8月28日から行方不明になっていた東京都内の女子高校生に関するニュースを、30日夜に報道各社が報じた。SNS上では、女子高校生の命を守るために警察とマスコミ各社が「報道協定」を結んで、報道を自粛していたのではないかとする憶測が広がった。しかし、ハフポスト日本版が警視庁に確認したところ、報道協定は結ばれていなかったことが分かった。
この事件を最初に報じたのはTBSとみられている。公式Twitterを見ると、30日午後9時40分に「【速報】都内に住む女子高校生(18)が #行方不明 事情を知っているとみられる夫婦を #事情聴取 警視庁」と速報を出した。
既報が見当たらない状態での速報に、SNS上では「そもそも行方不明と報道されてたっけ?」「普通、行方不明の速報って流さないよね」と戸惑う声があがった。この時点では詳細不明だったため「何かの暗号?」と報道を疑う声すらあった。
その後、共同通信も午後10時9分に記事を掲載し、公式Twitter上で「都内の女子高生行方不明、警視庁が夫婦聴取」とツイート。その後、毎日新聞やテレビ朝日などマスコミ各社が続いた。
翌8月31日には、事件の詳細が明らかになった。
午前10時3分のNHKニュースによると、女子高校生は28日の午後3時ごろ「知り合いに会いに行く」と言って家を出たまま連絡が取れなくなり、母親が通報した。
防犯カメラの映像では、自宅近くで車に乗り込む様子が映っていた。この車が後に長野県内で見つかった。
乗っていた群馬県に住む20代の夫婦が「殺害して遺体を遺棄した」と捜査員に説明。この説明を元に、警視庁が山梨県内を捜索したところ、午前2時ごろに遺体が見つかり、行方不明の女子高校生と確認された。
午後2時25分のNHKニュースによると、警視庁は死体遺棄容疑で夫婦を逮捕したという。
女子高生が28日に行方不明になってから、マスコミの報道が一斉になされたのは2日後。群馬県内の夫婦が事情聴取を受けてからだった。SNS上では「報道協定」があったのではないかという憶測が流れた。女子高生が行方不明になってから報道されるまでに数日のタイムラグがあったことなどから、誤認したとみられる。
警察庁の2019年の文書では、報道協定の制度について「報道機関が、人命尊重のために取材及び報道を自制することを申し合わせる制度」と定義している。1970年に新聞とテレビ局、1980年には雑誌社が方針を策定したという。
対象となるのは、取材または報道されることで、被害者の生命に危険が及ぶおそれがある」誘拐もしくは誘拐の可能性がある事件だ。同様のおそれがある「恐喝、不法監禁等の事件」も含まれる。警視庁や各警察本部の刑事部長は、こうした事件を認知したときは、警察庁と協議の上、記者クラブに対し、協定締結を申し入れることになっている。
新聞各社が加盟する「日本新聞協会」の公式サイトによると、報道協定ができるきっかけは、1960年に都内で発生した「雅樹ちゃん事件」だったという。当時は誘拐報道に関する基準がなかったため、犯人の要求、捜査状況などが逐一報道されたという。そのさなかに雅樹ちゃんは殺害。に逮捕された犯人が「新聞の報道で非常に追いつめられた」と語り、新聞各社に深刻な反省を呼び起こしたという。
ただし、今回の事件で報道協定が締結されたのか31日、ハフポスト日本版が警視庁広報課に確認したところ「そうした事実はない」との回答だった。また、マスコミ関係者の間でも、報道協定に関する情報は入っていないという。
Source: ハフィントンポスト
「報道協定があったのでは?」女子高校生死亡事件で憶測続出 ⇒ 警視庁が否定「そうした事実はない」