立憲は衆院選で勝てるのか?都議選にみる野党共闘の奇妙な構図。くさび打つ「連合」と「公明」

秋の衆院選で政権交代は起こるのか。野党の支持率を見る限り、その見込みは極めて薄いと言わざるを得ない。しかし、野党各党が一枚岩になって挑めば、巨大自民党に一矢報いる可能性はある。

7月4日投開票の東京都議選は、その試金石でもあるが、立憲民主党と共産党の共闘に、連合と公明党がくさびを打つという奇妙な構図となっている。

野党共闘に「妨害」と「逆流」

秋の総選挙を前に、いま野党共闘への『妨害』と『逆流』が起こっています。これをはねのけて、共闘を前に進める最大の力は、この台東区での勝利です

都議選の告示直後の6月26日。台東区のJR上野駅近くの街頭で、共産党の小池晃書記長の訴えが響いた。

誰が共闘を「妨害」しているのか。具体名は出さなかったが、立憲を支援する労働組合の中央組織「連合」を指していることは明らかだ。

立憲と共産は共倒れを防ぐため、定数1~2の選挙区を中心に候補者を一本化。台東区では共産の候補者に統一し、地元の立憲の国会議員らもこの日、小池氏より先に応援演説に駆けつけた。

ところが、小池氏が演説を始めたころには、ひっそりと姿を消していた。陣営関係者は「共産党幹部と一緒に並んだら、連合東京に怒られるからだ」と事情を明かす。

連合東京が6月1日付で出した事務局長談話には、「共産党と与しないこと。違反行為がある場合には推薦等の支援を取り消すことになっている」とわざわざ書かれている。衆院選も同様の方針で、連合の支援が欲しい立憲の国会議員らは表だって共産候補を応援できない状況だ。

「共産アレルギー」と野党連合政権

連合の「共産アレルギー」は根深いものがある。共産党系労組の全労連と激しく対立してきた歴史があり、連合の神津里季生会長は6月下旬の講演で「共産は民主主義のルールにのっとって物事を進める組織と言えない」と痛烈に批判した。

共産党も連合が支援する旧民主党と長く対峙してきたが、安全保障法制が成立した2015年に共闘路線へ転換。一緒に政権交代を果たし、「野党連合政権」の樹立を目指す方針を打ち出した。

野党第1党とはいえ、組織が脆弱な立憲にとって、全国に地盤がある共産の「選挙協力」はありがたい。両党の共闘はここ数年、各地の知事選や国政選挙で一定の成果を挙げてきた。

この間、両党の接近を黙認してきた連合だが、旧民主勢力の離合集散によって連合傘下の産別組合が振り回され、組織は弱体化していた。ここにきて「反共産」や「原発ゼロへの反対」を強調するのは、電力総連や電機連合など連合内の「右派」勢力への配慮という側面がある。

連合の対応には、野党共闘を期待する人たちから、SNS上で批判の声も挙がっている。

松尾 貴史 (@Kitsch_Matsuo) on X
連合は、もう害悪でしかない。

タレントの松尾貴史さんがツイッターで「連合は、もう害悪でしかない。」とつぶやくと、6月末時点で6700を超える「いいね」がつけられた。

 

公明も野党共闘を牽制。背景に都議選の苦戦

両党の関係を引き裂こうとしているのは、連合だけではない。

公明党の石井啓一幹事長は6月中旬の記者会見で、立憲と共産について天皇制や安全保障政策で『水と油』の関係にありながら協力をすることが、国民の理解を得られるのか甚だ疑問だ」と批判した。連合と似通う主張だが、発言の背後には都議選への危機感がある。

公明は全国から応援を集めて支持者を掘り起こす「人海戦術」を得意とするが、コロナ禍で思うように進んでいないのが現状だ。1993年以降、都議選で候補者全員が当選を果たしてきた連勝記録が、28年ぶりに止まる可能性も出てきている。

選挙前の都議会の議席数は、都民ファースト46、自民25、公明23、共産18、立憲7。立憲と共産の共闘が奏功すれば、公明は勢力を逆転される恐れがある。

 5月には党のホームページにこんな文章を載せている。

共産が、野党連合政権に向けた重要なステップと位置付ける都議選での共闘は、単なる『地方選での協力』という域にとどまらず『社会主義・共産主義革命戦略への片棒担ぎ』となってしまう可能性がある」「共産票が欲しい現場では、共産に蝕まれ始めているのが現状らしい

実際、立憲と共産の政策は、どれほどの隔たりがあるのか。

コロナ対策での補償の充実や、ジェンダー平等など多様性の尊重、東京オリパラの中止・延期、さらに消費税率の引き下げなど、目の前の課題に対する政策に大きな違いはないように見える。一方で、自衛隊や日米安保、天皇制に対する考え方、さらに社会主義・共産主義といった目指す国家像に及ぶと、距離は一気に広がる。

共産の志位和夫委員長は、そうした相違点は「野党連合政権に持ち込まない」と理解を求めているが、立憲内や一部の支持者に残る「共産アレルギー」は払拭しきれていない。

立憲の枝野幸男代表は6月17日、共産との関係について「理念に違っている部分があるので連立政権は考えていない」と明言。一方で、「共有する政策もある。パーシャル(部分的)な連携や候補者の一本化について努力していきたい」とも語った。

連合の支援をつなぎとめながら、共産から選挙協力を引きだすという、「いいとこ取り」の戦略だ。

果たして、秋の衆院選までその微妙なバランスを保ち続けることができるのか。都議選の結果や、その後の立憲の対応次第では、共産の不満が健在化する恐れもあり、難しい舵取りが続く。

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Source: ハフィントンポスト
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