※2020年5月30日の記事を編集して再掲載しています。
めくるめく火星のトリックアートギャラリーへようこそ。
19世紀イタリアの天文学者・スキャパレリが当時最先端の望遠鏡で火星を眺めていたところ、直線でできた構造物らしきものを発見して大興奮。それをまたアメリカの天文学者・ローウェルが「火星人が作った運河だ!」と吹聴したものだから、地球はしばらく火星人ブームに湧きました。
火星からは、これまでスプーンやらリスやらドレスをまとった謎の女やら、ほんとうは(たぶん)存在しないのにそう見えてしまう写真がたくさん届いています。どうしても火星に生命体を発見したいばっかりに、あたかも火星が巨大なロールシャッハテストかのように希望や願望を投影してしまうんでしょうか。
そもそも衛星やローバーが撮影した火星の写真は、画質が荒くて距離感をつかみにくいものばかり。だからつい、異世界の風景に私たちが見慣れているものを当てはめてしまうのかもしれません。
- 火星の人面岩
- 捨てられたスプーン
- 遠方に吹き上がる火柱
- 火星の金塊
- 火星のブルーベリー
- 骨でしかない
- 火星にもかわいらしいリスが
- プラスチックごみ
- 手招きする女
- メソポタミアの神、おやすみ中
- 火星文明 ほしい?
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火星の人面岩
火星の見間違い、これが一番有名かも。
バイキング1号が1976年にサイドニア領域で捉えたこの画像について、NASAは「陰影が両目・鼻・口のような錯覚を結び、人の頭部に似た印象を与える巨大な岩石層」と表現しています。長さは3km超もあるそう。
もちろん、発見当時「火星人文明の遺跡だ!」と早合点した人はたくさんいたんですが、その後別アングルから撮った写真で明らかになったのはただの岩、というか丘。
今となっては無機質なものに顔などを投影するパレイドリア効果の典型例となっています。トライポフォビアの人には、この小さな黒い点々も相当キモい。
捨てられたスプーン
ポイ捨てはダメよ〜と言いたくなる光景ですが、これも火星のトリック。
NASAのキュリオシティ探査機が火星人のピクニックを台無しにしたか、偶然が重なってできた奇妙な岩石層かどっちか。さらにふしぎなのは、これ以外にもスプーンぽい形が発見されていること。
もしも火星人がスプーンを使ってたら、きっとこのゼリーを食べてたんだろうなあ。
遠方に吹き上がる火柱
遠くのだれかがSOS?
2016年に火星探査機キュリオシティが、クレーター「ゲール」のキンバーリー地点を撮った画像ですが、のろしが上がっているような光景にみな釘づけに。地下帝国を築いた火星人からのメッセージじゃないかとかいろいろ言われましたが、結局は宇宙線が干渉してできた光の反射であることが判明。
火星人のキャンプファイヤーっていうのも夢があっていいですけどね。スモアなんか焼いちゃったりして。酸素がない火星の大気圏で、どうやって火が燃えたのかは別として。
火星の金塊
ゴールドラッシュ! 火星だけど!
探査機キュリオシティが2018年11月に撮ったこの写真は、ツヤッととしていかにも貴金属ぽいかんじ。ヴェラ・ルービン・リッジを探索している最中に出くわしたものですが、残念ながら金ではなくニッケル鉄合金製の隕石だと考えられています。同じくメタリックな隕石が2015年と2016年にも見つかっているそう。
火星のブルーベリー
2004年にNASAの火星探査機・オポチュニティ先輩がメリディアニ平原を探索中に見つけたまんまる小石たち。ベリーっぽいおいしそうな色なので「ブルーベリー」の愛称がつきました。
NASAでは正式に「spherule (小球)」と名づけましたが、火星の地形に散らばっている様子を「マフィンに入ってるブルーベリーのよう」と表現しています。小球のサイズはばらつきがあり、大きいもので直径602マイクロメートル、小さくて100マイクロメートル。
水によって形成されたヘマタイト粒子のコンクリーションだとか、隕石の衝撃によるものだとか、カルサイト鉱物からできたとか諸説はあるものの、発見から16年経った今でもこのブルーベリーがどうやってできたのかは謎。とりあえず(たぶん)有機物ではなさそうです。
骨でしかない
いやこれ人間の足の骨にしか見えないんですけど。
それか、石か。どっちに見えるかは、あなた次第。
火星にもかわいらしいリスが
一度見てしまったら、もうリス以外なにものでもない。
2012年9月28日、キュリオシティは「ロックネスト」と呼ばれる石だらけのエリアを撮影しました。タカの目を持つ男・UFO研究家のScott Waring氏がいち早くこのリスに気づき、「火星にもかわいい齧歯類がいるもんだ」とコメント。確かに地面にぴったり体を寄せたジリスそっくり。
もちろん、ただの石なんですけどね。でも一度見たらもうリスを見えなくできない!
プラスチックごみ
火星に到着した直後、火星探査機・キュリオシティは火星の表面にプラごみっぽいものを発見し、調べてみた結果……プラごみと判明。
これにはNASAの人たちも頭をかしげるしかなかったんですが、よくよく考えたあげくキュリオシティそのものからはがれ落ちたプラスチックの破片だとわかりました。
火星人のポイ捨てではなかったようで一安心。ちなみに2018年にもうひとつプラスチックっぽいモノを発見したんですが、こちらは石の薄片だったそうです。
手招きする女
2007年9月5日にNASAのローバー「スピリット」が、クレーター「グセフ」のパノラマ写真を撮った結果がこれ。岩の上に腰かけるようにして、右腕を体の前へ突き出した謎の女性の姿が…。
手招きしているようでもあり、キョンシーのようでもあり、ホラーこのうえない。
上のジリスのようにただの錯覚でしかないんですが、一気に火星に移住したくなくなるインパクトです。
メソポタミアの神、おやすみ中
火星探査機・オポチュニティ先輩が、2010年にクレーター「コンセプシオン」で激写した一枚は、古代メソポタミアの新アッシリア王国で崇められていた神にそっくり、とUFO研究家のみなさんはおっしゃってます。わたしには枕とふとんも見えるんですけど。
おやすみなさい、神。しばらくは安心して眠れそうですよ。人類が火星に到達するまで、まだちょっと時間がかかりそうです。