確かに食べ物が重いと、自然と味もどっしり感じるかも。
お皿に乗った食事はまず目で食べられる、だからその味と同じように美しくなくてはいけない、と著名なシェフたちはよく言います。でも人間の他の感覚も味の受け取り方に大きく影響しているって知ってました? 飲み物が入ったカップの重心をずらしたり、手に持った重さで味が変わってくるんですって。
ワインに詳しくない人でも、ワインは紙コップで飲むよりちゃんとグラスで飲んだ方がおいしいっていうのはなんとなくわかりますよね。グラスの形状が、ワインの味や香りを引き出してくれるんです。グラス自体には匂いがなくが、紙コップは紙や糊の匂いがあるので、ワインの味や香りとケンカしてしまうっていうのも理由です。
そういう知識もあって、ワインをグラスで飲む方がおいしい、と脳が期待するんです。
これを利用した実験をしたのが東京大学の廣瀬雅治さんと稲見教授でした。ヨーロッパを旅行中、国によってワインの味が違うこと、そして出されるグラスの形や重さも違うことに気づいた廣瀬さんは、グラスの形や外見は同じで重さだけ変わった場合に同じ結果になるのかと考え始めたそうです。
実験のために作られたのは、「重り」が組み込まれた特製カップ。カップを持ち上げて口へ近づけて飲もうとすると、重りが移動して重心の中心がずれていく仕組みで、重りが飲み手の方へ移動することで手にあるカップに重みを感じ、戻すと軽くなるというわけです。
動画では、この装置で飲んでみる実験に参加者された20名の方々のうち何人かのリアクションが見られます。
廣瀬さんはこの装置と研究を8月におこなわれるコンピュータグラフィックスの国際会議Siggraph2021で発表するそうです。