイトスタッフが会社を支えている。
経営者としての責任は年々増している。それでも、目指すことは開業当初から変わっていない。
コーヒーを通じてサーフ文化の魅力を伝えていくことだ。
「自分は、サーフィンというものは、スポーツの中でもすごく奥行きがあるものだと思っていて。サーフミュージックとかファッションとか、カルチャーにまでなっているように、サーフィンは人の生き方にまで影響を与えると思っています。だからサーファーという言葉があるんじゃないかな、と。
自分にとって欠かせない存在であるサーフィンのかっこよさを、コーヒーを通じて伝えていきたい。そこはブレずに続けていきたいと思います」
【店舗情報】
感染対策のため、店内は5人までの入店、テイクアウトのみで営業中。
住所:千葉県大網白里市駒込179-10
営業時間:月火水金 11:00 – 18:00
土・日 10:00 – 18:00
※木曜日は定休日
Source: ハフィントンポスト
坂口憲二さん、千葉県に新店舗をオープンしていた。コーヒーブランド設立から3年、変わらない情熱