「闘うすべての人に感謝します」
8月1日に行われた東京オリンピック・陸上女子砲丸投げの試合で、銀メダルを獲得したアメリカのレーベン・ソーンダーズ選手が、表彰台で両腕をクロスさせ抗議の意味を込めた「Xポーズ」を見せた。
ポーズの意味を聞かれたソーンダーズ選手は「抑圧された全ての人たちが交差する場所」と答えている。
ソーンダーズ選手はサウスカロライナ州出身の黒人選手だ。同性愛者であることを公表しており、メンタルヘルスの問題に苦しんできたことをオープンに語ってきた。
ソーンダーズ選手にとって、銀メダルの喜びは自分だけものではなかったという。
NBCによると、同選手は試合後に「黒人のみなさん、LGBTQコミュニティのみなさん、メンタルヘルスの問題を抱えているみなさんに感謝を!」と、同じ立場にいる人たちへの感謝と敬意を口にした。
さらにInstagramでも「このためにすべてを捧げてきた。あなたが黒人であれば、LGBTQIA+の人であれば、もしくはメンタルヘルスの問題で苦しんでいるのであれば、これはあなたのためのものです。闘うすべての人に感謝します」とつづっている。
ソーンダーズ選手は、2016年のリオ大会で始めてオリンピックに出場し、5位入賞した。
オリンピック入賞は、当時21歳だったソーンダーズ選手にとって、輝かしいアスリートキャリアになった一方で、大会後にプレッシャーや孤独を感じるようになり、うつ病などメンタルヘルスの問題を抱えるようになった。
2018年には自死を考えたこともあると、ソーシャルメディアで明かしている。
ソーンダーズ選手はその後、セラピストや周りの人たちの助けを得て、メンタルヘルスの問題に対処し、東京オリンピックを目指してきた。同時に、メンタルヘルスに対するスティグマをなくす活動にも携わってきた。
試合後の記者会見では、銀メダルについて「素晴らしい気持ちです。たくさんの人たちを勇気付けることができるのですから」「多くの若い女の子たち、自死を考えたことのある人たち。諦めかけた人たち…私だけのメダルじゃない」と述べた。
多くのアスリートたちが、メンタルヘルスについての発信を始めている。東京オリンピックでは、アメリカ・体操のシモーン・バイルス選手が「自分の体と心を守るため」に競技を棄権した。
バイルス選手は「メンタルヘルスはスポーツの世界で広くみられる問題」であり「私たちは単にアスリートであるわけではなく、人間です。時には出場しないという決断をする必要がある」と述べている。
IOC(国際オリンピック委員会)は、記者会見で選手が自身の視点を表現することを許可している一方で、表彰台での抗議活動は禁じている。
IOCがソーンダーズ選手に処分を科すかどうかは今の所明らかではないが、ソーンダーズ選手はTwitterで「メダルを剥奪してみようとしたらいい。国境を越えて逃げます。泳げないけれど」と書き込んでいる。
Let them try and take this medal. I’m running across the border even though I can’t swim 😂 https://t.co/B59N2v9KAk
— Raven HULK Saunders (@GiveMe1Shot) August 1, 2021
ソーンダーズ選手は東京オリンピックの試合では紫と緑に髪を染め、「超人ハルク」などインパクトのあるマスクをつけて競技に臨んだことでも注目を集めた。
超人ハルクが「自身の力とパワーをコントロールすることに苦しんだ」ということに、ソーンダーズ選手は共感できるのだという。自身のTwitterアカウント名も「レーベン・ハルク・ソーンダーズ」としている。
また試合後には喜びのダンスで銀メダルを祝った。
6 figure contracts secured baby 🤣🤣🤣😘 #youmadbrohttps://t.co/UpibI6fGGXpic.twitter.com/7EhhxLI8Zc
— Raven HULK Saunders (@GiveMe1Shot) August 1, 2021
Source: ハフィントンポスト
同性愛公表の黒人選手は、メンタルヘルス問題とも闘ってきた。表彰台で「抗議」のXポーズ。