絶滅したフクロオオカミの「最後の1匹」の貴重な映像がカラー化された。85年目の命日にあたる9月7日に公開。生存時のフクロオオカミの姿が、鮮明によみがえった。
背中にトラのような縞模様がある特徴的な姿で、動物園の檻の中を歩き回ったり、寝そべったり、大きな口を開けたりしている。その目はどこか寂しげだ。
ネット上では「素晴らしい映像」と称賛する声や、「なんてユニークで美しいんだ。絶滅したのはとても残念」と惜しむ声が相次いでいる。
フクロオオカミは、実際にはオオカミではない。カンガルーなどと同じ有袋類の一種だ。20世紀までオーストラリアのタスマニア島に生息していた。背中にトラのような縞模様があることから「タスマニアタイガー」と呼ばれることもある。
『絶滅野生動物辞典』(角川ソフィア文庫)によると体長100〜130cm。夜行性で、鋭い歯を使ってワラビーなどの小型カンガルーを捕食していた。有袋類の世界での生態ピラミッドでは頂点に位置しており、他の世界での「オオカミ」に近かったという。
かつてはオーストラリア大陸とニューギニアに広く生息していたが、約3万年前から人類が移住した際に連れてきたイヌが野生化した「ディンゴ」との生存競争に負けて、姿を消した。ディンゴがいないタスマニア島にだけ生き残っていた。しかし、19世紀以降にヨーロッパからの移民が押し寄せると、家畜を食べるフクロオオカミは目の敵にされて駆除された。政府が懸賞金をかけた時期もあったという。
最後に捕獲されたのは1933年。この1匹は「ベンジャミン」と名付けられて、タスマニア島のビューマリス動物園で飼育されたが、1936年9月7日に死亡。これがフクロオオカミの生存が確認された最後となった。その後は野生下での未確認の目撃情報はあったが、1986年になって絶滅宣言が出た。
ベンジャミンの命日である9月7日は現在、オーストラリアで「絶滅危惧種の日」に指定されている。この「絶滅危惧種の日」に合わせて、オーストラリアの国立映像音声資料館(NFSA)が公開したのが今回のカラー化映像だ。
NFSAによると、元になった無音のモノクロ映像が撮影されたのは、1933年12月のことだった。動物学者のデビッド・フレイさんがビューマリス動物園にいるベンジャミンを撮影した10本のフィルムの中で最長の1分20秒だった。フレイさんは一連の撮影後、ベンジャミンにお尻を咬まれたという。
カラー化処理をしたのは、この分野の第一人者であるサミュエル・フランソワスタイニンガーさん。彼が所属するフランスの「コンポジット・フィルム」社のチームが、200時間以上かけてこの映像をカラー化した。
フランソワスタイニンガーさんは映像公開について、次のようにコメントしている。
「この特別な日に、フクロオオカミを追悼することができて嬉しいし、誇りに思います。 このプロジェクトが、絶滅の危機に瀕している植物や動物に対するコミュニケーションと意識の向上に役立つことを願っています」
Source: ハフィントンポスト
絶滅したフクロオオカミの「最後の1匹」カラー化映像でよみがえる。85年目の命日に公開